スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

大切なのは人生をどう生きるか 木村政雄の事務所 木村政雄さん

マネージャーとして、横山やすし・西川きよしを日本一の漫才コンビに育て上げた人。吉本興業の東京進出をゼロから立ち上げ、関西のお笑いを全国、いや世界に広めた「お笑い仕掛け人」。「ミスター”吉本“」として数々の功績を残した木村政雄さんが、昨年10月に吉本興業を突然退職。向かう先が噂される中、ご自身の今後の生き方、実体験から得た人生観などを、自らの言葉で語られた。今、悩んでいるすべての人々に向けたメッセージが熱い。

 

木村政雄の事務所 木村政雄さん
きむら まさお  1946年京都市生まれ。69年同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業。吉本興業株式会社に入社し、劇場勤務から制作部に異動。8年半、横山やすし・西川きよしのマネージャーを務めたのち、80年東京事務所開設のため赴任。MANZAIブームに乗り数多くのタレントを売り出す。89年本社制作部長就任。吉本新喜劇再生プロジェクトを指揮しリニューアルを果たす。93年取締役制作統括部長就任。以降、名古屋、福岡、札幌、岡山に事務所を開き、銀座7丁目劇場、渋谷公園通り劇場をオープンするなど、吉本興業の全国展開を推進。97年常務取締役大阪制作本部長就任。2002年退職後は大阪市内に木村政雄の事務所(ひっくり返った「の」は目立ちたい洒落ッ気)を設立し新プロジェクトを構想中。著書に『気がつけば、みんな吉本〜全国吉本化戦略〜』(勁文社)、『笑いの経済学〜吉本興業・感動産業への道〜』(集英社)、『吉本興業から学んだ「人間判断力」』(講談社)。

今の時代に求められているのは「人間性」

藤本 早速ですが、56歳にして「フリーター」になられた今の心境はいかがですか。木村政雄さんとの対談写真 その1

木村 33年間勤めた会社を辞めたわけですから、思いもいろいろです。皆さんから「大変ですね」とよく言われますが、フリーターも悪くない。「全部自分のこと」っていうのがいいですね。だから今は、毎日が楽しくて仕方ない。

藤本 あちこちからオファー(※1)が来て、大変なんじゃないですか。

※1 オファー(offer)/契約の申し込み。引き合い。

木村 おかげさまでいろんな声をかけていただきますが、「これ!」と、本気で向かえるようなものが来るまで、もう少し待ってみようかなって。自分では「エグゼクティブフリーター」って呼んでいます。「ただのフリーターちゃうで」って(笑)。

藤本 何かかっこいい。ちなみに、どんなお誘いがあるんですか。

木村 分野はいろいろですね。でも、ぼく自身は何の特技もない。運転ができないからタクシー運転手は無理。体力がないからガードマンも無理。ミミズが触れないから農業もできない。じゃあ何ができるのかといったら、今までずっと「人」と関わってきた経験を生かしてできること。やっぱり「人づくり」しかないのかな、とは思いますね。広い意味での「教育」でしょうか。

スキルもマインドもない
「羊の目をした大学生」

藤本 木村さんの場合、広くいろんな方に向けて、講演活動も多いですよね。

木村 多いときで、年間100本くらいをこなしていました。それこそ、学生から企業人、学校の校長先生向けの研修会などにも、定期的におじゃましていましたね。

藤本 それぞれ、どんなお話をなさるんですか。

木村 共通しているのは、オンリーワンになれということでしょうか。今のこの時代に、何が求められているかといったら、人間性しかないと思うんですよ。それも、ユニークな個性。

藤本 日本は方向性を失っています。ひとつの価値観があって、それを目指しているうちはよかった。良い学校を出て、良い会社に入りさえすれば安心だった。でも今は、学校を出ても就職できない、一生懸命会社のために働いてもいつ辞めさせられるかわからない。間違いなくいえることは、学歴社会、終身雇用が保障される時代は、もう完全に終わったということです。

木村 高校生にとっては史上最悪の就職難で、「行く所がないから、とりあえず大学に行っておくか、それともフリーターでもするか」です。

藤本 ぼくから見ると、「おとなしい羊の目をした大学生」はこわいですね。「好きにしてもいいんだよ」と言っても、スキル(※2)もマインド(※3)もないから、自分でチャンスをつくり出せない。そして、子どもばかりか、夢も希望も持てない大人たち。

※2 スキル(skill)/技量。熟練度。
※3 マインド(mind)/心。精神。心に留めること。

木村 大人がこれでは、子どもたちには何も伝えられません。

藤本 一番子どもに近い親や、先生がもっと示していかなければ。

木村 お母さんたちの責任は重大ですね。

藤本 もちろんだけど、「おじさんたち」の責任が大きいね。電車に乗っているしょぼくれたおじさんたちを見て、「夢を描きなさい」って言ってもそりゃあ、無理ですよね。お母さんが「勉強しなさい」って言っても、「やって何になるの? それで、これじゃしょうがないじゃん」って、子どもは言いますよ。元気な大人がいない日本は、今や瀕死の重体。完治するには50年はかかるでしょう。

木村 それじゃあ、手遅れです。もう少し早く手当てする方法はないでしょうか。

藤本 戦後50年かかって今の日本経済をつくってきました。背骨を抜かれた日本社会を立て直すには、どうしてもそれなりの時間がかかるでしょう。やっとみんながそれに気づき、変わり出したところで、今、何をしたらいいかを、一人ひとりが真剣に考える必要があります。

木村 教育の世界も同じ。昨年からの「教育改革」で学校、家庭が一丸となって、子どもたちのことを考え始めました。

藤本 「おじさん」と共に、輝きを失っているのが「先生」じゃないかと、ぼくは心配しています。国ではなく、各自治体がオリジナリティーあふれる政策を持たなければダメです。それには、もっとチャレンジできる人材を校長先生にする必要がある。

木村 今は民間からの登用もありますね。

藤本 1人、2人じゃダメでしょ。それができないなら、少なくとも5年〜10年の社会体験を積んでもらうようなシステムをつくらないと。校長先生に経営マインドがなければ、これからの時代をつくっていく子どもを育てることはできないでしょう。

ボケとつっこみこそ、本当の「生きる力」

藤本 子どもたちに、先生が与えられる情報って何でしょう。木村政雄さんとの対談写真 その2

木村 やはり「人生は面白い」と教えるのが大人としての役目。テストの点や成績なんて問題じゃありません。元素記号を知らなくても生きていけますが、人とコミュニケーションできない人間は生きていけません。それでも最低「読み書きそろばん」は、といわれますが、ぼくは、それに「ボケとつっこみ」を加えたらいいと思うんです。

藤本 ボケとつっこみ?

木村 東京の人には悪いけど、東京は「笑いの偏差値」が低いと思いますよ。面白いことを言っても笑わない。引いちゃうんですよね。笑わせてあげようというのがサービス精神なら、笑ってあげようというのもある意味、「思いやり」といえるんじゃないかな。ボケられる子は、絶対に学校でいじめにはあいません。

藤本 なるほどね。ボケとつっこみが「生きる力」というわけですね。

木村 先生も、点数の良い子、ルールの守れる子ばかりを大事にしないで、それぞれを認めてあげることが第一。一人ひとり、みんな違った良いモノを持っています。

藤本 木村さんの周りには、きっとユニークな方がたくさんいらっしゃるのでしょうね。

木村 ヨシモトに来るのは、ユニークを通り越しておかしな連中ばかり。親や先生のいうことなんて聞いちゃいられない。彼らの考えていることは「どうやって目立とうか」ということだけです。

藤本 学校では、これが否定されてしまいます。

木村 これからの時代はみんなそうだけど、黙ってルールに従っているような人間に、創造力は育たない。芸能界だけじゃなく、どんな場面でも求められるのは、クリエーティブ(※4)な発想力と行動力。偏差値とかで評価するのではなく、元気値とか熱血値とか勇気値とか、そんな価値基準が必要でしょう。

※4  クリエーティブ(creative)/創造的。生産的。独創的。

藤本 はずすほうが面白いんですね。

木村 そうそう。ルールをゆるめてやれば、人間のキャパシティー(※5)は広がっていきます。それと大人は、もっと自分を見てほしいから悪いことをするという、子どもの性質を理解してやらなければ。子どもに関わる大人は自分の立場を守る前に、子どもの立場を守ってやらなきゃダメです。世の中、きれいごとだけじゃないですからね。

※5  キャパシティー(capacity)/収容力。能力。力量。容量。 略して「キャパ」と称す。

藤本 子どもは大人のそういう体質を敏感に感じますからね。

木村 公の席で先生や役人がするあいさつほどくだらないものはないと、ぼくは思うんですが、子どももあんなの聞いちゃいられない。だって、誰も自分の言葉でしゃべっていないのが見え見えだ。まずは、大人が、ひとりの人間として子どもに向き合わなければ。「教育」とは教え諭すことではなくて、教え楽しむこと。子どもと同じ目線に立って一緒に楽しむことが大切です。

藤本 先生たちも悩んでいたんじゃダメですね。

木村 毎日子どもたちからたくさんのエネルギーをもらえるなんて、教師ほど楽しい仕事はありません。何も考えずに「教師」になっちゃった先生は悩んでいるだろうから、一度学校を出て社会を見てきたらいい。指導要領ではなく、自分で何かを伝えるためにね。

藤本 今の子どもたちは、「何になりたい?」と聞くと「サラリーマン」と答えます。社会にどんな職業があるかも知らないんです。

木村 大人たちが、もっと子どもに選択肢を与えてあげる。むかしは地域が開かれていて、身近にたくさんの大人たちが生きていた。キセルのそうじやさん、竿竹やさん、やきいもやさん、ポン菓子に紙芝居にひよこ売り…。

藤本 ありました、ありました。紙芝居なんか、楽しみでしたもんね。

木村 大人と子どもがふれあう場所がたくさんあって、子どもはその中で自然と社会性や人生観を学んでいったんです。集団登校も、子ども同士の縦のつながりを持つということでは、意味があるんですけどね。

藤本 いろんな価値観がありますから、学校でも地域でも、ひとつのルールを決めるのは大変です。

木村 誰かに期待したり依存したりしていたんでは始まらない。まずは一人ひとりの大人がちゃんとしなきゃいけないでしょ。子どもにとっては、一番身近なお父さんお母さんが意識して変わらなければね。

中年の国・日本は、
ヨーロッパ型のカルチャーに

藤本 今、私たちは、子どものために変わることも大事ですが、ひとりの人間としても生き方を問われ木村政雄さんとの対談写真 そのていますよね。

木村 間もなく日本は、平均年齢42・8歳(※6)という「中年の国」になります。つまり、ヨーロッパ型のカルチャーに変わってくるということです。日本人とヨーロッパ人の暮らし方を比べてみてください。

※6  42.8歳/国立社会保障・人口問題研究所調査の「人口の平均年齢、中位数年齢および年齢構造指数:中位推計」(2002年1月推計)によると、2004年には日本の平均年齢は42.8歳になると推測される。

藤本 中高年たちがいきいきと暮らしています。

木村 彼らは生活をエンジョイする術を知っています。日本人のようにお金がすべてではなく、貧しくてもいきいきと人生を生きています。仕方なく働いている日本人と違って、働くこと自体がエンターテインメントなんですよ。

藤本 40歳、50歳で、人生終わりと悲観している人がたくさんいますよね。

木村 ひとつは、第一線で活躍することだけがすべてという日本人の考え方が間違っています。今の日本の閉塞感は、60代の人たちが席を譲らないことにありますね。かつて自分が先輩にチャンスをもらったように、次の世代に渡してやらないと。だから団塊の世代といわれる50代がつらいんです。リストラにあい、人生を嘆いて自殺してしまう人もいるけど、ぼくにいわせれば、これからが面白い。

藤本 明るいフリーターですもんね。 

不登校もリストラも、生き方を考えるチャンス

木村 ポイントは、アイデンティティー(※7)の確立でしょう。ぼくの場合もほんとにいいチャンスをいただいたわけです。「私は何者?」と自分と向き合う時間の中で、いろいろなものが見えてきます。

※7 アイデンティティー(identity)/自分とはこういう人間であるという 明確な存在意識。主体性。

藤本 忙しくて見失ってしまっていた何かが見えてくるのでしょうね。

木村 他人はどうでもいい。大切なのは「自分」以外の何物でもないし、自分がどう生きるか、自分がどんな人間かがすべてでしょ。そうなったら、肩書きとかはもうどうでもよくなりますからね。

藤本 それに気づいた人は強いですよね。

木村 間もなく『56歳からの幸せをつかむ方法』(仮称)という励まし系の本をPHP研究所から出す予定なんですけど、ほんとにそう思います。あのまま辞めずに会社にいたのでは、何も考えずにいて、こうはならなかったでしょう。そう思うと、まさに、変化はチャンスです。

藤本 それはリストラされたお父さん、不登校の子どもにもいえることではないでしょうか。

木村 子どもが「学校に行きたくない」と言い出したらチャンスと思って感謝しなきゃ。親も子も一緒に考えることが大切です。

藤本 そこでは、前向きに考える、生きる姿勢が大切ですね。

木村 それさえあれば、何事も叶うはずです。むかし学生のころに『事件記者』というテレビ番組があったんだけど、ぼくはずっとそれに憧れて新聞記者になりたいと思っていました。

藤本 へえぇ。社会派なんですね。

木村 まあ、単純にかっこいいなって思ったのかな。ほとんど記者クラブや飲み屋さんとかにいて、仕事らしい仕事はしていなかったんですけど、何か少し知的な職業というイメージがありました。

藤本 結果は、吉本興業に。

木村 デスクワークに魅力を感じていなかったから、その意味ではヨシモトは楽しかった。でもそれがあって今、結果として本を出させてもらったり、いろんな媒体に書かせてもらったり…。

藤本 夢が叶ったわけですね。

木村 自分で書いて人に伝えるという意味では同じ。「願えば叶う」ですね。だから、人生は面白い。

藤本 そういう意味では、木村さんもこれからがますます楽しみですね。

木村 せっかくヨシモトから出て違うフィールド(※8)に移れたわけですから、そこで自分にできることを探してがんばりたいですね。ぼくの生き方から人に何かを伝えられたら最高です。それが、生き方木村政雄さんとの対談写真 その4の意味を持たせる「本当の教育」ではないでしょうか。

※8 フィールド(field)/現場。分野の意味にも使われる。

藤本 子どもも大人も、木村さんの実体験から学べる話がたくさんあります。ぜひ、これからもメディアで、または講演会などを通じて、木村さんの生き方を発信し続けてください。

木村 ハハハ。生き方の真価が問われているようで、責任重大ですね。

藤本 期待しています。がんばってくださいね。今日は、本当にどうもありがとうございました。

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