スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

働く母親たちの支えに マザーネット代表  上田理恵子さん

子どもを預けて働くからこそ、いい仕事がしたい││働く母親たちの、そんな当たり前の願いが叶わない社会…。17年間勤めた会社を退職し、仕事と家事・子育ての両立に悩んだ自身の体験を生かして、ワーキングマザーを支援する会社「マザーネット」を設立した上田理恵子さん。働く母親が困ったときに本当に役立つサービスを目指し、育児・家事代行を中心に、さまざまな事業を展開している。ワーキングマザーの本音と実態、ご自身の「仕事と子育てのいい関係」について伺った。

 

マザーネット代表 上田理恵子さん
うえだ りえこ  1961年鳥取県生まれ。大阪市立大学生活科学部被服学科卒業。1984年大手空調メーカーに入社。2001年退社と同時に株式会社マザーネットを創業。育児・家事を代行するケアリスト派遣業務を中心に電話悩み相談や育児休暇復帰セミナー、月刊情報誌の発行などワーキングマザー支援事業を展開。2003年度大阪市きらめき賞、大阪府女性基金プリムラ奨励賞(個人)を受賞。2004年6月より大阪市都市経営諮問会議委員、2005年5月より大阪市市政改革本部委員。12歳と11歳の男児の母。

●株式会社マザーネット
 大阪市淀川区西中島6-2-3チサン第7ビル608号
 TEL06-6889-2118
http://www.carifami.com

母親になって知った社会の矛盾

藤本 ワーキングマザー支援というのは、具体的にどんなことをするのですか。

上田 「ケアリスト」という育児・家事のプロスタッフが、働くお母さんに代わって育児や家事をさせていただきます。最近は炊事、洗濯、そうじなどを依頼される方もけっこう多いですね。上田理恵子さんとの対談写真 その1

藤本 私も働く女性のひとりとして、「ああ、誰か助けて〜!」っていうときがありました。

上田 家事も子どもの面倒も「マザーケア」と呼んでいますが、お母さんの気持ちを受け止めてあげることを大切に、という意味を込めています。

藤本 最近は少子化対策で、保育園や保育システムはだいぶ充実してきましたが、待機児童数を減らすためには、子どもを預かるハコ(場所)だけがあればいいということではありませんね。

上田 子育て支援、女性支援と、制度はできてきましたが、本当に欲しいものにはなっていない。カタチだけとはいいませんが、もう少し母親たちの気持ちを理解してほしいですね。

藤本 長い間、働く女性たちの声を聞いてこられたそうですね。

上田 私自身ずっと働いてきましたから、私の思いがそのまま、働くお母さんたちの思いでもあるわけです。

藤本 ご自身の経験と重ねて伺わせてください。

上田 大学を卒業して大手空調メーカーに入社。設計部勤務を経て、新規事業開発室に異動。技術を持った役職定年の方を中小企業に派遣するという人材活用の仕事だったんです。

藤本 現在のお仕事に、そのまま生かされているのですね。

上田 もともと人と接する仕事に興味があったので、皆さんの生き方や夢を聞いてそれを生かした仕事をマッチングさせていくという、大変やりがいのある仕事でした。

藤本 働きながら子育てを?

上田 入社3年目で結婚、子どもを持ったのは、その6年後のことでした。最初の壁は、長男の保育園探し。市の窓口で「翌春からの入園なら7月までに産むのが当然」と言われ、愕然としました。

藤本 そんなことを!?

上田 おかしいでしょ!? 大阪は全国一の待機児童数。保育園に入れるために、出産の時期をコントロールしなければならないなんて。

藤本 働きながらの子育ては大変ですよね。

子どものおこづかいで起業!?

上田 子どもを持って初めて、今の社会が、いかに子育てにやさしくないかを痛感しました。高熱の子どもを連れ、通勤電車の窓でおでこを冷やしながら、出社したこともありました。

藤本 子どもの病気が一番つらいですよね。

上田 病気もそうですが、急な残業も同じですね。そんな毎日の中で、「仕事と子育ての両立で悩んでいるのは自分だけではないはず。ワーキングマザーが悩みを打ち明けたり、情報収集できる組織をつくろう!」と思い立ったんです。

藤本 それが、マザーネットの前身でもある「『キャリアと家庭』両立をめざす会」ですね。

上田 1994年のことでした。最初はまさか、こんなに反響があると思ってはいませんでした。

藤本 まだお子さんも小さかったでしょう。

上田 会社勤めと子育て。その傍らで会の運営です。会の発足記事が一般紙に載ると、翌日から自宅の電話が鳴り続け、日に20通もの手紙が!

藤本 どんなお手紙ですか。

上田 便せん十数枚に思いがいっぱい。「誰かに聞いてもらいたい、自分のことをわかってもらいたい」…そんな手紙です。

藤本 どのようなアドバイスをなさるんですか。

上田 上司のことで悩んでいる人には「3年で代わるわよ」とか、保育園探しを始める人には「入園審査は化粧をしないで行って、働かないと食べていけないんですと訴えて」とかって(笑)。

藤本 的確なアドバイスですね。その後、上田さんが退職を決意されたきっかけは?

上田 あるとき重要な会議があったんです。私が話す順番が回ってこない、でも保育園のお迎え時間は迫ってくる…。で、仕方なく、退席を申し出たんです。すると上司が「子どもを袋に入れて、保育園の門にでも吊っておいてもらえ!」と。

藤本 ひど過ぎる! でも現実かもしれません。

上田 多くの男性が「働くお母さん」は悪くないが、「部下には困る」が本音です。

藤本 何歳のときですか。

上田 35歳で会社に疑問を持って創業塾に通いだし、起業したのは39歳のときです。やりたいことがあったわけではないんです。ただ、お母さんたちが安心して働ける会社、それだけでした。

藤本 創業のときに、お子さんたちとのエピソードがあるそうですね。上田理恵子さんとの対談写真 その2

上田 子育ての毎日で欠かさずやっていたことといえば、絵本の読み聞かせでした。すると、あるとき2人が、ごく自然に「夢」を語りだしたんです。「ぼくはイチロー選手みたいになる!」「ぼくは新庄選手みたいになる!」。2人とも野球をやっていて、それぞれ大ファンだったんです。「お母さんの夢は?」と言うから「子どもの参観に行けるような会社をつくる!」って言ったんです。

藤本 お子さんたちに宣言しちゃったんですね!

上田 しばらく経ったある日、長男が「お母さん、ぼくイチローみたいに才能ないから2番目になりたい夢を考えるよ」と言いだしたんです。すかさず「何言うてんの? 2番目の夢を考えたら、1番目の夢は叶わへん。そんなに簡単にあきらめたらあかん!」と言ったんです。そしたら翌日「そういうお母さんも会社つくる言うたのに、あきらめたんか? 最近何も言わへんやん」。実は、会社を辞めることに夫が猛反対だったんです。

藤本 うちと同じ。私の場合は、専業主婦でいながら母親サークルで新聞をつくっていたもんですから、うちの夫も「会社なんてしなくていいやろ。今のままで十分楽しめるやろ」って(笑)。

上田 起業支援もやっていますが、夫も賛成という人はあまりいませんからね(笑)。

藤本 ええ、あまり聞いたことがないですね。私の場合はむしろ、反対されたから起業した、というのが真実です。

上田 銀行員の夫は「会社を勤め上げてこそ、価値のある人間になれる」なんて言うんです(笑)。

藤本 お子さんたちの話の続きを…。

上田 「会社をつくるにはお金がかかるんよ、お母さんはお金を持ってないから今は無理やわ」と言うと、長男がおこづかいを貯めた1200円を「これで会社つくって」と持ってきたんです。

藤本 お母さんのため…なんて、うれしいですね。

上田 「でもちょっと足らへんなぁ」と言うと、今度は次男が貯金箱から676円を持ってきました。そのお金というのは…、「『キャリアと家庭』両立をめざす会」の情報誌を封筒に入れて切手を貼る仕事、1通1円でやってもらっていたんです。

藤本 676通分の仕事?

上田 「これでも足らへんわ」と言うと、今度はお年玉を貯めた預金通帳を差し出してきたんです。2人分合わせて25万円。ここでやめたら、この子たちはきっと夢をあきらめてしまう。「よし、絶対に起業しよう!」と決めました。

藤本 ワーキングマザーに焦点を当てたのは、ビジネスとしてもいい視点ですし、どれほどお母さんたちを助けるか。社会的な仕事だと思います。

上田 社会はまだまだ男性優位で、お母さんたちの就業状況はなかなかよくなりません。ひとりでも多くのお母さんの力になれたらいいなって。

藤本 最近は、父親の育児参加率が上がっているのではないでしょうか。

上田 確かに「子どもをお風呂に入れたい」お父さんは増えていますが、なかなか実現できないようです。リストラが進み、結果として一人当たりの労働時間は増えていますから。

藤本 社会の「働く女性」への目も、少しはやわらかくなったと思いますが。

上田 現実はまだまだですよ。いまだに事件があるたびに、マスコミは「お母さんが悪い」と書きますからね。お母さんたちが「しんどい」と言える場所がないんです。

藤本 子どもはかわいいときばかりじゃないし。

上田 子どもは、お母さんがイライラしているときに腹が立つことをするし忙しいときに面倒なことを起こす。そういうお母さんたちの「かけこみ寺」になりたいんです。

藤本 専業主婦の利用者も多いそうですね。

上田 孤立した子育ての毎日で、公園デビューができない人もまだまだたくさんいます。

藤本 お母さんたちも、コミュニケーションがあまり上手ではないですからね。

上田 最近は、小学生くらいの子どもを持ったお母さんたちの利用率も高いですね。

藤本 どんなサポートをするのですか。

母親たちのニーズに応えたい

上田 「天気がいいので布団を干してほしい」に始まって、「『いきいき』教室のあとひとりになってしまうので、夕食をつくりに来てほしい」「夏休みはずっと預かってほしい」とか…。

藤本 かゆい所に手が届くサービスですね。

上田 皆さんからのニーズが30人分集まったところで事業化するんです。数年前から始めた、夏休みの「サマースクール」は人気で、今年も長野県で1週間子どもを預かりました。上田理恵子さんとの対談写真 その3

藤本 参加する子どもたちはどうですか。

上田 一言でいって「もろい」ように思います。電球が切れても、虫が出てもパニックです。

藤本 現代っ子が、いかに温室で育てられているかですね。

上田 さまざまな自然体験にチャレンジすることで、日に日にたくましくなっていきます。

藤本 とても貴重な体験。まさに、一石二鳥ですね。保育サービスや家事代行業者はたくさんありますが、ほかとの違いはどこですか。

上田 質の高いサービスだと自負しています。

藤本 300人もの「ケアリスト」さんがいらっしゃるそうですが、審査の基準は何ですか。

上田 一番の条件は「お母さんの気持ちを抱きしめてあげられる人」です。自分の価値観を押し付けないことが大切だと思っています。

藤本 行政ではなかなかできないことですね。

上田 行政がやらないことをやるのが私たちの仕事。今は日曜日も祝日も、夜の9時まで受け付けています。でも早朝だけは、まだ対応しきれていないんです。

藤本 発熱のために保育園を休ませた子どもを、出勤前に預けたい人たちですね。

上田 会員さんからはフリーダイヤルで悩み相談も受け付けています。仕事と子育ての両立に悩み、せっぱつまった状態で電話をかけてこられます。

藤本 対応するのは大変ではないですか。

上田 私の原点はここにあるし、生の声を知るという意味でも、できる限り続けていきたいんです。

藤本 お子さんたちは、仕事については何て?

子どもに生き方を見せていく

上田 ずっと働いてきたので、働くことは自然なことだと思っているでしょう。でも一度だけ、長男が小学1年生のときに初めてお友だちの家に行って「いつも家にいて毎日ごはんをつくってくれるお母さん」の存在を知ったときに、突然「仕事を辞めて」と言いだしたんです。今は、365日仕事はしていますが、家と会社が近いので、一緒にいる時間も長いです。

藤本 創業以来、ずっとお母さんと一緒に会社を見てきたわけですもんね。

上田 創業でお金がなくなって、貧しい思いもさせましたし、一緒に会社のチラシをまいたりもしてきましたから(笑)。

藤本 一番の理解者ですね。大丈夫、子どもは絶対にお母さんの味方ですもん!

上田 「こういう生き方もあるんだな」って見ていてくれたら。先日息子がお友だちと話していたんですが、「おまえのお母さん、社長やったらもうかってんやろ?」「ううん、社長はサラリーマンより給料安いんやで」と言いきってました!(笑)。上田理恵子さんとの対談写真 その4

藤本 最後に夢を教えてください。

上田 働くお母さんにやさしい社会の実現ですね。本当は、私たちのような会社がいらない社会になることが一番です。行政や企業にも、もっと変わってほしいと思いますし、働くお母さんたちも、もっと声を上げていくべきだと思います。

藤本 大阪市市政改革本部委員としての期待も、集まっていると思いますが。

上田 ワーキングマザーの声を行政に伝えるのが私の役目。がんばって本音で語っていきたいと思ってます。

藤本 ぜひ、これからもたくさんのお母さんたちのために、それからお子さんたちのために、がんばってくださいね。今日はありがとうございました。

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