藤本 早速ですが、ご出身はどちらですか?
平久保 大阪市の京橋付近で生まれ、桜宮小学校、花乃井中学校を卒業しました。
藤本 当時はどんなお子さんでしたか?
平久保 明朗快活、自由気ままな子どもでした。興味がある所へ、すぐ行っちゃうんですよ。
藤本 好奇心が旺盛だった?
平久保 見たい、知りたい、やってみたいと思ったら、まっしぐら。後先考えず、突っ走っちゃうところ。今も、そのまんまですけど。
藤本 きっと、そんな性格が、今の平久保さんをつくったのでしょうね。
平久保 小学3年生のときに父を亡くし、中学卒業と同時に、奈良にある母の実家に移ったんです。大阪に比べたら、緑が残るいい所です。母は「気」を祀る神社を長年守っています。精気、生気、元気とか、そういう気があることで、人間はもちろん森羅万象すべてのものが生きているという教えでしたから、昔からしつけにはとくに厳しく育てられました。
藤本 具体的にいうと、どういうことですか?
平久保 この世に起きることはすべてそうなると決められていることだから、おかげさまと思え、と。よく「気の持ち様」っていいますよね。
藤本 わかっていても、窮地に立たされると、人間は弱いし、逃げてしまったり。
平久保 私の中に「逃げる」という選択はありません。右か左かを迫られたら、必ずしんどい道を選んできました。
藤本 苦労やつらい経験の中には、たくさんの気づきや学びがありますね。
平久保 人間は業を重ねて強く、そしてやさしくなっていくんでしょうね。自分を究極に追いやって一歩一歩上がっていく。そういう考えでいたから、しんどいこともあったけど好転してきた。母から学んだ精神が今の私を形成したと、本当に感謝しています。父を早く亡くした母は女手ひとつ、気一本で私と弟を育ててくれました。そんな母ですから、母の言うことに間違いはない。絶対的な信頼がありますね
藤本 親子でも、信頼関係をつくるのは難しい。
平久保 信頼は、目に見えない「気」なんですよね。空気のように守られていれば、必ず子どもは勇気と自信を持って生きていける。わが子を持って、ますます実感しているところです。
藤本 全く同感です。ましてや親子は特別です。
平久保 子どもはパワーを持っているものです。それを親が信頼しないでは、何も始まりません。
藤本 今、我々が気づいているのも、そこなんです。子どもってすごいって。
平久保 教育が進む一方で、大切なものが見えなくなってしまっています。知識や学問がある大人がすごいんじゃなくて、生きる本能を持った子どものほうがずっとすごい。子どもが持っている力を、そのまま伸ばしてやりたいですね。
藤本 母親から信頼されて、子どもはますます自信を持ち、パワーアップできるでしょう。
平久保 親子だけではなく、すべての人間関係がそうでしょう。仕事も子育ても一緒ですね。
藤本 多くの母親たちが、愛情のあまり、過干渉になってしまいます。信頼の部分が欠落してしまっているのでしょうね。
平久保 うちは遅く産んだので、かわいいなんてもんじゃない。はっきりいって親ばかですよ。
藤本 お子さんは、おいくつですか。
平久保 小学1年生の双子の男の子。私に似たのか、やんちゃで何をやらかすかわからない。もし子どもに何かあったらなんて考えたら、こわくて。いまだに自転車にも乗せられません。
藤本 子どもを持ってみて、いかがですか。
平久保 子どもの存在は大きいですね。自分の命より大切なものですから。母の愛は崇高なものだと思います。火事場にも飛び込めます。
藤本 仕事に変化はありましたか。
平久保 基本姿勢は変わりませんが、マタニティー下着の開発とか、経験が形になることも。視野の広がりもそうですが、やりがいというか、生きがいというか、それが一番大きいですね。
藤本 仕事と子育ての両立はいかがですか。
平久保 初めからスタッフには「迷惑かけるけど、お願い」と言って、会社で子育てしましたし、幼稚園時代はご近所のお母様方に応援していただきました。お友だちに恵まれていたんでしょうね。子育ての初心者同士、悩みを共有してきたから、強い仲間意識がありますね。
藤本 今は「地域で子育て」といわれています。
平久保 理想は自然発生的なものですよね。私は、お母さんたちがいれば「ふんふん、何なの?」と、ずかずかと厚かましく入っていきました。だって情報がないと困りますもん。
藤本 子どもはいろいろな目で育てていくことが大切ですね。
平久保 自分の子だけでなく、他人の子も見てあげよう。それにお母さんじゃない人も、ちょっとした心の余裕を持って手を差し伸べてくれたらと思います。こんなに裕福な日本にないものといったら、「余裕」と「気」ですもんね。
藤本 子どもたちにこれだけは伝えたい、と思うことは何ですか。
平久保 「挨拶はしっかりと」「相手の気持ちをよく考えて」と。叩いたら、痛いでしょって。
藤本 そういう、子どもの感じる心を大切にする大人が少なくなっていますでしょ。
平久保 人間は心が大事です。人間として教育の原点はそこにあると思うんです。私は昔から勉強嫌いで、劣等感のかたまりでした。それでもここまでやってこられたんです。