藤本 講演会では、主にどんなテーマでお話をされるんですか。
高木 ネットワーク『地球村』は、日本で一番大きなグリーンコンシューマネットワークですが、テーマは環境にとどまらず、地球のため、子どものためになるすべての情報といってもいいでしょう。
藤本 改めて「グリーンコンシューマ」の意味を教えていただけますか。
高木 直訳すれば「環境にやさしい市民」。環境破壊だけでなく、飢餓や貧困、戦争や差別など、すべての不幸のない「平和な社会」の実現を願い、行動する人のことです。環境先進国を見れば、グリーンコンシューマは市民の7割(70%)に対し、日本はわずか1%。これでは社会は変わりません。
藤本 「環境」というと、エネルギー問題、ゴミ問題…。「平和」というとまた、少し違ってくるようにも思いますが…。
高木 環境、平和、福祉…、テーマは数えきれませんが、実はすべてがつながっているんです。根本的な問題はひとつ。それを解決しようというのが、ぼくの仕事です。
藤本 ズバリ、どういうことですか。
高木 やはり「人」ですね。社会を変えられるのは、私たち市民。市民の意識が変わることで、社会は大きく変わります。
藤本 でも、人の意識を変えるのって本当に難しいですよね。私も市民活動をいろいろやってきて、つくづく感じます。
高木 人は教えられても変わらない。ですからまずは事実を伝える。とくに日本は、環境の実態だけでも一般に知られているよりはるかに深刻ですから、それを知ることで、たいがいの人は「このままではダメだ」と気づきます。
藤本 私たちは、当たり前に暮らしている社会に多くの矛盾があることを知りません。おまけに毎日のことに精一杯で、人のこと、社会のことを考える余裕もありません。みんな自分のことだけ。自分が幸せならそれでいい、と思ってしまっています。
高木 ぼくも昔はそうでした。いい学校に行って、いい会社に入る。人よりいい給料をもらって、いい車に乗って…。それが幸せだと勘違いしていました。「いい生活をするのはなぜ?」「どうして贅沢をするの?」「贅沢をしてうらやましがられたいの?」と、自問自答の果てに、やっと気づいたのです。当たり前と思っていたことがすべて「思い込み」で、それは一種の「洗脳」だったと。
藤本 その洗脳に気づいたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
高木 ぼくは交通事故にあって生まれ変わった。それまでの自分の生き方や物の考え方が変わり、すべてが見えてきたんです。
藤本 いつごろのことですか。
高木 34歳のときでした。幸い命はとりとめたが、生きがいだったピアノは二度と弾けない。一生の仕事と信じてきた合唱の指揮台にも戻れない。それどころか普通に歩くことも、家族と出かけることも、寝転がってテレビを見ることもできなくなると医師から宣告されたのです。そうなるともう、「死」を考えてしまうんです。迷惑をかけるばかりの自分に生きている意味はないって。
藤本 そこまでいって初めて、生きてることの意味が見えてきたんですね。
高木 寝たきりでしたから、考える時間はたくさんありました。自分の中のもうひとりの自分との対話ですね。
藤本 どんな風に考えられたのですか。
高木 当時は合唱コンクールの指揮をしていて、勝てないことに悩んでいました。でも「何のために勝ちたいの?」「勝ったらどうなるの?」と問いかけていくうちに答えに詰まり、立ち往生してしまいます。そして、何度もやり直すうちに、「自分が信じてきたことはあまりにもおかしなことだったんだ」と気づき、愕然としたのです。
藤本 その答えは何だったのですか。
高木 名声やお金には意味もありません。勝つために音楽をやるんじゃなく、音楽が好きだからやるんだと気づいたのです。
藤本 きわめてシンプルなことですね。
高木 考えたら子どもはみんなそう。したいことをするし、したくないことはしない。