宮田 教師という職業に、当然厳しさは求められますが、だからといって「偉い」とか「失敗してはいけ
ない」とは思いません。
藤本 昔は「先生は絶対」みたいなところがありましたね。
宮田 親も先生から言われたら「おまえがわるい」と、子どもに言っていました。
藤本 時代は変わりました。今どきの親や家庭に対しては、どう思いますか。
宮田 「家庭崩壊」は現実問題です。親から電話がかかってくるんです。「今から仕事に出るけど、子どもはまだ寝てるので、あとは頼みます」なんて。校則で禁じられている「茶髪」を注意すれば、「私だって染めてるのに、何がわるいんや!?」と言い返してきます。
藤本 深刻な問題ですね。
宮田 先生は非常にたくさんのものを抱えています。勉強だけ教えればいい、では済まされない。昔はそれぞれに「家訓」がありました。「他は他、うちはうち!」と、父親、母親の考えは絶対のものでした。
藤本 今は「友だち家族」が多く、親がプライドや威厳を持たなくなった。家庭の秩序もルールも、なくなってきていますね。
宮田 子どもに対する「哲学」を示すというか、「人生」を語ってほしい。せめて、「親の背中」を見せてほしいんです。
藤本 「子どもは勝手に育つ」と思っている親もいますし、「親がどんな仕事をしているか」を知らない子どもも多いですね。
宮田 「生まれながらに素質や才能を持った人を金や銀とするならば、自分は鉄である。ならば鉄は鉄として生きる」と言ったのは、弁護士の中坊公平先生です。森永ヒ素ミルク事件の際は、靴をすり減らし、一軒一軒被害者の家を回って話を聞いたそうですが、そういう地道な努力があってこそ、涙なしでは聞けない、あの冒頭陳述が生まれ、勝訴につながったのです。
藤本 子どもたちばかりでなく、親たちも一番苦手なところですね。
宮田 「まじめ」や「努力」という言葉は、死語になってしまったようですね。
藤本 今も本質的にはそういう部分を持っているのに、隠そうとする風潮もあります。
宮田 信念に従ってまっすぐに進む力を伸ばしてやりたい。家庭でも、「背骨」をつくってやることが大事ですね。
藤本 生徒や保護者にも、こういう話を聞かせたいですね。
宮田 教職員には常に話しています。「朝の会」などでは、努めて「こういう生き方はどうだろう」といった話をするように、言っています。わずか3分、されど3分。凝縮した3分ととらえています。
藤本 素晴らしいことですね。保護者にも、直接お話される機会はあるのですか。
宮田 懇談会などでも、子どもたちの現状を伝え、「こういう子育てがいいのではないか」というようなことを話しています。そこへ出席されない親たちもまだまだ多いのは、難しいところですが。
藤本 親たちが、学校や活動に興味を持つような仕掛けはないですか。
宮田 本校の取り組みとして、夏休み前の短縮授業を45分から50分に変えました。1日4時間だから20分、10日で200分の時間がプラスされます。
藤本 そう考えると、大きいですよね。
宮田 今までとは違う、何かやろうとしている、と知らせていくことが大事です。
藤本 大阪市では「教育改革プログラム」が推進されていますが、わかりやすく説明していただけませんか。
宮田 完全学校週5日制になり、新しい教育課程が実施されています。新たな時代にふさわしい「大阪らしい」教育を目指したものです。教育も、3年、5年、10年経つと、どうしても価値が決められてしまいます。企業もそうですが、現状維持は敗北も同然。とはいえ、「改革」だからとただ変えればいいのではなく、変えるからには、前より良いものにしなければなりません。
藤本 満足や納得がいくものとはどんなものでしょう。
宮田 「子どもを預けて安心」の学校をつくりたい。学校の教育内容をどんどん発信していくことも大事でしょう。先生方の評価育成システムも立ち上がっていますが、資質向上を目指していくためにも、大切な一歩といえるでしょう。
藤本 文部科学省の学習指導要領も「ゆとりの学習」と「学力」の問題について、いろいろいわれていますが。
宮田 教育の行方が定まっていない感はありますが、「学力」も「生きる力」も基礎、基本さえしっかりしていれば問題はありません。大切なことは、頭ばかりでなく、精神の部分に、しんばり棒のようなものをしっかりと体験でこしらえていくことです。子どもたちにも、信念を持って生きることの素晴らしさを伝えたいですね。
藤本 今後は、どう指導していくのですか。
宮田 教職員には、なるべく明解に、わかりやすく語れるようにと指導しています。それには相手(子ども)を理解することが先。決して量ではなく、根幹を大切に。勉強は、9つの教科で分けられるものではありません。その狭間や、どれにも属さないものもたくさんある。ですから我々は、各教科を横断しながら興味、関心を引っぱり出し、伝えていけたらと思っています。
藤本 親としては、関心を持つことから始めて、一緒に教育を変えていけたらと思います。今日はありがとうございました。