藤本 初めて石炭倉庫におじゃましましたが、生で見るお芝居は迫力があって楽しいですね。
あんがい 今日見ていただいたお芝居『トライアングル』は、脚本家・綾羽一紀が主演女優3人のために書き下ろした作品で、熟女たちが織りなす心のヒダが主題になっています。見る角度によっていくつもの色を味わっていただけたら、と思っています。 
藤本 ストーリーの中でいくつかの疑問が生まれますが、答えは最後まで出ませんでしたね。おそらくその答えは、見る人によっては全く違うところなのでしょうね。
あんがい あんがいおまる一座には「スタジオ公演」と「本公演」がありますが、「スタジオ〜」のほうは稽古場であるこの石炭倉庫を使った公演です。私たちは常に質の高い演劇を目指していますから、役者のレベルアップを目的とし、実践の場として多くを学ばせていただいています。ですから今日も、お客様が足を運んでくださったこと、一緒に舞台づくりに参加してくださったことに感謝しなければなりません。
藤本 3人のお芝居は素晴らしく、とてもお勉強中とは思えませんでしたけれど。
あんがい 今はまだ、3人とも修業の身。人間の深みにある心情表現をテーマに勉強しているところです。演劇はキャストだけでなく、スタッフ、そしてお客様と一体となってつくるもの。お稽古もそうですが、やはり現場にまさる学びはありません。
藤本 先ほど観客席でご一緒していた皆さんは常連さんも多いのでしょうか。会場全体がとてもあたたかい空気でしたね。
あんがい 初めての方もいらっしゃるし、友の会のメンバーや関係者もおりました。毎回、お客様の顔ぶれが違うので、それによって、芝居がガラリと変わることもあります。
藤本 お客様も舞台をつくるメンバーのひとり。そのあたりが、お芝居の醍醐味なのかもしれませんね。ところで、この「石炭倉庫」というのは、珍しいお名前ですね。
あんがい その名の通り、かつては石炭の貯蔵倉庫だったんです。
藤本 どうりで。これだけの雰囲気は、つくれるものではないでしょう。
あんがい ここは「フリースペース」という言い方をしていますが、もともと本町にギャラリーをつくり、開放したのがきっかけです。
藤本 絵とか写真とか?
あんがい ではなくて、作家や映画監督の展覧会などをやっていました。そのうち若者たちが、芝居をやりだしたんです。彼らに「なんでこんな場所でやるの?」と聞いたら「芝居をやりたいんだけど、場所がない」と言う。
藤本 大阪の街には、若者たちが表現するスペースや機会がたくさんありますよね?
あんがい 場所はあっても、値段が高い。安い所は1年半とか2年とか待たないとダメだって。ちょうどバブルがはじけたころでした。そこで、「そういう若者たちにスペースを」と、大阪中を探し歩きました。 場所はあっても、値段が高い。安い所は1年半とか2年とか待たないとダメだって。ちょうどバブルがはじけたころでした。そこで、「そういう若者たちにスペースを」と、大阪中を探し歩きました。
藤本 放っておけない性分なんですね。いい場所はありましたか。
あんがい あるある、いっぱいあるんです。ビルがまるごと空いていたり、街なかの1階のガラススペースがガランと空いていたり。思わず「建物は使うためのものなのだから、使いたい人に貸しなさい」とオーナーに手紙を書きました。同時に、うちの事務所も片付けて、人が集まれるスペースをつくろうと乗り出したんです。
藤本 本格的ですね。
あんがい やるとなったら、早いですよ。ところが残念なことに、当時の事務所は9階建てのビルの屋上に小屋が乗っているという違法建築。そこに人を集めることはできないといわれてしまいました。そんなときに、ある方からここを紹介されたんです。
藤本 最初の印象はどうでしたか。
あんがい 本町の事務所から、わずか2駅。それなのに、ここは随分へき地だなぁ、と。何しろ倉庫街ですから。でも初めて車で来たときに、入口の階段を見て、惚れちゃった。ここを上がると何かいいことがありそうな、そんな気がしたんです。
藤本 ええ、わかります、その感覚。私もさっき階段を上がるとき、同じようにドキドキワクワクしましたもん。
あんがい 倉庫だから窓が少なく、ガラーンとしていて、でもそれが雰囲気があっていいなって。建築の専門家に見てもらったら、「建物は申し分ない。ここなら何でもできる。ただし、このへき地に人を呼べるか。問題は企画だよ」と。
藤本 企画なら任せて、ですよね。やっぱりメーンは演劇ですか。
あんがい 今は、2つの劇団を主宰していますが、これまでいろんなことをやってきて、おかげさまで、さまざまな方と交流がありました。その輪をつなげるような場所になったらなあ、という思い。気がついたら、周りの人が勝手にどんどん企画していましたね。
藤本 今月もスケジュール表を見ると、映画サロン、和太鼓教室、歌唱教室、ダンスレッスン…と大にぎわいですね。中には四柱推命教室、なんていうのもありますね。そもそも、おまるこさんの本業は何だったのですか。