藤本 先ほどは「エヴェッサキャラバン」を見学させていただき、ありがとうございました。そもそもこの企画がどういうものなのか、教えていただけますか。
天日 大阪エヴェッサによるホームタウン活動の一環で、選手・スタッフが中学・高校を訪問し、キャリア教育やバスケットボール指導を通じたふれあいを行う活動を実施しています。今回は、大阪府の「芸術・スポーツ体感〜感動の伝道師〜事業」のひとつとして実施。子どもたちにバスケットボールの魅力を伝えることで、「夢」や「生き方」を考えるきっかけにしてもらおう、というのが狙いです。
藤本 精華高校(寺西淳校長)での授業は2回目だそうですね。
天日 先日は、子どもたちの前でしゃべりました。
藤本 講義もあったのですか。今日のような実技とは、子どもたちの反応もまた違うものだったでしょうね。
天日 ええ。ぼくひとりの話と、今日のように選手たちを交えて実際にプレーを見せるのとは、明らかに違いますね。180度違った表情を見せる子どももいましたよ。
藤本 やはり、プロのプレーは、圧倒するものがあるのでしょうね。
天日 たとえば波多野和也選手のプレーを見たら、みんな「かっこいい」と思うだろうし、講義よりも体を動かすほうが、それは楽しいのかもしれません。
藤本 でも両方があってこそ、子どもたちの理解を深めるのだと思いますよ。講義ではどんなお話をされたのですか。
天日 「挫折」や「モチベーション」についてなど、いくつかのテーマにしたがって、ぼく自身の経験を話しました。
藤本 天日さんにも挫折があったんですか。
天日 それが、実はぼくには挫折の経験がなくて…。だから「挫折したことがない」という話をしたんです。一般的には、計画して失敗することや、それによって気力を失くすことを挫折といいますが、ぼくにとっては、常に「勝つこと」が目的ではなく、「上手くなる」ことが目的でしたから、負けても挫折したことにはならないんです。
藤本 結果ではなく、過程を大切にするということですか。
天日 結果を重視する「勝利至上主義」という言葉もありますが、ぼくはそうは思いません。誰でも上手くなっていくときが一番楽しいわけで、昨日より今日の成長をわかっているのは、自分なんだと思います。
藤本 子どもたちは、そういう話をどんな風に聞いているんですか。
天日 「なんやこの人、ほかの人と違うこと言うてんな」って感じでしたね。社会では、とくにスポーツの世界では「勝たなあかん」と繰り返し言われているわけですから。でも野球の野村克也監督も、「結果だけを求めてはダメ」と言っていましたよ。
藤本 「プロなんだから、勝たなければダメ」という人も多いですね。
天日 ぼくは違うと思うんです。プロも小学生も同じ。楽しくなければスポーツではないし、それを自分たちが実践しないで、子どもたちに伝わるわけがありません。
藤本 人にいわれてバスケットボールをするわけではなくて、「自分が何を目指し、どうしたいか」なのでしょうね。
天日 まさにそうです。自分のダメな部分、がんばった部分を知っているのは、自分であり、それをすることで結果がついてくる。大事なのは、ゲームの結果や人の評価ではないと、高校生に話しました。
藤本 素晴らしい教えですね。その言葉を勇気や励みにして、がんばる子どもが出てくると思いますよ。ところで天日さん自身のお話を伺いたいのですが、バスケットボールを始められたきっかけは何ですか。
天日 中学校に入ったころ、少し背が高かったせいか、顧問の先生に呼ばれて「バスケット部に入らないか」と誘われました。
藤本 直接先生に声をかけられるなんて、うれしいですね。
天日 気をよくして入ってみたら、顧問の先生が尊敬できる方で、真っ先に先生のことを好きになりました。それからバスケットボールというスポーツの面白さを知って、めちゃめちゃ好きになりましたね。
藤本 先ほどの練習風景でも、本当に楽しそうでしたもんね。
天日 いやあ、そうでしたか。
藤本 練習が終わって「お疲れ様」と言ったあとも、ずっと選手に実技指導をされていましたね。ちょっと驚きでした。
天日 いつものことですが、思いついたら行動せずにいられないんですよね。でも驚いたというのは、「コーチは、座って腕組みして見てるもんだ」なんて、イメージされていたんじゃないですか。
藤本 コーチが何人もいらっしゃるので、天日さんはてっきり椅子の上の方かと(笑)。
天日 日本の師弟関係のイメージでは、監督だったらそうかもしれませんが、欧米スポーツの世界では、それはあり得ません。選手とコーチは常にパートナーシップ。自分から立って動かないと絶対にダメですね。
藤本 体力も必要ですし、大変ですね。
天日 そこが面白いところです。