藤本 女流登山家として、これだけの活躍は本当に素晴らしいと思います。
今井 経済的、人格的に自立した両親に育てられた家庭環境もあったと思いますが、私自身「女だからできない」「結婚しているからできない」と、思ったことはないですね。やりたいことは自分で何でもやってきました。
藤本 素晴らしい生き方ですね。今は少子化の問題からも、女性の生き方が問われています。男女共同参画の推進委員や講演活動など、幅広くご活躍ですね。
今井 活動としては、1990年ごろから地球環境問題に積極的に関わっているほか科学、健康、教育などの委員、最近は、中高年の山ブームも手伝って、さまざまな「ツアー」の仕事が多いですね。カルチャーセンターなどでは、中高年向けの「山の楽しみ方」講座も開いています。
藤本 今では定番の「ヨーロッパアルプスツアー」や「ヒマラヤツアー」も、最初は今井さんが企画されたそうですね。
今井 ヨーロッパでは当たり前の「山で楽しむ」行為が日本にはありませんでした。いい景色を見てリラックスする。非日常の旅で自分なりの何かを学び、考えてもらいたいと思ったのです。
藤本 アルプスやヒマラヤへの夢も、まさか叶うとは思いません。その点、お医者様でもある今井さんのツアーなら安心です。
今井 高度を考慮したルートを練るなど、気を配りました。安全と安心の中で、その人なりの楽しみ方ができるツアーです。
藤本 人々に夢を与えるツアー。とても贅沢な旅ですね。
今井 あるとき、長年エリート人生を送ってきた方が参加されました。「ルーブル美術館めぐり」にも参加したけど、これに優る贅沢な旅はないと、私たちのツアーを絶賛されました。「もう自分には吸収すべき物がないほど突っ走ってきた。これからは、都会で吸収した物を自然の中で放出したい」とおっしゃるのです。
藤本 価値観の見直しでもありますね。
今井 自然の中に自分を投げ出す幸せを実感されています。山ではお金があっても何もならないでしょ。
藤本 これからの時代は、そういう人も増えていきそうですね。ところで今井さんは、今でもよく山にいらっしゃるそうですね。
今井 3種類のつきあい方があります。ひとつは自分の楽しみで行く山行。一方で自分の能力を高めるための山行。3つ目は、他人様をお連れする山行です。山の楽しみ方は人それぞれ。もっと気楽に山へ行き、自分流に楽しんでほしいですね。
藤本 今井さんが「登山家」ではなく「ナチュラリスト」とも呼ばれるゆえんですね。
今井 自然は人々を心豊かにします。世界を見ると、日本は必ずしも裕福でも幸せでもないですね。第一、子どもの目の色が違います。モンゴルやネパールの子どもたちは、したたかでパワフルに生きています。