藤本 今日はコンサートを聴かせていただき、ありがとうございます。生でお聴きするのは初めてでしたが、とても素晴らしく、思わず涙が込み上げてきてしまいました。言葉ではうまく表現できませんが、心の奥深い所に、木村さんの思いが伝わってきたような感じがしました。
木村 そんな風に言ってくださって、すごくうれしいです。こちらこそありがとうございます。
藤本 小柄な木村さんのどこからあんなエネルギーが出てくるのでしょう。私は木村さんの歌声から、やさしさだけではなく、強さや勇気、そんなエネルギッシュなものを感じました。
木村 私の歌を、やさしさや癒しという表現でとらえられる方はたくさんいますが、藤本さんのように感じていただけると、大変うれしいです。
藤本 音楽で感じるものは人によって違うのでしょうが、私は間違いなく、やさしさというよりは強さを感じましたね。ものすごく大きな衝撃で、今も心臓がドキドキしています。そしてもうひとつ感動したのは、やはり『いつも何度でも』のときには『千と千尋の神隠し』の映像が、『世界の約束』では『ハウルの動く城』の映像が、しっかりと思い出されたことですね。
木村 それは音楽と映像を上手にミックスしてくださった宮崎駿監督の素晴らしさだと思いますが。私の歌をたくさんの方に知っていただいたり、聴いていただいたりするという意味でも、宮崎作品との出会いは大きいですね。
藤本 そのお話を聞かせていただけますか。
木村 宮崎駿監督の映画は『風の谷のナウシカ』のあたりから、「こんな透明な感覚を持っている人が日本にもいらっしゃったんだ」と、いつも感心して拝見していたんです。そして、もしそこに歌が使われるのだとしたら、「私の声が合うんじゃないかしら」とふと思ったんです。
藤本 直感ですね。
木村 勝手に思い込んだだけですけどね(笑)。「手紙を書こうかな、でも体調が今ひとつだし…」と実行に移せないままに時間が経ち…。その後『もののけ姫』が大ヒットして、「今さら手紙を書いても、単なる売り込みと思われるかな」と一旦はあきらめたんです。それでもなぜか気になって、人混みが苦手な私が「やっぱり劇場で観てみたい」と思い立ち、映画館に足を運んだのです。劇場公開があと数日で終了するというときでした。
藤本 ご覧になって、いかがでしたか。
木村 あまりに映画のインパクトが強く、心に残って仕方がなくなってしまったんです。「宮崎監督のキャラクターに、私の歌で花を添えられたら…」、そうと思ったら、涙がボロボロとこぼれて止まらなくなって…。頭の中にはどんどん世界が広がってきて、自分でも「これはもう普通じゃない」と、思いきって手紙を書くことにしたんです。
藤本 居ても立ってもいられない?
木村 ええ。自分の中からマグマのような思いがふつふつとわいてきて、何かに突き動かされるかのように手紙を書きました。歌を聴いてもらいたいと思い、CDを同封して送ったんです。するとすぐにお礼のお手紙が届きました。そこには、『煙突描きのリン』という当時企画中の作品について書かれてあったんです。
藤本 それは、どんな作品だったのですか。
木村 物語は、群発地震におそわれ、瓦礫の街になってしまった東京のお風呂屋さんが舞台。そこに、絵の勉強のために大阪からやってきたひとりの女の子・リンが登場します。煙突に絵を描くことを条件にお風呂屋さんに住まわせてもらうリン。廃虚となった東京の街を見下ろして、煙突に絵を描きながら、リンは歌を口ずさみます…。
藤本 作曲の依頼だったのですか。
木村 残念ながら、「企画を進めていますが、どうなるかわからない。実現するときには、声をかけるかもしれません」とあっただけでした(笑)。するとしばらくして、私の中に、あるメロディーが繰り返し浮かんできて、「これは煙突描きのリンに合うかな」って思ったんです。
藤本 どんなメロディーだったのですか。
木村 「いつも心踊る夢を見ていたい」というフレーズです。悲惨なときも、夢を描けるエネルギッシュな女の子。自分を励ますようなメロディーでした。そこで、当時から一緒に作品づくりをしていた作詞家の覚和歌子さんに詞をつけていただいたのが『いつも何度でも』です。「宮崎監督にきっかけをいただいて、この曲が生まれました」と、テープをお送りしたんです。
藤本 宮崎監督の反応はいかがでしたか。
木村 「暗い地平線を見つめながら、リンがこの歌を口ずさむ横顔が目に浮かびます」とお返事をくださいました。でも企画がボツになってしまったそうで、「とてもいい曲なので、大切にしてください」と結ばれていました。
藤本 残念でしたね。
木村 それから1年半ほど経った2001年の春のことです。突然に「あのときの曲を、夏に公開する映画のエンディングに流したい」とご連絡をいただいたのです。
藤本 驚かれたでしょう。
木村 うれしい反面、そのときすでにテレビで予告編を見ていましたから、正直「大丈夫かな、映画と合うのかなあ」と心配でしたね。「曲を聴きながら筆を進めていった」というのは、あとになって聞きました。
藤本 監督の中には、最初からあの曲があったのですね。映画をご覧になっていかがでしたか。
木村 ドキドキして、最初は落ち着いて観ていられませんでした。安心して見られるようになったのは、3度目くらいでしょうか(笑)。