青木 みんな下積みを経て、伝統の技や独自の技を身につけていくのです。やはり「3K」といわれる「きつい」「きたない」「きけん」のイメージから逃げてしまうのでしょうか。
藤本 最近は人々の価値観も変わり、自立した仕事や生き方が求められています。
青木 モノづくりは自分との闘いだから、ものすごく可能性がある。楽しい仕事なんだけどな。
藤本 ロケットをつくろうなんて、青木さんの夢が、多くの若者に夢を持たせたわけですね。素晴らしい戦略です。
青木 ぼくは、本気でやりたいんですよ。何だって叶わないことはないんだから。
藤本 お金や物よりも、もっと大切なものがあると伝えていくのは難しいですね。
青木 本気でやったときに、初めてお金はついてくる。それからお金のこわさも教えたい。お金があり過ぎたら、人間ろくなことにはならないし、お金で夢は買えません。
藤本 お金さえあれば何でもできるという考え方は、とても危険ですね。
青木 自分の夢は他人に評価できるものではないわけで、結局、どこまでアホになりきれるかだと思います。ぼくはその典型で、うちのお母ちゃんは「あんた何してんの!? 東大阪より、アオキようしてや」が口ぐせです。
藤本 さすが! パートナーがしっかりしていらっしゃる。青木さんが人工衛星プロジェクトのリーダーをなさっていたときは、本業どころではなかったそうですね。 
青木 今年2月に、若者たちに夢を託して退任しましたが、SOHLA(東大阪宇宙開発協同組合)の理事長を務めていた4年間は、ほとんど仕事をしていませんでした。
藤本 パートナーの懐の深さと、スタッフの皆さんの理解に感謝しなければなりませんね。
青木 うれしいことに、従業員はぼくの考えに共感し、誇りを持って意欲的に仕事をしてくれましたので、能力も業績も伸びました。うちにはどこにも負けない優秀な職人がたくさんいる。
藤本 トップの志にスタッフが一丸となって取り組み、しかも業績を上げる。これはもう会社としては理想ですね。スタッフの皆さんにとっても、誇りだと思いますよ。
青木 志は高くても、人間は弱い動物です。常に自分を奮い立たせてがんばっていくのは、結構しんどいんです。でもそんなとき、どれだけ多くの人に支えられてきたか。大事なのは人間関係。人間として、どれだけ誠意を持って真剣に向き合えるか。それがすべてだと思います。
藤本 講演会も多いそうですが、同じですね。
青木 企業向けの講演が多いのですが、ぼくとしては若者たちに、宇宙の面白さとモノづくりの面白さを、本気で伝えたい。
藤本 ものすごく大きなテーマですが、どちらも実体験として伝えられるわけですね。
青木 中学校や高校の講演会も多いけれど、先日は地元、高井田東小学校の4〜6年生に話をしました。講演後に、感想を書いた作文をもらったんですが、うれしかったですね。
藤本 どんなことを書いてくれましたか。
青木 宇宙への興味がわいた、東大阪はいい町だと初めて知った、そんなすごい会社が身近にあるなんて驚いた、工場を見たいと思った…。子どもたちの吸収力には驚きです。
藤本 子どもらしい素直な感想ですね。でもそれは、青木さんの情熱があってのものでしょう。
青木 ある有名大学での講演会のときに、主催する先生が控え室でおっしゃるんです。「入って900人程度でしょう。学生たちは人の話を聞くのがあまり得意じゃないんで、途中で退席したり、ケータイを始めたりすると思いますが、気にせず1時間半しゃべり続けてください」と。
藤本 状況は想像つきますが、それもかなしいですね。
青木 結果はなんと、1300人もの学生が聞きに来てくれた。もちろんぼくも全力投球ですが、最後まで全員が熱心に聞いてくれました。「面白いと思った人はいっぺん来てくれ」と言うと、何人かの学生が工場まで来てくれました。
藤本 素晴らしい影響力ですね。行動させるのは、なかなか大変です。
青木 パソコンもカメラも自由に使いこなす若者。理工系の得意な人もたくさんいるのに、彼らにモノづくりの面白さを伝える手立てがない。
藤本 モノを買うことはあっても、自分で生み出そうという発想がない。モノづくりは、自分を知ることなのかもしれません。
青木 モノづくりは奥が深いといわれて、やめる人もいれば、やろうという人もいるんです。
藤本 子どもは、楽な道、安全な道を選びたがるし、それは私たち親世代も同じです。
青木 貧しい時代と違って、今は何でもできる時代です。もっと勇気や志、プライドを持って、地域のため、社会のためと立ち上がってくれる若者を育てたいんです。
藤本 それには何が必要でしょう。