藤本 多くの母親が、子どもを思うがゆえ、子どもに干渉してしまいがちですね。
永田 子どもには子どもの、親とは違った人生があることに気がつかないんですね。
藤本 子どもは親の期待に応えようとして、実際に応えられないことで、問題も生じます。
永田 児童相談所にいたときに、たくさんの虐待を受けた子どもを見てきましたが、どんな親でも、子どもは親が大好きです。どこまでも親をかばって「自分がわるい」と言うんです。 
藤本 子どもは何もわるくない。多くは親に、また社会に問題があるのでしょう。
永田 母親だけではなく、父親や学校の先生、それに子どもに関わる周囲の大人たちみんなにいえることです。点数ばかりを気にするのではなく、個々に持っている素晴らしい個性や潜在的な力を伸ばしてあげたいと思いますね。
藤本 大阪市では、習熟度別少人数授業や「小学校区教育協議会│はぐくみネット│」など、積極的に取り組んでいる教育事業がたくさんありますが。
永田 学力の向上を目指し、基礎・基本の確実な定着をはかるため、小学校5・6年生の国語・算数科および中学校2・3年生の国語・数学・英語科において、学習の習熟度に応じた少人数授業を導入しています。
藤本 保護者の方からは、今ひとつ成果が見えにくいといった声も聞かれるようですが。
永田 昨年度からの実施で、実施率は半数に至っておりません。今年度はさらなる拡充を目指していますので、徐々にその成果もあらわれてくるでしょう。どんな生き方も素晴らしい。けれども自分の行きたい道が見えたところで、基礎学力が身についていなければそれもかないません。次を目指すため、生きていく基礎づくりのために必要なものだと思っています。
藤本 やはり小中学校の勉強を、しっかりとやっておくことが大切なのですね。
永田 暗記で詰め込む知識ではなく、ひとつひとつ考え、小さいステップをクリアしていく力、疑問を解決したときの喜びや大きな気づき、がんばって積み重ねていくことで味わう達成感など、その過程が大事だと思うんです。
藤本 それは勉強だけではなく、すべての場面に通じることかもしれません。
永田 学力以外にも、情操教育や、自分を守ること友人や先生たちとの人間関係づくりなど、人として生きていく上で大切な基礎となる部分を、しっかりとつくることです。人生にはつまづきがつきものですがそのときどうするか。それを乗り越える力こそ「生きる力」だと思います。
藤本 学校だけに頼ってはいられませんね。
永田 それぞれ補い合うことが大切でしょう。そして家庭と学校が共通の意識と理解を持ってやっていかなければならないことをわかっていただきたいですね。
藤本 学校と家庭と地域の三者の連携がうたわれていますが、実際にはいかがですか。
永田 三者の連携を促進し、小学校を拠点に人々のつながりによって子どもを育んでいく「教育コミュニティづくり」を称して「はぐくみネット」といいます。市民ボランティアによる「はぐくみネットコーディネイター」を中心に、関係機関や団体、学校などで協議会を組織して、「ふれあいデー」の実施や「安全確保の取り組み」なども行っています。「はぐくみネット」は、19年度には市内全296小学校区で実施予定です。 
藤本 さまざまな事件や事故のニュースが飛び交う中、ますます「地域」の必要性がうたわれていますね。
永田 「はぐくみネット」もそうですが、「総合的な学習の時間」や「児童いきいき放課後事業」など、地域を巻き込んだ子育てを実施していますが、そうしたつくられた場面だけではなく、もっと自然に人々が交流できればと願うところです。昔は近所づきあいもあったし、広場や原っぱでは異年齢の子どもたちが一緒に遊んでいました。子どものころに人と交わり、ぶつかったり、挫折を経験することもなく、大人になってしまうのは危険です。
藤本 今は、隣にどんな人が住んでいるのかも知らず、スーパーやコンビニでは一言も交わさずに買い物ができます。
永田 総合的な学習といわなくても、社会や家庭の中に子どもたちの体験や学びがあふれているのに
藤本 いまどきの家庭では、スピードや手軽さを優先させてしまい、生活の中で伝えるべきことを伝えないままに毎日を過ごしています。それでいて学校に教育の責任を押し付けるのはおかしな話ですね。