クンナ 11年前にここにお店を出したときも、ゼロからのスタートでした。同じようにまた、表の交差点に立ってチラシ配りから始めました。
藤本 集客は本当に大変ですね。集客は本当に大変ですね。
クンナ ミナミといっても、ぼくらのいる西道頓堀は、戎橋のある東側に比べたら人通りが少なかった。うちの店だけじゃなくて、みんなでがんばろうと思い立ったわけです。
藤本 通りにはどんなお店があるのですか。
クンナ 御堂筋から四つ橋筋までの300mの間に多国籍料理店あり、老舗の料理店あり、出世地蔵ありと、魅力的なお店やスポットがたくさんある。初めは「皆さんのお店のチラシも置いてあげるよ」と言っていました。ところがそうしているうちにどんどんチラシが増えていき、テーブルに置けなくなってしまったんです。お客さんを見ていると、数枚を持ち帰る人がほとんどでした。それなら全部持っていってもらおうと、ホチキスでとめることにしたんです。
藤本 なるほど、考えましたね。
クンナ そこで思いついたんです。いっそのこと、一冊のガイドブックにしたらどうかって。
藤本 チラシをつくるにも、広告を出すにもコストはかかりますからね。
クンナ 一軒一軒訪ね歩いて、賛同してくれた61店舗が7000円ずつを出し合って、オリジナルガイドブック『みんなのミナミ』ができました。
藤本 皆さんの反応はいかがでしたか。
クンナ 情報誌をつくる過程で、みんなの心がひとつになりました。完成パーティーではメンバーが集まって交流し、81冊ずつに分けてそれぞれが配りました。
藤本 集客のための冊子づくりが、街のネットワークづくりになったんですね。
クンナ お客さんも増えてほしいけれど、地域の仲間が増えることのほうが意味があります。
藤本 今は、なかなか地域づくりができない社会ですからね。まして商売となれば、極端な話、お互いがライバルですよね。でもその人たちの心が通い合っていれば、街の雰囲気もあたたかく、自然と人が寄ってくるのでしょう。
クンナ 地元の人に愛され、リピートしたいと思えるお店というのがポイントです。
藤本 去年は、『みんなのミナミ』の拡大版をつくられたそうですね。
クンナ 1号と2号の発行部数は5000部でした。去年つくった3号は、もっとたくさんの人にミナミ周辺の素敵なお店を知ってもらいたいという企画で、前回参加した店舗が自分の店のほかにそれぞれおすすめの店を9軒ずつ紹介し、全部で440軒の、文字通り「みんなのミナミ」を紹介し合おうという趣向です。ミナミを愛してくれる仲間を誘い合い、協力を得たおかげで、1000人の交流会が開催できました。そこで、1人10冊ずつ合計1万冊を配布しました。「隣近所から全世界へ」の発想です。
藤本 アイデアも素晴らしいけれど、すぐに実行に移す、その行動力には頭が下がります。頭で考えていろいろ言う人は多いけど、自分で汗をかく人はなかなかいませんから。
クンナ 口で言うだけは簡単です。でもぼくはそういうの大嫌いだから。そうでないと、人はついて来てくれません。
藤本 しかもクンナさんがすごいのは、しっかり戦略があること。もう経営者を通り越して、地域の総合プロデューサーですね。
クンナ フリーペーパーは山ほどありますが、掲載料が高いでしょ。1回出したらどうやって採算を合わせるかが、大変です。
藤本 今は、お金を出せば何でも記事になる。でも多くの人は、その情報を信じてしまいます。
クンナ そこが問題なんです。たとえ500円、1000円出したとしても、本当の情報が載っているガイドブックが欲しいんです。
藤本 見た目や雰囲気じゃなく、本物の味とか、料理人の心意気とかを伝える情報誌…。
クンナ そうそう。簡単に誰でも彼でも載せられないくらい敷居を高くして。