スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

商いの基本は人づくり がんこフードサービス株式会社会長 小嶋淳司さん

大阪人なら誰もが知っているねじり鉢巻きの看板「がんこフードサービス」。全国90店舗の和食店を展開するがんこは、食の激戦区大阪にあって「旨くて安い店」として、今日も絶大な支持を受けている。職人技が基本の本格和食店では多店舗化は困難であるという常識を覆し、チェーン店をつくり上げた、外食ビジネスの草分け的存在である小嶋淳司さん。「商売の原点は人づくり」と人材教育に情熱を傾け、がんこなまでに追求した食と人へのこだわり、会社経営と共通する教育についても伺った。

 

がんこフードサービス株式会社会長 小嶋淳司さん小嶋淳司さんとの対談写真 その1
こじま あつし  1935年和歌山県生まれ。和歌山県立田辺高校在学中より家業のよろず屋を手伝う。同志社大学経済学部卒業後、大阪榮寿司店で1年間見習い修業。1963年大阪十三にて4坪半の寿司店を創業。2年後に106席の大型寿司店を開店(現在の十三寿司店)。現在は寿司、和食、炉ばた料理、こがんこ、とんかつ、韓国料理店など直営90店舗を全国展開。大阪「平野郷屋敷」や京都「高瀬川二条苑」、三田大原「三田の里」、和歌山「六三園」といった貴重な文化的遺産を生かした和食店も展開中。先日、会長職に就任。社団法人日本フードサービス協会理事、社団法人大阪外食産業協会相談役理事ほか公職を多数兼務。
http://www.gankofood.co.jp

高校生で知った商売の面白さす

藤本 早速ですが、「がんこ」という呼び名は、どこからきているのですか。

小嶋 昔の友人いわく、私は、皆と考え方の違うところがあったようです。とくに高校生のころはすでに大人たちに交じって商売をやっていましたから、普通の学生とは違っていて当たり前。相当変わり者と見られていたんじゃないでしょうか。小嶋淳司さんとの対談写真 その2

藤本 創業時から変わらぬ「がんこ」の看板。あれはインパクトがありますね。

小嶋 いろいろ考えましたが、やはり商売は「顔」が命と、思いきってトレードマークにしたんです。

藤本 今や、日本の食をリードするがんこフードサービスですが、全部で何店舗あるのですか。

小嶋 現在は関西圏、関東圏を中心に、寿司、和食など直営店が90店舗です。

藤本 素晴らしいご繁栄ぶりですね。ここまでの道のりを順番に伺わせてください。

小嶋 和歌山でよろず屋を営む家の、6人きょうだいの末っ子として生まれました。

藤本 どんなお子さんだったのでしょう。

小嶋 やんちゃ坊主でしたね。9歳で父を亡くし、母が店をやっていたので、子守りさんには、駆けずり回って世話を焼かせていたようです。

藤本 ご商売に目覚めたきっかけは何ですか。

小嶋 あるとき母の具合が悪くなり、すでに兄たちは家を出ていましたので仕方なく、高校生だった私が代わりに働くことになったのです。

藤本 高校に通いながらご商売を?

小嶋 休学届けを出し、詰め襟で仕入れに行くと、周りの大人たちが一生懸命に教えてくれました。商売は大変でしたが、がんばっただけ結果が出せる。その魅力にとりつかれた私は、地方のよろず屋だけの経験で一流の商人にはなれないだろう、本格的に商売をやるために大学に行こうと決意。そう思ったとき、兄が帰省してくれたんです。

藤本 大学では経済学を学ばれたそうですね。

小嶋 卒業したら1年後には店を出そう!と自分で目標を立て、学業の傍ら、まずは大阪の繁盛店50店の調査をしました。当時は今のような情報もリサーチのノウハウもありません。授業の合間に街へ出て店の前に立ち、どんな人がその店をどう利用しているか、客単価や料理やサービスの質、家賃や人件費までを細かく調べたのです。

藤本 ご自身の目で得たものほど、確かな情報はありませんね。それにしても、なぜ寿司店を?

小嶋 一番遅れている業界が飲食業でしたので、私でも努力さえすれば追いつけるだろうと思ったのです。卒業後は寿司店で調理技術を学び、その1年後、十三に4坪半の店を出しました。当時、高級店か、そうでなければ安くてあまり質のよくない寿司店の中にあって、旨くて安いと評判になり、次第に行列ができるようになりました。

藤本 一般的に職人技といわれる世界。その中で若くして起業され、すぐに成功させたというのはご立派ですね。

小嶋 私の場合、寿司店の前に5年のキャリアがあります。地方のよろず屋ですが、うちで買い物をしてくれるお客様一人ひとりに尋ねたんです。なぜうちに来て、なぜそれを買うのか。

藤本 皆さん驚かれたでしょう。

小嶋 たいがい面食らったような顔をしますが、すぐに私の意図を知って、親切に教えてくれました。そうすると今度は、お客様一人ひとりのニーズがわかってくる。こんな物、あんな物が欲しいと言われて、直接仕入れることができるのです。

藤本 まさに、商いの原点ですね。

小嶋 今のように情報はないし、商売を教えてくれる人もいない。お客様を知りたければ、お客様に問いかけるしかない。しかも言わないことまでを聞き出すのが商売。実は、そのときの経験が今も生きていて、これが、がんこの現実・現場主義の原点になっています。がんこらしさというのは、お客様に喜んでいただくことを、自分の喜びにすることのできる人たちの集団です。

藤本 これだけたくさんの店舗があって、従業員一人ひとりが気持ちのいいサービスを提供できるというのは、奇跡に近いですね。

小嶋 いやぁ、実際お店へ出たら冷や汗ものです。あっちでもこっちでも失敗をやらかしている。私がお客様を同行しているときなんか、胃がギューッとしぼられることもありますよ。

お客様の喜びを自らの喜びとして

藤本 お店ではどんなご指導をされるのですか。

小嶋 がんこでは、とことんオリジナルサービスをつくれるような環境を整えています。それには従業員の主体性が大切。現場で生まれるアイデアや工夫が最善のサービスだと考えています。

藤本 従業員の力が問われるわけですね。小嶋淳司さんとの対談写真 その3

小嶋 現場は常にお客様と接していて、一番お客様を知っているわけです。ですから彼らがやりたいと主張することは、まずは間違いない。どんどん採用します。人づくりの基本は自立教育です。マニュアルでは人は育たないし、喜びません。

藤本 入社して3年といった若い従業員を、積極的に店長などに抜てきされるそうですね。

小嶋 若い人のエネルギーや発想にはかないません。従業員が仕事にやりがいと生きがいを見つけ、お客様に喜んでいただくことを意気に感じてくれたらしめたもの。最高の接客ができるわけです。

藤本 技術は3年で修得できるものですか。

小嶋 基礎を学ぶのには、どんなに早くても10年はかかります。ですから店長になってからが、本格的な勉強のスタートでしょう。

藤本 責任を持つことが大事ですね。

小嶋 私も18歳から27歳という10年間が勉強期間でした。その間教えられたのではなく、すべては実体験として学んだことばかり。ですから、教えるのではなく、考えさせること。自分で責任を持ってやり遂げるんだと思えば、誰だってできる。今の若者は、その能力を生かしきれていないだけです

藤本 そういうチャンスを与えない大人にも、常に受け身でいる若者たちにも問題はありますね。

小嶋 学校や家庭でも、なかなかそれを教えられません。

藤本 親や先生に言われた通りやっているだけでは、本来持っている「考える力」が育たない。

小嶋 社会へ出たら、自分で切り開いていく。その手助けをするのが私たちの役目だと思います。

藤本 たくさんの従業員の中から「この人」と、選ばれる決め手は何ですか。

小嶋 高い能力と意欲はもちろんですが、何より商売が好きかどうか。お客様が喜ぶことを自分の喜びとすることができるかどうかです。商売は、使命感がすべてといえるでしょう。お客様への感謝の気持ちがあれば、15度のお辞儀でも、60度のお辞儀でもいい。そこに流れている空気が自然とお客様に伝わるのです。

藤本 ありがとうございますの一言も、お料理をテーブルに置く動作ひとつも、心が込められているか、単なるマニュアルか、すぐにわかります。

小嶋 それが接客の難しさであり、同時に楽しさでもあります。

藤本 最近はどのお店に行っても、なかなか満足のいくサービスを受けられないですね。

小嶋 「泥棒さんでも客と思え」というのは母の教えですが、まさに客商売を言い得ていると思うんです。たとえ泥棒が入って来ても、泥棒をさせないように説得して、その泥棒が次にはお金を持って、お客として買いに来たくなるような対応をする力量がなければあかんよ、というのです。

藤本 徹底して商人であれ、ということですね。

小嶋 私にとっての師はお客様であり、寿司を教えてくれた師匠であり、そして根本の生き方の模範となっているのは、やはり母親だと思います。

子どもに本気でぶつかってほしい

藤本 恩師とのエピソードなどはありますか。

小嶋 忘れられない先生といえば、中学時代の堀先生という化学の先生です。一緒に宿直室で寝て、研究の資料や書類の整理を手伝いました。先生の若いころの話には、随分影響を受けたものです。子どもというのは、空気や肌で感じるぬくもりの中で育っていくもの。それはもう理屈ではなく、人間の本質にふれて目覚めるように生まれてくるものです。親も先生も、子どもにはもっと自分の人生をかけてぶつかってほしいと思いますね。小嶋淳司さんとの対談写真 その5

藤本 思いがあっても行動を起こせない現実もあって、先生方も苦労されているようです。

小嶋 改革しようなんて大げさなことではなく、まずは自分が変わること。私も息子の中学では、3年間PTAをやりました。当時、いろいろ問題もありましたが、教頭先生の情熱によって、わずか2か月で学校が生まれ変わりましたよ。

藤本 具体的にはどのように?

小嶋 学校の近くに住まいを移し、早朝に学校に出て校内をそうじし、校門に立って生徒一人ひとりにあいさつをすることから始められました。

藤本 行動で示していったのですね。

小嶋 みるみる生徒たちの様子が変わりました。誰かひとりでも信念を持って実行していくことが大事。教育論なんて、難しいことはひとつもありません。人の心に訴えることができれば、お互いの信頼が生まれてくるんです。今は、大人と子どもの本気の対決がなさ過ぎます。

藤本 忙しいなどの理由で、行動しない親や先生も多いですね。

小嶋 自分は何をしなきゃいけないのか、何のために生きているのか。それを学びながら成長して生きていく楽しさを、子どもに伝えることが親の仕事。そして、それを植え付けるのが学校であり職場であり、社会の役目ではないでしょうか。

藤本 学校も家庭も職場も、人づくりの場であることに違いはありません。

小嶋 私たちは組織をつくり、お客様の喜びのためによいサービスをする。これこそ自己実現であり、その結果として我々の生活も潤おうという、社会の正しい循環です。

藤本 お客様と子どもを置き換えれば同じです。

小嶋 ですから先生方ももっと「学校ではこれだけはやる。だからあとは家庭でやってくれ」と、はっきり言ったほうがいいですね。子どものためを思わない親はいませんから、先生に情熱があれば、親もわかる。教えることは誰でもできるが、育てることが難しい。教育とは、その子どもに合わせて最もいい面を伸ばしてあげることですから、極めて身近な存在でしかできないこと。理屈ではなく、心の底からわいてくる愛情が必要です。

藤本 自己肯定ができないところに、今の子どもたちの苦しさがあるようですね。

小嶋 親であり先生であり、また友だちもしかり。子どものころに人から認めてもらったという経験は、生きていく自信につながります。

意欲のあるなしが成長のカギ

藤本 長年、社員教育を実践されてきた小嶋さんですが、今の人たちに足りないものは何でしょう。

小嶋 意欲が乏しく、根性がない。事を始めても妨げがあればすぐに挫折するし、出る杭を打たれたらすぐに「やめる」という選択をする。

藤本 スタッフの意欲を高めるために、社内的な教育システムをつくられているそうですね。

小嶋 パートやアルバイトを含め、全員で行っているのが「QCサークル活動」(※)というもので、現場からの実践的な改善策、顧客満足の具体策の採用です。年に一度の発表会では、毎年画期的な企画が生まれています。そのほか、自主参加で行っている勉強会もそうですが、あくまで主体性を重んじた「がんこ流人材教育」です。

藤本 個々のスタッフを認める機会になっているのですね。皆さん優秀な方が多いのでしょうね。

小嶋 時にはお客様の厳しい評価を受けることもあります。とくにスタッフが入れ替わる3月は辛抱の時期です。失敗はいいけれど、その先どう変わるか。ここに意欲のあるなしが関係してきます。

藤本 成長できる人間は、そこが違うのですね。

小嶋 ひとつ気持ちをとらえられたらすべてに通じる。これが商人勘というもの。頭で考える時代になり、ますます勘が失われてしまっています。

藤本 独特の商人哲学を貫いてこられた小嶋さんですが、今後の夢をお聞かせいただけますか。

小嶋 がんこでは、大阪「平野郷屋敷」や京都「高瀬川二条苑」など、貴重な文化的遺産を生かした和食店を展開しています。我々には、日本の食文化とともに、先祖が残した素晴らしい伝統建物を伝えていく義務があります。寺院は文化財として存続できますが、民間家屋はどんどん消えています。生活文化をまるごと残したいのです。

藤本 素晴らしい発想ですね。お客様にとっても、風情を感じつついただくごちそうは、たまらなくぜいたくなものだと思います。

小嶋 大阪をはじめ、関西ほど素晴らしい土地はありません。文化的背景があり、四季の変化がある。自然の恵みである野菜や魚、水も世界一おいしい所です。これを多くの人に伝え、それを素晴らしいといえる感性を大切にしたいのです。

藤本 事業計画のほうはいかがですか。小嶋淳司さんとの対談写真 その4

小嶋 店舗を増やすことが目的ではなく、従業員を生かす場として、またニーズに応じて、地域に合ったお店をつくっていきたいですね。私自身は先日、社長を降任し、会長職に就きました。

藤本 がんこのお仕事だけではなく、日本フードサービス協会の理事をはじめ、たくさんのご公務で、ますますお忙しそうですね。

小嶋 外食業界の発展のために、少しでもお役に立てたら。また、皆さんのご家庭にあっては、家族の団らんをはじめ、ふれあいの希薄化が指摘される世の中ですから、楽しみながら食事をするという方向性を極めていきたいと思っています。

藤本 今日は人づくりの原点を伺い、大変勉強になりました。これからもこだわりのがんこ哲学で、日本の食をけん引していってください。人間味溢れる有意義なお話をありがとうございました。

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