スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

お芝居で楽しい人生を  演出家  あんがいおまるこさん

1995年にフリースペース「石炭倉庫」をオープンして以来、演劇やコンサート、映画やダンスなどさまざまな文化活動に提供している、プロデューサーのあんがいおまるこさん。若者からシニアまで、たくさんのクリエーターとよき理解者、鑑賞者たちとの出会いの場、交流の場づくりの仕掛人に聞く、お芝居の魅力、そして楽しく生きる方法。

 

演出家 あんがいおまるこさん
あんがいおまるこ  新潟県生まれ、小学5年生で大阪へ。百貨店へ勤務後、友人と共同で印刷業をスタート。その後「日本デザインクリエーターズカンパニー」を立ち上げ、本の編集、出版業のほか、音楽、映像、演劇など数々の事業を手がける。演劇プロデューサー、書家、画家、日本ペンクラブ会員。あんがいおまる一座座長、ごくらくとんぼ一座主宰。2001年「第1回なにわ大賞」受賞。著書『あっけらかん』『耳を澄まして』(いずれもJDC刊)。「あんがい」とは、案外、思案の外、考えないこと。「おまる」が意味する丸は、宇宙。

●あんがいおまる一座&ごくらくとんぼ一座
大阪市港区波除6-5-5 石炭倉庫
TEL06-6581-0664
http://www.sekitansouko.com

へき地に人を呼べる?

藤本 初めて石炭倉庫におじゃましましたが、生で見るお芝居は迫力があって楽しいですね。

あんがい 今日見ていただいたお芝居『トライアングル』は、脚本家・綾羽一紀が主演女優3人のために書き下ろした作品で、熟女たちが織りなす心のヒダが主題になっています。見る角度によっていくつもの色を味わっていただけたら、と思っています。 あんがいおまるこさんとの対談写真 その1

藤本 ストーリーの中でいくつかの疑問が生まれますが、答えは最後まで出ませんでしたね。おそらくその答えは、見る人によっては全く違うところなのでしょうね。

あんがい あんがいおまる一座には「スタジオ公演」と「本公演」がありますが、「スタジオ〜」のほうは稽古場であるこの石炭倉庫を使った公演です。私たちは常に質の高い演劇を目指していますから、役者のレベルアップを目的とし、実践の場として多くを学ばせていただいています。ですから今日も、お客様が足を運んでくださったこと、一緒に舞台づくりに参加してくださったことに感謝しなければなりません。

藤本 3人のお芝居は素晴らしく、とてもお勉強中とは思えませんでしたけれど。

あんがい 今はまだ、3人とも修業の身。人間の深みにある心情表現をテーマに勉強しているところです。演劇はキャストだけでなく、スタッフ、そしてお客様と一体となってつくるもの。お稽古もそうですが、やはり現場にまさる学びはありません。

藤本 先ほど観客席でご一緒していた皆さんは常連さんも多いのでしょうか。会場全体がとてもあたたかい空気でしたね。

あんがい 初めての方もいらっしゃるし、友の会のメンバーや関係者もおりました。毎回、お客様の顔ぶれが違うので、それによって、芝居がガラリと変わることもあります。

藤本 お客様も舞台をつくるメンバーのひとり。そのあたりが、お芝居の醍醐味なのかもしれませんね。ところで、この「石炭倉庫」というのは、珍しいお名前ですね。

あんがい その名の通り、かつては石炭の貯蔵倉庫だったんです。

藤本 どうりで。これだけの雰囲気は、つくれるものではないでしょう。

あんがい ここは「フリースペース」という言い方をしていますが、もともと本町にギャラリーをつくり、開放したのがきっかけです。

藤本 絵とか写真とか?

あんがい ではなくて、作家や映画監督の展覧会などをやっていました。そのうち若者たちが、芝居をやりだしたんです。彼らに「なんでこんな場所でやるの?」と聞いたら「芝居をやりたいんだけど、場所がない」と言う。

藤本 大阪の街には、若者たちが表現するスペースや機会がたくさんありますよね?

あんがい 場所はあっても、値段が高い。安い所は1年半とか2年とか待たないとダメだって。ちょうどバブルがはじけたころでした。そこで、「そういう若者たちにスペースを」と、大阪中を探し歩きました。 場所はあっても、値段が高い。安い所は1年半とか2年とか待たないとダメだって。ちょうどバブルがはじけたころでした。そこで、「そういう若者たちにスペースを」と、大阪中を探し歩きました。

藤本 放っておけない性分なんですね。いい場所はありましたか。

あんがい あるある、いっぱいあるんです。ビルがまるごと空いていたり、街なかの1階のガラススペースがガランと空いていたり。思わず「建物は使うためのものなのだから、使いたい人に貸しなさい」とオーナーに手紙を書きました。同時に、うちの事務所も片付けて、人が集まれるスペースをつくろうと乗り出したんです。

藤本 本格的ですね。

あんがい やるとなったら、早いですよ。ところが残念なことに、当時の事務所は9階建てのビルの屋上に小屋が乗っているという違法建築。そこに人を集めることはできないといわれてしまいました。そんなときに、ある方からここを紹介されたんです。

藤本 最初の印象はどうでしたか。

あんがい 本町の事務所から、わずか2駅。それなのに、ここは随分へき地だなぁ、と。何しろ倉庫街ですから。でも初めて車で来たときに、入口の階段を見て、惚れちゃった。ここを上がると何かいいことがありそうな、そんな気がしたんです。

藤本 ええ、わかります、その感覚。私もさっき階段を上がるとき、同じようにドキドキワクワクしましたもん。

あんがい 倉庫だから窓が少なく、ガラーンとしていて、でもそれが雰囲気があっていいなって。建築の専門家に見てもらったら、「建物は申し分ない。ここなら何でもできる。ただし、このへき地に人を呼べるか。問題は企画だよ」と。

藤本 企画なら任せて、ですよね。やっぱりメーンは演劇ですか。

あんがい 今は、2つの劇団を主宰していますが、これまでいろんなことをやってきて、おかげさまで、さまざまな方と交流がありました。その輪をつなげるような場所になったらなあ、という思い。気がついたら、周りの人が勝手にどんどん企画していましたね。

藤本 今月もスケジュール表を見ると、映画サロン、和太鼓教室、歌唱教室、ダンスレッスン…と大にぎわいですね。中には四柱推命教室、なんていうのもありますね。そもそも、おまるこさんの本業は何だったのですか。

へき地の石炭倉庫に人を呼べる?

あんがい 昔から勤めが続かないんですよね、私って。飽きっぽいというか、決められたことが苦手というか。長くて1年続いたことがなかったんです。あるとき、自分に何ができるだろうと考えたら、英文タイピストしかなかった。それで、ノウハウもなかったけれど、友人と一緒に「文字」に関する会社を起こしたの。文章を書くのは好きだから「手紙の下書きをします」、貿易商社にもいたから「商業文をつくります」、そのほか速記、翻訳…と、便利屋さん。

藤本 今でいう女性起業家ですね。 あんがいおまるこさんとの対談写真 その2

あんがい かっこいいものではなかったですよ。和文タイプの文書作成に悪戦苦闘、1枚打つのに徹夜もしょっちゅうでした。そのうち、必然的に輪転機を回すことになり、技術の進歩とともにオフセット印刷へ。カラー印刷の美しさを知って、今度はグラフィックデザインの世界へ。印刷屋と同時に、デザイン会社も始めました。

藤本 ぜんぶご自身でなさったんですか。大変ですよね。

あんがい 大変どころか楽しくて。「私が本当にやりたかったのはコレだ!」というような感覚がありました。ほかにもデザイナーや物書きなど、大勢の仲間が集まってきました。勢いに乗って、クリエーター集団をつくったのです。

藤本 日本デザインクリエーターズカンパニー(JDC)ですね。

あんがい でも結局、デザインで食べていくのはなかなか難しい。そこで2つの会社を1つにして、気づいたら出版をやっていました。

藤本 おまるこさん、自分で書いてデザインして印刷までなさるんですものね。

あんがい 性格なんでしょうか。事業計画とかではなく、自然の流れに任せているところがありますね。音楽をできる人が来たから音楽をやり、映像に詳しい人が来たから映像もやり、という感じ。自分が本気でやりたいと思ったら、絶対にできないことはないというのが信条です。

藤本 それにしても、なぜこう次から次へと広がっていくのでしょう。

あんがい 気がついたら何でも屋さん。たまたま縁があって、いろいろな人が次々にやって来る。私は「あなたは何がしたい? 何ができるの?」と質問します。書くこと、話すこと、歌うこと、演じること…、誰でも、ひとつくらい得意なことがあるでしょう。私は、それをどんどんやってもらうだけです。

藤本 とてもわかりやすいですね。「クリエーター」というと、すぐれた才能やセンスを持った限られた人、というイメージがありますが、実は、すべての人がクリエーターなんだ、って。私も本当にそう思います。

行間にある「心」をどう読むか

あんがい 才能を眠らせている人も多いので、もったいないですね。「あんがいおまる一座」のほかに、もうひとつ「ごくらくとんぼ一座」という劇団を主宰しています。こちらは60歳以上の方も含め、お芝居に「出たい」という人すべてがステージに上がれます。

藤本 演劇の経験がない人でも大丈夫ですか。

あんがい 最初は声を出すこともできませんがみんなに混じって練習を重ねていくうちに、自然に声が出るようになってきます。 。

藤本 六十の手習いなんていいますが、ご高齢のハンディはありませんか。

あんがい 年齢の高い方は、理解力、存在感はあるけれど、表現する力に欠けています。自分を持っているだけに、それをくずすことが難しいんですね。また反対に、若い人は自分を持っていませんね。高校で演技の講座をしていますが、いまどきの高校生は何を考えているのか、よくわからない。いつも思うことです。

藤本 そうですね。でも彼らが感じていないわけではないんですよね。感じたことを、やはりどう表現していいのかわからない。

あんがい 今の日常の中では、自分の思いを出す必要もないのでしょうね。 あんがいおまるこさんとの対談写真 その3

藤本 子どもは感じる心を持っていますから、今のうちに、それを伝えるにはどう表現したらいいか、また伝えることの素晴らしさを知ってもらいたいですね。

あんがい 「ごくらく〜」も「あんがい〜」も共通していますが、大切なのは、台本の行間を読むということです。

藤本 心の動きを演じるのですね。

あんがい とにかく、なりきること。それから、自分に自信を持つことです。なりきって演じるからこそ、お芝居は楽しいんです。いくつもの人生を疑似体験できるのですから。

藤本 でも、簡単にはできませんね。

あんがい 自分でも気づいていない資質や一面をどう引き出して伸ばしていくか、それが私の仕事です。本人が自分の魅力に気づくことによって、それが力になり、向上していけるんです。

藤本 自分ではない自分を表現すること、そしてそれを多くの人に見てもらうということが、とても大きなことなのでしょうね。

あんがい 以前、からだが不自由で寝たきりの女性が「舞台に出たい」と言うので、酔っぱらって引っ張られる役を演じてもらったことがありました。台詞は「いやや」という一言だけでしたが、演じた彼女は自信を持てたのでしょう、とても明るくなりました。

藤本 私の場合は、学生時代の文化祭や音楽祭しか経験はないのですが、みんなでひとつのものをつくるという喜びが大きいような気がしますね。

人が好き、ものづくりが好きだから

あんがい ステージでは、それぞれに役割があって、皆が気持ちをひとつにすることによって形になる。ここは教える場ではなく、自分でやりたいと思うことをやる場です。大切なのは、やはり周囲のやさしさだったり、愛情だったり、だと思います。

藤本 安心して自分を表現できる環境というのは、人間の信頼関係以外にありませんよね。

あんがい 「ごくらく〜」でいうと、これまで肩書き社会にいた方がお芝居を始めると、全く人が変わります。私は「芝居セラピー」という言葉で表現していますが、誰でも、お芝居を始めると元気になる。舞台には出会いがあり、芝居を通じて、よき仲間と心を通わせる楽しさがあります。

藤本 シニアの皆さんにとっては、まさに生きがいと呼べるものでしょう。ある意味、とても価値のある社会事業ですね。

あんがい 私はいつも、出会った人と思いつきで、楽しいことをやっているだけ。人が好きで、ものづくりが好きで、という単純なことなんです。

藤本 2001年には、大阪文化の創造、啓蒙活動として、石炭倉庫の活動が「第1回なにわ大賞」に選ばれましたね。「いちびり大賞」という別名の通り、「大阪らしいユニークな活動のリーダーシップをとった人に」(なにわ名物開発研究会主催)という賞ですから、ピッタリですね。

あんがい 私のほうが皆さんからいろいろなことを教えられ、元気をもらっています。たくさんの人に支えられ、つながって生きている今を楽しんでいるだけです。

藤本 今が楽しいといえる人生なんて、素敵ですね。

あんがい 今は、24時間ぜんぶが自分の時間。仕事とか私生活とか、境目はありません。好きなことを仕事にしている幸せですよね。

藤本 さらなる夢があれば教えてください。

あんがい 若いころからずっとそうですが、やりたいと思うことはどんどんやってきました。海外旅行にいきたいと思ったら、すぐに飛行機に乗るとか。うずうずとした感情にかられたら、私にとってはそれをすることはすべて正しい、と決めています。とにかく、おなかの底からぐぐぐぐっ…と沸き上がってきたことを、即、実行し続けることでしょうか。何事も、口だけではなく動くことが大事。人も力もあとからついてくるはずです。

藤本 最後に、あんがいおまる一座の今後の予定を聞かせてください。 あんがいおまるこさんとの対談写真 その4

あんがい 劇団10周年記念の特別公演『上海1930』に続き、7月9日、10日の両日、難波のワッハホールで『大阪希望館』(原作・難波利三)を上演します。戦争と平和をテーマにしたこの作品は、これまでに50回も公演。好評につき、昨年に続いての再演です。私たちもがんばりますので、ぜひ大勢の方に見ていただけたらと思います。

藤本 人々に伝えたいメッセージですね。私もぜひ拝見させていただきたいと思います。

あんがい お芝居を見た人、演じた人、みんなが元気になれるような、意欲的なステージをつくっていきたいと思います。

藤本 期待しています。今日はどうもありがとうございました。

バックナンバーの一覧へ戻る

ページのTOPにもどる
老若男女響学「お母さん大学」プロジェクトはこちら
お母さん大学メルマガ藤本でこぼこ通信 登録はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
ブンナプロジェクトはこちらから
池川 明先生のDVD「胎内記憶」&本のご購入はこちらから
 
株式会社トランタンネットワーク新聞社 〒221-0055 神奈川県横浜市神奈川区大野町1-8-406