スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

本を通して人生の出会いを 株式会社ジュンク堂書店 代表取締役社長 工藤恭孝さん

神戸・三宮に1号店をオープンして以来、専門書を中心にした豊富な品揃え、いすとテーブルを配置した「座り読み」の奨励で話題づくり。阪神大震災被災後も、積極的な投資戦略。「他店になくてもジュンク堂にはある」と言わしめる圧倒する蔵書、「図書館のような」ゆったりスペースで、読書愛好家から絶大な人気と絶対の信頼を誇るジュンク堂書店。バリバリの大阪商人というよりもむしろ穏やかな医学博士といった雰囲気の工藤社長に、「本」への熱い思い、そしてサクセスストーリーを伺った。

 

株式会社ジュンク堂書店 代表取締役社長 工藤恭孝さん
くどう やすたか  1950年兵庫県生まれ。立命館大学法学部卒業後、父親が経営する書籍取次会社・キクヤ図書販売に入社。1976年に独立し、神戸・三宮にジュンク堂書店1号店をオープン。専門書をメインに徹底した品揃え、ゆったりスペースで顧客を拡大。専門書ならジュンク堂という圧倒的な信頼を得る。現在、神戸・三宮店に本社事務所を置き、売場面積2000坪という世界最大級の東京・池袋店、売場面積1500坪の大阪・堂島店をはじめ全国23店舗の大型書店を展開中。

本社所在地:神戸市中央区三宮町1-6-18
大阪本店:大阪市北区堂島1-6-20堂島アバンザ1〜3階
http://www.junkudo.co.jp

ゆったりと選書できる店づくり

藤本 「ジュンク堂」さんを初めて知ったのは、もうだいぶ前ですね。「立ち読み禁止、座り読み歓迎」工藤恭孝さんとの対談写真 その1っていうのが気になっていたんです。でもなかなか機会がなくて…。そこで、工藤社長とお会いする前にはと、先日、東京のジュンク堂書店池袋本店におじゃましてきました。

工藤 それは手間をかけさせてすみません。

藤本 いいえ。行って見てほんとにびっくり。広いのなんのって。まるで図書館。最初は1時間程度さっと見て帰るつもりだったんですけど、いろいろ本を見始めたらなんと、5時間もいてしまったんです。

工藤 で、希望の本は見つかりましたか?

藤本 もちろんありました。でもほかにも読みたい本だらけ。みんな欲しくなりあれもこれもと欲張って、計算したらなんと5万円にも。こんなに買えないなって、もう一度吟味。それでも2万円も買ってしまいました。長い時間真剣に本を選んで疲れたし、お金も使ったんですが、なぜか心地よく、すごく幸せな気分なんです。

工藤 ありがとうございます。でも探した本があってよかった。ぼくはこの「本が見つかってよかった!」の声が聞きたくて、本屋業をやっているのですから。

藤本 私たちも、どうしても欲しい本がないと「ほんとにもうっ!」って思うし、その分見つかったときには「やったー、ありがとう!」って、本屋さんに感謝ですよ。

工藤 それはうれしいなあ。池袋本店は、10フロアで売り場面積2000坪という世界最大規模の大型店舗。ほぼすべての本が揃っているといってもいいでしょう。大阪なら堂島アバンザ店は1500坪、100万冊の在庫数では、洋書までは入りきりませんが、日本書はすべて入った感じです。

藤本 本の数もそうですが、じっくり本を読み、探すことができるのがいいですね。

工藤 そのために、いすとテーブルがあるんです。うちは専門書がメインなので単価が高く、2000円も3000円もします。ですからお客様には、できるだけゆっくりと本をお選びいただきたい。藤本さんがおっしゃる「座り読み歓迎」は難波店ができたときの宣伝コピーだから、もう5、6年前。ほんとは選書にどうぞという意味だった。マスコミ受けを狙って「立ち読み禁止、座り読み歓迎」と出したんですよ。

藤本 インパクトがありましたね。「座って読んでいいよ」なんていうと、お客さんは本を買わなくなってしまいませんか。

工藤 それが反対で、居心地がよくて長居する。その分欲しい本が見つかりますから、売上増につながります。

藤本 でも、1時間もあれば、1冊の本を読み終えてしまいますよね。

工藤 ただ読みだけの本は、それだけの本ということです。買いたい、持ち帰りたい本が売れればいい。だって価値のある本は必ず欲しくなるんです。ですから、時間をかけて選べば選ぶほど顧客単価は上がります。藤本さんも、最初は1時間のつもりだった。でも面白そうな本があったから5時間いた。結果、2万円も買ってくださった。ほらね、滞在時間と購売は比例します。

藤本 こういう本屋さんは、むかしは考えられなかったと思うんですが。

工藤 難波の店を出すときに、アメリカのバーンズ・アンズ・ノーブルという書店に行きました。当初からうちも、ゆっくり本を選べるようなスペースを設けてはいましたが、スケールが違った。それを見て「もっと大々的にアピールしたほうがいいな」と思ったんです。

専門書ならジュンク堂という信頼

藤本 一般書もそうですが、児童書のコーナーなども特別に配慮されていますね。

工藤 「家族で本屋さんに行こう」が理想です。お父さんとお母さんが交代で読みたい本を児童書のコーナーに持って来て、子どもと一緒に本を読むというスタイルです。

藤本 本が傷むこともありますよね。

工藤 幸いこの業界は委託システムで、つまり、傷んだ本は返品が可能です。本が傷むということは、それだけお客様が手にとったということですから、ボロボロになったなんて、つくった側からすれば、むしろうれしいわけですよ。それがいやなら一冊を見本にして、あとは最初からパッキングをしてきます。『ハリポタ』(※1)もそうです。

※1 ハリポタ/ご存知『ハリー・ポッター』(J.K.ローリング著/松岡佑子訳/静山社刊)。最新作は『ハリー・ポッターと炎のゴブレット 上下巻』

藤本 私はよく本屋さんで待ち合わせをしますが、むかしは「待ち合わせか」みたいな顔をされることが多かった。最近は、大型店が多いせいか、そうでもないですね。

工藤 どの店もなるべく、ゆったり店内、ゆっくり選書を心がけています。待ち合わせも歓迎です。スペース的には大変な苦労があるでしょう。うちは駅から少し離れた立地ですが、その分スペースにゆとりがある。だからこれだけの蔵書を持ち、専門書やバックナンバーまでの品揃えを確保できる。駅前の本屋さんがドーンと積み上げて売っている本は、ほんとはうちにはなくてもいいんです。どこでも買える本ではなく、わざわざ足を伸ばして探しに行こう、「ジュンク堂」ならあるだろうというのがうちのコンセプト。手に入りにくい専門書を充実させているのもそういう理由です。

藤本 雑誌やベストセラーの時代に、専門書に特化する経営戦略は素晴らしいですね。

工藤 気がついたらそうなっていただけで、ぼくには経営戦略とか、事業計画とか、社員教育といったものは全然ないんですよ。工藤恭孝さんとの対談写真 その2

藤本 スタッフの方の対応もすごくよかった。「〇〇の本はどこにありますか」と聞いたら、「あっち」というだけでなく、きちんと案内してくださった。てっきり、厳しく社員教育をなさっているのかと…。本の仕入れもスタッフに任せていると伺いましたが、サービス業の基本だけでなく、専門知識が求められますよね。
工藤 ぼくは社長らしくない社長といわれています。社員に社長命令など一切しない。うちはスタッフの3分の2が女性だから、社長だからといって乱暴な口をきくときらわれるからね。それらしい社員教育なんていうのも全くないし、必要なことは先輩が後輩に教えていくだけですね。

顧客満足のために、社員は新聞を必読

藤本 「本に詳しい人」は採用の条件ですか。

工藤 それはないですね。強いていえば、いろんなタイプを採るようにしているかな。賢そうな人、元気そうな人、偏屈そうな人、小難しそうな人…。できるだけバラエティー豊かに。本屋ですからやわらかい本、難しい本に合わせてね。社員にはそれぞれ「棚」を任せ、在庫も責任を持たせていますから、仕入れた本が売れなければ、出版社に交渉して交換してもらうとか、いろいろ工夫をしているようですよ。

藤本 棚というのは、それぞれの分野ごとになっていますよね。

工藤 もともとわが家は小さな本屋だったので、ぼくが大きな店をやるとなったときに、仕入れも棚揃えも何をどうしていいかわからなかった。自分がわからないから社員に責任転嫁。それぞれを分野ごとの担当にさせたんです。理工が得意な社員は理工書をどんどん集め、気がついたら回転率の悪い専門書ばかりが集まってしまった。

藤本 そのおかげで「他店にはない本がジュンク堂にはある」と評判になったんですね。

工藤 放っておいたことが裏目でなく、表目に出たんです。うちは社長がダメだから、その分みんなが「自分の店」という感覚でやってくれています。

藤本 その分やりがいもあるでしょうね。

工藤 お客さんの質問や要望に応えられたときの喜びは大きいです。ひとつだけ私がみんなに言うのは「新聞を読みなさい」ということ。書評から訃報まで、新聞の記事や広告にあった本に対応できるかどうかで、この店は二流という判断が下されます。

藤本 顧客満足に応えていくためには、やはり相当な苦労があるんですね。

工藤 どの商売も同じ。本が好きな連中が、それで食べているわけですから幸せです。

藤本 先ほどの「ご自身でお店を」のあたりの話をもう少し教えていただけますか。

大好きな本で食べていける幸せ

工藤 団塊世代のぼくは、大学は出たけど、石ばかり投げていたから勉強もほとんどしないで就職試験も落ちた。さあどうしようというときに、父が経営していた喜久屋という問屋に呼ばれたのです。当時は「パパママストア」といわれた小さな町の本屋さんが多く、将来性の面であまり希望が持てなかった。父の開発したスタンド販売(※2)と、チャイクロ販売(※3)で業績は伸ばしたものの、これからの時代は大型書店が必要だということで、喜久屋の卸し先のための店をつくりました。それが神戸・三宮1号店です。

※2 チャイクロ販売/小学館の百科事典の月賦販売システムを開発。こ れがチャイクロ(子ども向け百科事典)につながり、ベビーブームと重なって大ヒットした。

※3 スタンド販売/タバコ屋や雑貨店の店先にスタンドを置いて雑誌を売るシステムを開発した。

藤本 大型店は珍しかったのですか。工藤恭孝さんとの対談写真 その3

工藤 当初は事業部として考えていましたが、「自分の会社と思ってやらなあかん」とぼくを独立させたのは、病気療養中の父の社長代行をしていたおじでした。大阪万博で盛り上がる大阪では、紀伊國屋書店、旭屋書店と大型書店の出店が相次いでいました。そして神戸初の大型書店。よく「26歳で起業されて…」といわれますが、今のぼくがあるのはおじのおかげですね。

藤本 「ジュンク堂」の誕生ですね。お客様からは「ジュンク」と呼び親しまれているようですが、珍しいお名前ですね。

工藤 「ジュンク堂」は、工藤淳という父の名前を逆さに読ませたものです。もともと父がやっていた「大同書房」という名前がありましたが、かっこいい名前にしたいと父に相談したんです。ところが持っていく名前、持っていく名前を否定する父。ある日、父の名前をひっくり返して「じゅんく堂」はどうかといったんです。すると、ダメと言い続けてきた父が「カタカナで書くのか?」と言ったんです。ほんとは何も考えていませんでしたが、すかさず「そうや。ジュンク堂っていいやろ?」って。

藤本 長年の「商売の勘」でしょうか。

工藤 父としては自分の名前を残したいという気持ちもあったんでしょう。

藤本 ご両親は、どんな方ですか。

工藤 父は仕事では有能だったようですが、ぼくらはひどい父親と思っていました。今となれば、理解できますが…。

藤本 どんなところですか。

工藤 自分勝手といいますか。うちは小さな本屋でした。もともと「勉強しろ」とは言わない父でしたが、雑誌の『小学1年生』が入ってくると、こちらの都合は無視して店の手伝いを命令する。仕方なしの店番ついでにぼくがしたことといえば、雑誌の乱読です。当時は毎月20日を過ぎると『めばえ』『幼稚園』『たのしい幼稚園』に始まって『小学1年生』から『蛍雪時代』までを読破していました。

藤本 本に囲まれて育ってきたんですね。

工藤 「ただで本が読めていいね」とよく言われましたが、家業の手伝いなんてろくなものじゃない。母は父との間に立って、やさしい人でした。家族労働にも耐え、ぼくら4人の子どもをきちんと育ててくれた。

藤本 お母様の評価は高いんですね。

工藤 妻を見ても思いますが、やっぱり母親はえらい。ぼくも今は仕事が忙しく、ほとんど休みなし。家に帰っても疲れて寝てばかりですが、子どもは一応元気に育っている。感謝しています。

小さいころから子どもを本に親しませて

藤本 お子さんはおいくつですか。

工藤 大阪で就職をした長女、真ん中は高3の受験生で芦屋で家内の両親に見てもらっています。下は中1で妻と東京暮らし。ぼくは芦屋と東京を行ったり来たり。

藤本 子育ての思い出は。

工藤 ほとんど母親任せだね。むかしは時間もあって、スキーにも連れて行ったけど、女の子はもう父親と遊んでくれません。

藤本 うちも大学生と高校生の娘が3人ですが、夫は相手にされないのでさみしそう。

工藤 ハハハ。同じだね。たまに「お父さん」と言われるとお金の話だ。中学生の男の子は今も「温泉でも行こうか」と誘うと「行く行く」と乗ってくる。女の子は大きくなるとややこしいね。

藤本 子どもはいくつになっても心配ですよね。いまどきの子育てについて、何かありますか。

工藤 本も新聞も表面をさらっとは読んでも、深く考えることをしない人が増えていて、すごくもったいないと思うんです。

藤本 やはり小さいころから文字に慣れ親しまないとダメですね。学校や家庭で、先生やお母様方が、もっと本を読むようにさりげなく仕向けてほしいですね。

工藤 本に親しむことで、限りなく世界が広がります。「一冊の本との出会いが私の人生を変えた」という話は数多くあります。

藤本 本を買うときの心理って、常に前向きなんですよね。あれをしよう、これをしようと描きながら本を買い求めます。ですから、子育てという限られた枠の中にいる母親たちを、もっと外の世界へ引き出してあげられるような、意識づけができたらいいなと思うんです。工藤恭孝さんとの対談写真 その4

工藤 本を通して、ぼくができることなら何でも協力させてもらいます。

藤本 本が情報であれば、ジュンク堂さんが「情報の発信基地」であり、ブームを起こすこともできるわけですよね。

工藤 いろんな企画もできますね。

藤本 親子を集めて絵本の読み聞かせでもいいし、お母さんたちで「一冊の本」について語る会、トークセッション…。

工藤 何か一緒にやりたいね。

藤本 そしたら「子育て支援をする書店」って、結構話題になると思いますよ。「ジュンク(堂)が人生を変えた」なんて、いいですね。今日はありがとうございました。

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