スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

子どもたちの未来のために  ピアニスト・後藤 泉さん

春休みの3月27日、大阪市中央公会堂で開かれた「第1回子育て支援クラシックコンサート〜フルートとピアノのデュオ・リサイタル」(財団法人大阪市教育振興公社、株式会社トランタンネットワーク新聞社共催)。1100人という超満員の親子を感動させたウィーン・フィル首席奏者のシュルツさんとピアニストの後藤 泉さん。翌日、お疲れの表情も見せずあらわれたおふたり。クラシック音楽やコンサートについて、子どもたちへの思いなど、ユーモアを交え語られました。

 

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団フルート首席奏者 ヴォルフガング・シュルツさん
Wolfgang Schulz / Flute  オーストリア、リンツの音楽一家に生まれる。18歳でウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団の首席奏者に就任するなど若くして頭角をあらわす。1970年ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団およびウィーン国立歌劇場管弦楽団の首席奏者となり現在に至る。1983年よりウィーン・フィル、ベルリン・フィルの首席管楽器奏者からなるアンサンブル・ウィーン=ベルリンのメンバー。1979年よりウィーン音楽大学教授を務め、1996年からはルールマラン(フランス)でのボヌール音楽祭の芸術監督を務めている。

ピアニスト 後藤 泉さん
Izumi Goto / Piano  桐朋学園大学音楽学部ピアノ科卒業。同大学アンサンブルディプロマコース修了。今年6月にウェルナー・ヒンク、フリッツ・ドレシャルとトリオで共演。7月のベートーヴェンオーケストラ・ボン日本公演(第2回子育て支援クラシックコンサート/7月1日ザ・シンフォニーホール大阪/7月5日横浜みなとみらいホールを同時開催)では、ヒンク、ドレシャルとともにソリストを務める。10月はダニエル・ゲーデ、11月はドレシャル、12月はヒンクと共演。故 田沢恵巳子、ゴールドベルク山根美代子、三浦みどり、P.ポンティエの各氏に師事。

子どもたちに本物のクラシックを

藤本 昨夜の中央公会堂でのコンサート、お疲れ様でした。たくさんの子どもとお母さん、お父さんたちが、おふたりの演奏に酔いしれたと思います。どうもありがとうございました。ヴォルフガング・シュルツさんと後藤 泉さんの対談写真 その1

シュルツ こちらこそ、楽しいひとときをありがとう。会場のお客様や、コンサートをつくり、支えてくれたスタッフの皆さん、ステージで共演してくれた泉にも、心から感謝しています。

後藤 私も同じです。いろいろな意味で私にとっては初めてのことばかり。どこまでできたかわかりませんが、本当に感謝しています。

藤本 ウィーン・フィルの首席奏者、シュルツさんに、子ども向けのコンサートなんて失礼だ、という声もあった中で、今回の企画を快く受けてくださった。その理由は何ですか。

シュルツ もちろん子どもたちのためです。彼らには、ぼくらにはない未来がある。子どもたちに、音楽家として伝えられる場をいただいたことは、本当に光栄です。

藤本 昨日は、1100人もの親子連れが集まりました。皆さんとても満足して帰られました。 

シュルツ そんなに大勢の人が来ていたの? ステージの上からはライトの関係で、会場の様子がすべて見渡せるわけではないんです。

後藤 私は開場前に並んでくださっているのも拝見したし、お見送りもさせていただいたので、皆さんの表情や様子はよくわかっています。

藤本 早い方は3時間も前から並んでくださったんですよ。少しでも良い席で音楽を楽しみたい、シュルツさん、後藤さんを近くで見たい、そんな気持ちだったのだと思います。

子どもたちにも音楽を聴く心を

シュルツ ウィーンでも子どもたちを集めて吹いたことがあります。そのときはフルート奏者として、オーケストラの中でフルートが持つ役割などを話し、いろいろな音色を聴かせたりしながら、演奏しましたよ。

藤本 日本にも子ども向けのクラシックコンサートや音楽イベントは、ほかにもあるんです。でもシュルツさんが吹いてくださるのだから、本物の音楽をしっかり聴かせたかった。子どもだからここまででいい、子どもはわからないからと、子ども向けのプログラムにはしたくなかったんです。「今日は大人と同じ曲を聴くのだから、大人がびっくりするくらい、マナーを守って聴きましょうね」と、そんなコンサートに。

シュルツ 子どもたちに本物をという趣旨は、よくわかります。子どもは感性で聴けるので、案外、大人より理解力があるかもしれません。

藤本 日本はどうしても子どもに媚びる文化があって、それは少し違うかなと思っています。

シュルツ 子どもをひとりの人格として認め、尊重することが大切です。子どもをひとりの人格として認め、尊重することが大切です。ヴォルフガング・シュルツさんと後藤 泉さんの対談写真 その2

後藤 子どもにわかる言葉や音で説明するのと、子どもだましの曲をやるのとは大違いです。

藤本 昨日も前半の後藤さんのソロでは、わかりやすい言葉で解説してくださったおかげで、我々大人も含め、子どもたちにはすんなりと音楽が耳に入ったのではないでしょうか。本来、ある程度の知識や感性を持っていれば、説明がなくてもいいのかもしれませんが。日本の教育では、そこが足りないように思います。

後藤 日本では、子どもがクラシック音楽を聴ける機会はほとんどありません。ホール側が、子どもは入場厳禁とうたっている所もあります。

藤本 音楽をゆったりと楽しみたい方もいらっしゃいます。でも、時には子ども向けのコンサートもありだと思うのです。最低限のルールをわきまえれば、ですが。昨日は、最後のほうで少し騒々しくなってしまい、失礼いたしました。演奏中に気になったのではないですか。

シュルツ 1000人もいれば当然でしょう。もともと子どもは長時間は我慢できません。それは親ごさんのマナーの問題でしょうね。

藤本 途中でお子さんが泣いて席を立たれ、ロビーのモニターでご覧になっている方もいらっしゃいました。でも中には、子どもが泣いても平然としている人、通路を走る子どもに注意を与えない親ごさんも。子ども向けのコンサートならば、何でも許されるわけではありません。

後藤 きっと初めてのクラシックコンサートで、ルールやマナーをご存じないのでしょう。音楽を楽しむ服装にしてもそうですね。

シュルツ 昔はネクタイに上着が決まりでしたが、今はあまりうるさくなくなりました。パーティーやオペラにはフォーマルで行くのと同じ、少しは意識したほうがいいかもしれないね。

後藤 昨日はロビーで一緒に写真を撮ったりしましたが、小さいお子さんも、皆さんおしゃれをしてきてくれましたよ。

藤本 昨日はロビーで一緒に写真を撮ったりしましたが、小さいお子さんも、皆さんおしゃれをしてきてくれましたよ。

シュルツ きっと、ピアノの発表会のお洋服で来てくれたお子さんもいるでしょう。世界一の音楽も、大阪市中央公会堂のライトアップも、子どもたちには特別な夜になったと思います。

後藤 そういう機会を大人たちが意識的につくり、与えてあげることが必要なんです。

藤本 公式の場で、子どもに何をどう伝えられるかですね。親も子も練習が必要です。

シュルツ 子どもにとっても親にとっても、次は一体何が起こるのかわからない。たとえば、拍手のタイミングもわからない。そんな中での初めての試みにしては、上出来じゃないですか。

後藤 昨日の「アンコール」のコールは、シュルツさんも初めてのご経験だったと思います。

藤本 クラシックコンサートでは「ブラボー」の声やスタンディング・オベーション(※)が通例ですが、我々はほとんどが経験がありません。あの「アンコール」は、心からの「ありがとう」という声だったと思います。

※スタンディング・オベーション(standing ovation)/立ち上がってする拍手喝采。

シュルツ 前のほうの席しか見えなかったけれど、それはもう最高の笑顔と拍手をくれていたからわかります。ぼくもとてもうれしかったよ。

ステージでは全力を出しきるだけ

藤本 ところで、シュルツさんと後藤さんは初めてのデュオだったそうですが、離れていて、どうやって練習をなさったのですか。ヴォルフガング・シュルツさんと後藤 泉さんの対談写真 その3

シュルツ 事前に選曲や打ち合わせはあったけれど、合わせて練習したのは昨日のリハーサルが初めてでした。泉はぼくのことを知らないわけだから、きっと苦労したんじゃないかな。どう?

後藤 音楽について厳しい方だとか、お噂も聞いていましたので、少しこわかったですね(笑)。でも実際にお会いしたら、とてもやさしく、いろいろ教えてくださってうれしかったです。

藤本 シュルツさんも後藤さんも、これまでたくさんの方とコンサートをなさっていて、相性とか、やりやすさとかもあるんですか。

シュルツ 30年もやっていれば自分の音楽は心得ています。曲もそうだし、パートナーのことも、少し演奏すればすぐに感覚はつかめるからね。泉のことは、ウィーン・フィルのペーター・シュミードル氏に、よく聞いていました。素晴らしい演奏家だと聞いていたけれど、全くその通り。泉は初めての曲もあって、昨日は大変だったんじゃない? とてもうまくいったので、よく練習しているなと感心しましたよ。

後藤 ありがとうございます。シュルツさんは、音楽の世界では神様のような方。ご一緒していただけるだけで、ただうれしくて。ステージでは何も考えず、夢中で弾いただけです。

シュルツ フルートとピアノでは息つぎと鍵盤をたたく間が重要で、お互いに合わせながらやっていくので、すごく難しい。ぼくもずいぶん昔にいわれたのですが、若いときは自分よりも上手な人と演奏させてもらうことが大切です。一緒にステージに立つことで、学べることがたくさんある。どんどん実力がついてきます。

後藤 おかげさまで、ウィーン・フィルのウェルナー・ヒンクさん、フリッツ・ドレシャルさん、ペーター・シュミードルさん、ダニエル・ゲーデさんと、いろいろな方に共演のチャンスをいただいています。どなたも私の数百倍もの経験や知識を持った方々ばかり。毎回のステージは勉強ですし、またそれは、私にとってはとても楽しいゲームでもあります。

藤本 楽しむ余裕があるなんて、さすがですね。プレッシャーや緊張はないのですか。

後藤 私にできることは限られています。どんなにがんばっても何年もの経験にかなうわけではありません。とにかくそのとき持てる力のすべてを出しきること、それだけを心がけています。

シュルツ 泉のピアノは最高だよ。とても繊細で大胆で、ピュアな音です。あとはもう少しテクニックを修得して、音に色を付けることを学んだらいいでしょう。強弱をつけることで、ますますダイナミックな演奏になると思います。

藤本 どんなことを心がけたらいいですか。

シュルツ たとえばフルートと組んだときは、ピアノが前に出過ぎることなく、少しおさえめに弾くことが大事だね。昨日も、ぼくが一言アドバイスしただけで、泉はすぐにその意味を理解して、あとはその通りにきちんと弾けていたから問題はない。注意を受けて、それを瞬時に実行することはとても難しいんだ。それができるというのはとても素晴らしいと思います。

藤本 私は音楽の専門家ではなく、泉さんとの出会いからクラシック音楽を聴き、今回のようなチャンスをいただきました。そこで思うのですが、美しい音色が奏でられるのは、やはり演奏する人の心が美しいからではないでしょうか。

シュルツ そうとは限らないかもしれないね。

藤本 えっ、そうですか。シュルツさんは?

シュルツ ハハハ、ぼくはどちらも素晴らしいに決まってるよ。

藤本 じゃあ私は特別ラッキーですね。泉さんにシュルツさん。私の中のクラシック音楽と奏者との関係論はくずれません。

シュルツ がっかりさせるような答えでごめんなさい。今までたくさんの人とやってきたからね。でも間違いなくいえるのは、泉や藤本さんとの出会いは、ぼくにとっても大変素晴らしく、また今後につながる大きなチャンスだと思います。今回、泉と組んでみて、彼女のことが十分に理解できたし、藤本さんが描く子どもたちへの音楽という趣旨もきちんと理解した。この次に来るときはより慎重に選曲して、さらにいいステージをつくりたいと思います。

歌うように奏でるフルートの音色

藤本 ところでシュルツさんの子ども時代のことを教えていただけますか。フルートはいつごろから始められたのですか。

シュルツ 両親はビオラとヴァイオリン奏者ですが、ブルックナー音楽学院で教えていました。きょうだいが4人いて全員が音楽家です。ぼくがフルートを吹いたのは5歳のころだったと思います。父の一言が始まりです。

藤本 お父様は、フルートの才能を見抜いていらしたのでしょうか。

シュルツ フルートを選んだのは偶然でしょう。ある日、父が教えている女の子の所に私を呼んで「一緒にやってみるか?」と言いました。ブロンドの髪が美しい女性で、思わず「はい、がんばります」と言いました。ところがしばらくすると、彼女は学校を去っていってしまった。ぼくもやめようかと思いましたが、せっかくだから続けることにしたのです。

藤本 フルートの魅力だけではなかったんですね(笑)。

シュルツ ハハハ。その後は、まじめに一生懸命練習して、18歳でフォルクスオーパーの首席奏者に、35歳でウィーン・フィルの首席奏者になりました。

藤本 才能はもちろんですが、大変な努力を重ねられたのでしょうね。

シュルツ フルートが大好きになった。とくにオペレッタ(※)を演奏するのが楽しくて仕方ない。今ではフルートが身体の一部になっています。

※オペレッタ(operetta)/台詞と歌の混じった、軽い内容のオペラ。19世紀後半以降、パリやウィーンを中心に流行した。軽歌劇。喜歌劇。

藤本 シュルツさんにとって、フルートとは。

シュルツ 人生そのもの。よく趣味を聞かれるが、フルートと答えて相手を失望させるんだ。

藤本 全くレベルは違いますが、私も同感です。仕事と趣味の境なんてありません。

シュルツ 好きな仕事をしていることが一番の幸せです。フルートを吹いていると心から幸福感を覚え、生きていることに感謝したくなる。

藤本 シュルツさんの気持ちがそのままフルートに出ているのでしょう。昨日のコンサートの感想を、ある方は「魔術師のようだった。何であんな音が出るのかわからない」と絶賛されていました。普通では出せない音のようですね。

シュルツ きっと、フルートがいいんだろう。

藤本 やはり特別なフルートなんでしょうか。お値段とかも教えていただけたら。ヴォルフガング・シュルツさんと後藤 泉さんの対談写真 その5

シュルツ 値段は専門の楽器店に行ってごらん。そこで素晴らしいフルートを5つ吹いてみて、自分に一番フィットしたものを選んだんだよ。演奏では、ひとつだけ心がけていることがあります。できるだけ人が歌っているように演奏しています。フルートの音色を可能な限り人間の声に近づけたい。そこには喜びや嘆き、悲しみなど、さまざまな感情が表現されています。

後藤 ピアノも同じです。同じ音であっても、その組み合わせで複雑な感情を表現しています。

藤本 昨日はクラシックに詳しい方も、初めての方も、十分に楽しめたコンサートだったと思います。次回、もしおふたりのステージが再び実現したときには、今のお話を思い出しながら演奏を聴かせていただきたいと思います。今日は、素晴らしいお話をありがとうございました。

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