スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

ずっと持ち続けていたい子どもたちへの熱い思い  大阪市教育長  永田祥子さん

4月に大阪市初の女性教育長に就任され、注目を集める永田祥子さん。1972年の入庁以来、監査事務局次長、中央児童相談所長など、さまざまな現場の第一線で活躍された豊富なキャリアを生かした成果が期待されるところ。子どもをめぐる問題が山積する中、「教育は、最も大切な仕事」と重責を感じつつ、ひとつひとつ問題を解決していきたいと慎重に語られた。私生活では、一男一女のお母様でもあり、子育て談義にも花が咲いた。

 

大阪市教育長  永田祥子さん
ながた さちこ  1948年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業後、1972年大阪市に採用され民生局に勤務。監査事務局次長、中央児童相談所長、市民局理事、都市環境局理事を経て、2005年4月に大阪市初の女性教育長に就任。

子育ての失敗事例(?)を生かして

藤本 大阪市教育長に就任されて約1か月ですが、教育長のお仕事はいかがですか。

永田 「教育長に」というお声がかかったときは、どうでしたか。 永田祥子さんとの対談写真 その1

藤本 それはもうびっくりしました。正直、プレッシャーもありますね。

永田 教育長に初の女性起用ということで話題になりましたが。

藤本 女性だからどうのではないと思いますが、これまでのキャリア、そして私自身ひとりの母親であり、一市民であるという経験を生かして、私らしくやっていくしかないと腹を決めています。もともと「生きている人間」が好きで市役所に入ったので、このような多くの方々と連携していく仕事は、荷が重い反面、やりがいもあります。自然体でやらせていただきたいと思っています。

永田 うれしいですね、そのお言葉。教育の原点は、大人がどれだけ真剣に、子どもたちのことを守れるかに尽きると思っています。教育長というよりも、むしろご自身がお母様である経験や思いを、そのまま大阪市の子どもたちへ向けてほしいと思っています。 

個々の潜在的な力を伸ばすこと 

永田 2人の子どもは上が男、下が女。それぞれもう大人ですから、ひとまず子育ては終わったかな、というところでしょうか。でもこのとおり、私も仕事をしてきましたから、子育てはうまくいったとはいえないような状況です。  

藤本 子育てがうまくいったという話は、聞いたことがありません。時期や程度はいろいろですが、多かれ少なかれ、つまづきや失敗はあるものです。もちろん、私も失敗は尽きず。22歳を頭に3人の娘がいますが、いまだに心配事ばかり。子育てに終わりはありませんね。

永田 確かにそうです。私がこの職になったことを受けて、先日、息子がこう言いましたよ。「お母さんは子育てに失敗しているから大丈夫。この仕事は適任だよ」って。そのときは気づかずに、よかれと思ってやってきたことが、やはり子どもたちにとっては重荷になっていたという失敗例です。

藤本 仕事との両立は大変ですね。

永田 息子にしてみれば、「母の期待に応えよう」とがんばったあげく、「できて当然」とほめてもらえないことが納得できなかったらしく、中学3年生から大学生までずっと反抗していました。

藤本 お子さんの気持ちもわかりますね。

永田 夫は、最高の環境を与えているつもりでしたが、息子のほうは「お父さんの夢を押し付けられた」と感じるところもあったようです。私が「親は、子どもが持てる能力を発揮して可能性を広げ、いきいきと生きてほしいという一心である」ことを告げると、「お父さんもお母さんも、面子や世間体から、ぼくにもっともっとと言うのだろうと思っていた。大きな誤解をしていたんだね」と話してくれました。

藤本 大事な気づきですね。今まで伝わらなかったものが、何かのタイミングでスッと入ったりすることもあるんでしょうね。

永田 以来息子は自分のしたいことをきっちりと見据え、自分のための人生を歩み出しました。

藤本 素晴らしいことですね。息子さんのやりたいことって何でしょう。  

永田 子どもたちに関わること。今は、福祉の道へ入りました。

藤本 お母さんの生き方を見ていたのでしょう。社会的な仕事の意義を実感されているのですね。お嬢様はいかがですか。

永田 娘は個性的でした。小学生のとき、いくらかけ算わり算を教えてもわからず、「なんでわからないの!?」と言う私に、「お母さんはお母さん、私は私。お母さんと私は違うのよ」と、はっきり言われました。私の教え方もわるかったんだろうと思いますが、明言する娘を見て、親子でもきょうだいでも性格も人格も違うのだということを自覚いたしました。ですから、娘は早くから自分の好きな道へ目標を定めたようですよ。でも困ったときには、相談してくれます。

生きていく上で大切な基礎づくり

藤本 多くの母親が、子どもを思うがゆえ、子どもに干渉してしまいがちですね。

永田 子どもには子どもの、親とは違った人生があることに気がつかないんですね。

藤本 子どもは親の期待に応えようとして、実際に応えられないことで、問題も生じます。

永田 児童相談所にいたときに、たくさんの虐待を受けた子どもを見てきましたが、どんな親でも、子どもは親が大好きです。どこまでも親をかばって「自分がわるい」と言うんです。 永田祥子さんとの対談写真 その2

藤本 子どもは何もわるくない。多くは親に、また社会に問題があるのでしょう。

永田 母親だけではなく、父親や学校の先生、それに子どもに関わる周囲の大人たちみんなにいえることです。点数ばかりを気にするのではなく、個々に持っている素晴らしい個性や潜在的な力を伸ばしてあげたいと思いますね。

藤本 大阪市では、習熟度別少人数授業や「小学校区教育協議会│はぐくみネット│」など、積極的に取り組んでいる教育事業がたくさんありますが。

永田 学力の向上を目指し、基礎・基本の確実な定着をはかるため、小学校5・6年生の国語・算数科および中学校2・3年生の国語・数学・英語科において、学習の習熟度に応じた少人数授業を導入しています。

藤本 保護者の方からは、今ひとつ成果が見えにくいといった声も聞かれるようですが。

永田 昨年度からの実施で、実施率は半数に至っておりません。今年度はさらなる拡充を目指していますので、徐々にその成果もあらわれてくるでしょう。どんな生き方も素晴らしい。けれども自分の行きたい道が見えたところで、基礎学力が身についていなければそれもかないません。次を目指すため、生きていく基礎づくりのために必要なものだと思っています。

藤本 やはり小中学校の勉強を、しっかりとやっておくことが大切なのですね。

永田 暗記で詰め込む知識ではなく、ひとつひとつ考え、小さいステップをクリアしていく力、疑問を解決したときの喜びや大きな気づき、がんばって積み重ねていくことで味わう達成感など、その過程が大事だと思うんです。

藤本 それは勉強だけではなく、すべての場面に通じることかもしれません。

永田 学力以外にも、情操教育や、自分を守ること友人や先生たちとの人間関係づくりなど、人として生きていく上で大切な基礎となる部分を、しっかりとつくることです。人生にはつまづきがつきものですがそのときどうするか。それを乗り越える力こそ「生きる力」だと思います。

藤本 学校だけに頼ってはいられませんね。

永田 それぞれ補い合うことが大切でしょう。そして家庭と学校が共通の意識と理解を持ってやっていかなければならないことをわかっていただきたいですね。

藤本 学校と家庭と地域の三者の連携がうたわれていますが、実際にはいかがですか。

永田 三者の連携を促進し、小学校を拠点に人々のつながりによって子どもを育んでいく「教育コミュニティづくり」を称して「はぐくみネット」といいます。市民ボランティアによる「はぐくみネットコーディネイター」を中心に、関係機関や団体、学校などで協議会を組織して、「ふれあいデー」の実施や「安全確保の取り組み」なども行っています。「はぐくみネット」は、19年度には市内全296小学校区で実施予定です。 永田祥子さんとの対談写真 その3

藤本 さまざまな事件や事故のニュースが飛び交う中、ますます「地域」の必要性がうたわれていますね。

永田 「はぐくみネット」もそうですが、「総合的な学習の時間」や「児童いきいき放課後事業」など、地域を巻き込んだ子育てを実施していますが、そうしたつくられた場面だけではなく、もっと自然に人々が交流できればと願うところです。昔は近所づきあいもあったし、広場や原っぱでは異年齢の子どもたちが一緒に遊んでいました。子どものころに人と交わり、ぶつかったり、挫折を経験することもなく、大人になってしまうのは危険です。

藤本 今は、隣にどんな人が住んでいるのかも知らず、スーパーやコンビニでは一言も交わさずに買い物ができます。

永田 総合的な学習といわなくても、社会や家庭の中に子どもたちの体験や学びがあふれているのに

藤本 いまどきの家庭では、スピードや手軽さを優先させてしまい、生活の中で伝えるべきことを伝えないままに毎日を過ごしています。それでいて学校に教育の責任を押し付けるのはおかしな話ですね。

本気で取り組む地域の安全対策

永田 保護者も完璧はありえないし、先生も同じ生身の人間ですから、すべてを十分にはできません。本当は、もっと皆さんの力を借りてもいいのに、なかなかそうはいきません。がんばっている先生もいるし、評価される取り組みも多いのに、「足りないといわれるんじゃないか?」と心配されます。

藤本 『ビーボラビータ』でも、読者の方から「素晴らしい先生を取り上げて」と言われるんですが、先生方はなかなか出てくださらない。

永田 素晴らしい施策はあるのに「実態が見えない」といわれるゆえんですね。

藤本 先生方には、失敗をおそれずに新しいことに挑戦していく勇気を期待しますし、うまくいかないことも、それはそれで大切な情報なので、どんどん発信してほしいと思います。

永田 問題がクローズアップされる昨今ですが、明るいニュースを増やしていけたらいいですね。

藤本 取材の現場では、楽しんでいる子どもたちの笑顔があっても、こんなご時世ですから、プライバシーや安全面で、子どもを特定するものは避けるという配慮もあります。

永田 写真には文章では伝わらない力があるので残念ですが、難しいところですね。

藤本 人を信じてはいけない、と教えなくてはならない世の中なんて悲しいですね。大阪市では子どもたちを守っていくために、どのようなことを実践されていますか。

永田 池田小の事件以来、さまざまな対策を模索しています。まず、全市校園にモニター付きインターホン、オートロック装置または監視カメラを設置しました。さらに、幼稚園・小学校・養護教育諸学校の全校園に大阪府警本部との緊急通報装置を設置しました。 また、安全パトロールの徹底やマニュアル整備、教職員が校園内外巡回時に腕章を着用するなども行っています。関係局をはじめ、警察、消防などとの連携、今年度は、郵便局とも協定を結び、子どもを守る取り組みを進めています。また保育所や学校園に、子どもの安全に関わる情報を電子メールで配信する事業も10月にスタートする(予定)など、子どもの安全を守るために本気で取り組んでいます。

藤本 見て見ぬふりをする人が多いけれど、地域にいる大人たちが、子どもたちに声をかけていけたらいいですね。鍵やパトロールよりも大切なのは、人のつながりだと実感しています。周囲の愛情を感じた子どもたちは、ギリギリのところで歯止めがきくのだと思います。

永田 学校を拠点にした地域のネットワークづくりが急務ですね。

藤本 最後に、教育長の夢を教えてください。永田祥子さんとの対談写真 その4

永田 この時代に最も大切な「教育」という仕事をさせていただくわけですから、持てるすべての能力や時間、経験やネットワークを生かして、この仕事に専念したいと思っています。

藤本 その中で永田さんらしさって何でしょう。

永田 「教育」は子どもたちへの最高のサービスだと思っています。それを届けるために、今の私に足りないところは、周囲の方々の力をお借りして、やっていきたいと思っています。厳しい現実、難しいシステムの中だからこそ、「やわらかい心」の部分を大切にしていきたいですね。

藤本 今日は、生のお言葉が伺えてうれしかったです。今後ともおからだに気をつけて有言実行をお願いします。ありがとうございました。

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