藤本 「ジュンク堂」さんを初めて知ったのは、もうだいぶ前ですね。「立ち読み禁止、座り読み歓迎」
っていうのが気になっていたんです。でもなかなか機会がなくて…。そこで、工藤社長とお会いする前にはと、先日、東京のジュンク堂書店池袋本店におじゃましてきました。
工藤 それは手間をかけさせてすみません。
藤本 いいえ。行って見てほんとにびっくり。広いのなんのって。まるで図書館。最初は1時間程度さっと見て帰るつもりだったんですけど、いろいろ本を見始めたらなんと、5時間もいてしまったんです。
工藤 で、希望の本は見つかりましたか?
藤本 もちろんありました。でもほかにも読みたい本だらけ。みんな欲しくなりあれもこれもと欲張って、計算したらなんと5万円にも。こんなに買えないなって、もう一度吟味。それでも2万円も買ってしまいました。長い時間真剣に本を選んで疲れたし、お金も使ったんですが、なぜか心地よく、すごく幸せな気分なんです。
工藤 ありがとうございます。でも探した本があってよかった。ぼくはこの「本が見つかってよかった!」の声が聞きたくて、本屋業をやっているのですから。
藤本 私たちも、どうしても欲しい本がないと「ほんとにもうっ!」って思うし、その分見つかったときには「やったー、ありがとう!」って、本屋さんに感謝ですよ。
工藤 それはうれしいなあ。池袋本店は、10フロアで売り場面積2000坪という世界最大規模の大型店舗。ほぼすべての本が揃っているといってもいいでしょう。大阪なら堂島アバンザ店は1500坪、100万冊の在庫数では、洋書までは入りきりませんが、日本書はすべて入った感じです。
藤本 本の数もそうですが、じっくり本を読み、探すことができるのがいいですね。
工藤 そのために、いすとテーブルがあるんです。うちは専門書がメインなので単価が高く、2000円も3000円もします。ですからお客様には、できるだけゆっくりと本をお選びいただきたい。藤本さんがおっしゃる「座り読み歓迎」は難波店ができたときの宣伝コピーだから、もう5、6年前。ほんとは選書にどうぞという意味だった。マスコミ受けを狙って「立ち読み禁止、座り読み歓迎」と出したんですよ。
藤本 インパクトがありましたね。「座って読んでいいよ」なんていうと、お客さんは本を買わなくなってしまいませんか。
工藤 それが反対で、居心地がよくて長居する。その分欲しい本が見つかりますから、売上増につながります。
藤本 でも、1時間もあれば、1冊の本を読み終えてしまいますよね。
工藤 ただ読みだけの本は、それだけの本ということです。買いたい、持ち帰りたい本が売れればいい。だって価値のある本は必ず欲しくなるんです。ですから、時間をかけて選べば選ぶほど顧客単価は上がります。藤本さんも、最初は1時間のつもりだった。でも面白そうな本があったから5時間いた。結果、2万円も買ってくださった。ほらね、滞在時間と購売は比例します。
藤本 こういう本屋さんは、むかしは考えられなかったと思うんですが。
工藤 難波の店を出すときに、アメリカのバーンズ・アンズ・ノーブルという書店に行きました。当初からうちも、ゆっくり本を選べるようなスペースを設けてはいましたが、スケールが違った。それを見て「もっと大々的にアピールしたほうがいいな」と思ったんです。