藤本 今回、何冊か金尾さんのご本を拝見し、ものすごく内容が濃く、また感動するところが多くてびっくりしたんです。正直、これまでに科学絵本というのを読んだ記憶があまりなかったんです。
金尾 「科学絵本」にはいい本がたくさんありますが、意外に知られていなくて…。
藤本 すみません、私も存じ上げなくて。科学絵本とはどういうものをいうのですか。すみません、私も存じ上げなくて。科学絵本とはどういうものをいうのですか。
金尾 ストーリーではなく、実際に身の回りにある事柄を絵本にした作品です。主に自然や生き物を描写することが多いですね。
藤本 人間を描くことはしないのですか。
金尾 科学絵本を描く人は、人間はあまり描きませんね。主役が2つあるとウェートのかけ方が難しいんです。ですから私は
生き物のほうを選んだのです。
藤本 そもそも金尾さんが、自然や生き物に興味を持たれたきっかけは何ですか。
金尾 子どものころは外で遊ぶのが当たり前。周りには自然がいっぱいあったし、いつも何かの生き物とふれあっていましたね。
藤本 ご自分で飼っていらっしゃるとか?
金尾 絵本をつくるために、飼えるものは飼いますよ。今もヤドカリとカニを飼っていますし、その前はイモリを飼っていました。動きがよくわかるし、生き物から伝わってくるものがあります。
藤本 動物の本を描くには、やはり実際のフィールド(生息地)観察が必要なんですか。
金尾 一冊の本を描くのに、取材に1年。生態を見ようとしたらフォーシーズンを見なければなりません。そのあと2年目に内容を考えたり、打ち合わせたり、校正したり。最後に本にして販売するまでに1年はかかりますので、合計3年間は必要です。
藤本 時間と手間がかかるのですね。
金尾 科学読み物というのは、学者や専門家などの著者(作者)がいらっしゃって、こんな絵をこんな風にと細かく打ち合わせていきます。ですから取材に1年といっても著者の先生にしてみたら、何十年という長い研究期間のうちの1年間です。
藤本 かなり根気のいる仕事ですね。
金尾 好きだからできることです。楽しくて申し訳ないくらい。私はもともと動物が好きなうえに、絵を描くことが好きだったんです。基礎を習おうと絵の学校に入り、その後、絵本に興味を持ち、薮内正幸(※)さんの絵と出会うことによって、生物画の世界に入ったんです。
藤本 生き物の絵を描かれる方ですよね。
金尾 とても精巧な絵で自然の美しさが表現されているんです。それからのご縁で、最初にいただいたのは図鑑の絵を描く仕事でした。図鑑というのは「きれい」や「上手い」の前に正確さを求められるんです。
藤本 子どもは図鑑が大好きですね。
金尾 子どもの観察力や洞察力はすごく、こちらも手を抜けません。
藤本 ケニアの動物を描いた絵本もありますが、アフリカにも行かれたんですか。
金尾 出版関係者の忘年会で「アフリカ行き」の話が出たんです。動物カメラマンの方が誘ってくださったんで、「行く、行く!」と二つ返事で答えました。
藤本 実際のアフリカはいかがでしたか。
金尾 楽しくて刺激的で。大地から何かがやってくるという感じ。興奮が自分の中に湧き上がってくるのがわかるんです。初めて行ったのは30代のとき。あまりの自然の雄大さに、すっかり虜になってしまいました。
藤本 聞いているだけでゾクゾクします。
金尾 サバンナは360度地平線の世界です。動物たちが悠然といるんですよ、あっちにもこっちにも。そこは、生きていくための食物連鎖の世界。弱肉強食、狩りのシーンは緊張で身が引き締まります。ライオンを丸一日追いかけて、生きていくための壮絶な闘いを目のあたりにしました。
※薮内正幸(やぶうち まさゆき)/(1940-2000)細密な生物画を描く動物画のパイオニア。『どうぶつのおやこ』『しっぽのはたらき』(福音館書店)などの絵本、『ガンバとカワウソの冒険』『広辞苑』(岩波書店)の挿絵、『野鳥の図鑑』(福音館書店)など著書多数。