スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

温かさ、創造性、多彩さ ボランティアは恋愛のようなもの 大阪ボランティア協会理事・事務局長 早瀬 昇さん

阪神・淡路大震災以来、飛躍的な高まりを見せたボランティア活動への関心。21世紀に入った今、ますますボランティア活動は活発化。しかし、まだまだ「言葉は知っていても、実情はよくわからない」といった状況のようです。24年という長い間、現場で「草の根民主主義」を実践してこられた大阪ボランティア協会の早瀬昇さんに、ボランティア活動の魅力と、楽しく関わる知恵を伺いました。

 

大阪ボランティア協会理事・事務局長 早瀬 昇さん
はやせ のぼる  社会福祉法人大阪ボランティア協会理事・事務局長/2001年ボランティア国際年推進協議会運営委員長/大阪大学人間科学部客員助教授/特定非営利活動法人日本NPOセンター常務理事/日本福祉教育・ボランティア学習学会常任理事/IAVE日本(ボランティア活動推進国際協議会日本支部)理事他
1955年大阪府生まれ。「大阪交通遺児を励ます会」の活動に参加。以降「誰でも乗れる地下鉄をつくる会」など、さまざまなボランティア活動に参加。1995年4月〜1997年3月NHK「週刊ボランティア」コメンテーターを務めた。自他共に認める熱烈な阪神タイガースファン。『元気印ボランティア入門』(大阪ボランティア協会1994年)ほか著書多数。

「私・発」でできること

藤本 早速ですが、「ボランティア」と我々よく口にしますが、早瀬さんのいう「ボランティア」とはどうい早瀬 昇さんとの対談写真 その1うものでしょう。

早瀬 ボランティアというのは、腰の軽い人がやるわけですよ。たとえば、募金してる人がいるでしょ。「募金したろ」という人がいますよね。それと同時に「こりゃ一体何だ。何に使われるんだ。調べたろ」という人もいる。で、こういう人がボランティアを始めるんですね。つまり、フットワークのよさです。

藤本 私たちが一般的に「ボランティア」という言葉から連想するのは、大変とか、ハードルが高いとか、特別な人がするものといった、そんなイメージがあります。

早瀬 ぼくは「一種の恋愛だ」と言ってるんですよ。まず、なんでみんな「ボランティア」というもんを、そんなに堅苦しく考えるのかな。大概の人は公共的という意味を、お役所的なことをしなければならないと考えてしまうんでしょうね。公平にせいというのは、自分の好きなことだけやったらあかんということです。それから、一度始めたらやめたらあかんわけですよ。なんか出家みたいでしょ。

藤本 一大決心ですね。

早瀬 ボランティアは「開く」という意味?

藤本 私のやるボランティアというものは、お役所による公共活動とは全然違います。実際、ボランティア活動を公平にしている人なんて誰ひとりいない。手話を一生懸命やったって目の見えない人から見れば不公平や。と、そこで阪神・淡路大震災の募金をやっていた。ああ、これも助けなあかん。そしたら隣りで雲仙の募金もやってる。こっちもこっちも、てなことになりますよね。すべての人に公平なボランティアなんてあり得ません。つまりボランティアというのは、選べる活動なんです。何かしたいけど何かわからんでは、ボランティアはできません。

早瀬 自発的に意志を持った活動ですね。

藤本 そう。「自発性」とは「抑えきれない思い」。たとえば自由な遊び場をつくろうとする「ロマン」だったり、障害児の不当な扱いに対する「怒り」だったり、震災から復興に努力を続ける被災者たちへの「共感」だったり…。こうした「思い」から人は行動する。

普段の暮らしの延長です

藤本 大阪ボランティア協会は、ボランティアのマッチング業務をなさっているんですか。

早瀬 ええ。事業の柱はいくつかありますが。

藤本 どんな風に、つなげられるのでしょう。

早瀬 ボランティアをしたいという人には、まず最初に「どんな問題に関心があるか」「何が好きか」を聞きます。子どもが好きな人は、子どもの施設に行くべきだし、鳥の好きな人は「日本野鳥の会」にね。

藤本 ああ、あのNHK紅白歌合戦ですね(笑)。

早瀬 自分の暮らしをちょっと開くだけでパブリックなことができるんですよ。ところが、なぜかみんな構えてしまう。

藤本 特別な人とか、時間的な余裕がある人とか能力を持った人とか…。

早瀬 ハハハ。ボランティアといっても、うそつきもいますし、いろんな人がいますよ。単に何かやりたい。そう。何かが好きな人です。

藤本 母親たちの間にも「何かやりたい」という人はたくさんいます。ボランティアで自己実現する方も多いですね。

早瀬 自分だけが満足はあかんですね。いつも言うんですが「恋愛」と同じです。恋愛も無償でしょ。子育てもそうです。何だって好きなことはタダでします。

藤本 いろんな方がいらっしゃるでしょうね。

早瀬 悩みを聞いたり、相談に乗ったり。具体的なアドバイスをするのではなく、「しゃーないね」と一緒にためいきをつくことからスタートです。自分の子どもが白血病だった。そしたら骨髄移植をしてくれる人を探そうとなる。でもこれはそう簡単にはいかない。それなら1人より2人で一緒に探そうとなるんですよ。だから、ボランティアはアガペー(神の愛)ではなくて、エロス(私的な愛)の世界です。禁欲的なイメージをもっと崩していかないと。

藤本 それがハードルを高くしているんだと思います。ボランティアとは無償の世界。

早瀬 もらっちゃいけないのではなくて、これは、もらわなくてもする。ボランティアというともめてしまいますからね。今は「市民活動」と言えばいいんですよ。

藤本 市民活動には有償も、無償もありますね。

早瀬 お金をもらってはいけないとなると、あらゆる商売が「守銭奴」みたいになってしまう。

藤本 ここ数年は不景気で、それまでボランティアをやっていた人も余裕がなくなって、活動中止を余儀なくされ、苦しんでいる人もいます。

早瀬 しょうがないかも知れないね。なんでボランティアは続けなあかんの。自発性というものは、揮発性が伴いやすい。こうでなきゃあかんはない。言ってみれば、いつだってやめられるんです。

藤本 そうですね。「あんなに本気でやってたのに、やめちゃったの?」ということが、よくありますもんね。

疲れたら休めばいい

早瀬 私たちの活動の最大の魅力は「自由」です。自分を生かせる。決められたことをやるのではなく早瀬 昇さんとの対談写真 その3て、自分の発意と、自分のペースと、自分の感性とで自由にできること。だけど、その自由さが実は最もしんどい部分でもある。どこまでしたらいいかという基準がないでしょ。

藤本 自由が一番きつい…。

早瀬 たとえば、企業だったら根本的には、損をしたらあかんわけですよ。そんなんしたら、背任罪ですよ。あるいは行政だったら、自分がなんぼしようと思っても、全体の合意がなければでけへんでしょ。ところが我々の場合は、やりたい人はなんぼでもする。アフガンでも、被爆するかも知れん言うても命かけて行く人は行くでしょ。要するに、自分がどこまでやるかを自分で決めなあかんのです。つまり、相手のしんどさのわかる人ほど、責任感の強い人ほど、がんばるわけですよ。一生懸命やって疲れてしまうわけ。そうしたら休まなあきませんよ。

藤本 ヘトヘトになってしまいますね。

早瀬 そしたらどうなるか。いろいろ言う人もいて、やっぱりもう少しやろう。そしたらもっと疲れて休んで、また少しやろうと。この繰り返し。これを「疲労と不信の悪循環」と言います。自発的であるからしんどくなるんですわ。ボランティアっていうのはね、我慢してするものではなくて「我慢できないからする」んですよ。だってね、あの阪神・淡路大震災のとき、4か月の間に何らかの形で被災地支援に協力した人は、なんと、日本人の87・5%にも上ったんですよ。

藤本 学生からサラリーマンまで。あのとき日本人は、初めて「ボランティア」という言葉を身近に感じました。

早瀬 なんで、あんなにみんなが行動したかというと、「ほっとかれへんから」という気持ちですね。昨年のアメリカ空爆のときもニューヨークタイムズの「報復はやめよう!」という広告に、わずか3週間で2000万円というお金が集まったんですよ。つまり、我慢できなかったんですね。そもそもこの「ボランティア」という単語の親戚になるのが、「ボルケーノ」(火山)という単語ですが、火山のように何かしたいという湧き上がる気持ちを、行動に起こす。ここに、犠牲的な意味合いはありません。

対等な関係から始まる

藤本 さて最近は「第2次ボランティアブーム」とかいわれているようです。不景気やシルバー社会を背景に、地域に人々があふれています。

早瀬 無償のボランティア活動は「余暇活動」ですからね。それは、会社や組織にいるときとは、刺激感が違うよね。会社を動かしていく30代、40代は仕事が面白いし、時間がないから、ボランティアはできにくい。それに引き替え50代は仕事がつまらなくなってくる。「自由」を手に入れたといってもいいかも知れない。

藤本 ボランティアで生きがい探しですね。

早瀬 ボランティア活動はせんでもええこと。must(〜しなければいけない)じゃなく、can(〜できる)なんです。うちに来て「何かしたい。何をすればいいか」と聞かれて「こんなんどうですか、あんなんもありますよ」とご紹介しても、なかなか決まらない。社会の問題から選ぶのは大変です。

藤本 やりたいけれど、何からやればいいのかわからない方がほとんどです。

早瀬 ですから、特技を生かせるボランティアを選べばいいんです。つまり、ボランティアとは、やりたいことを生かしてくれる場所です。我々の立場をわかりやすくいうと、◯◯してほしい人、つまりニーズと、◯◯したい人、つまりシーズを、共感を大切にしつつ交換するということです。

藤本 では、ボランティアをするときには、どんなことに注意したらいいですか。

早瀬 何が大変か言うたら、熱心に活動すると必ず、邪魔する人が出てきます。それも、その大半が身内やという事実。

藤本 何かを始めようとすると、決まってぶつかる壁ですね。

早瀬 「世界の平和は家庭の不和」という言葉があるからね。

藤本 一生懸命にやればやるほどね。

早瀬 「たまには家のボランティアしなさい」とか言われちゃう。気をつけないと。

自分のことは自分で決める

藤本 ところで学校教育の中に、子どもたちの「奉仕活動の義務化」という問題がありますが。早瀬 昇さんとの対談写真 その2

早瀬 「教育改革国民会議」が言い出したやつね。あの「奉仕活動の義務化」は、結局「体験活動ボランティア支援センター」と「社会奉仕体験の重視」というものに変わりましたよね。

藤本 どう思われますか。

早瀬 教員免許を取るために、実習の学生たちが福祉施設にあふれている。つまり、「福祉施設の教材化」が起こっているのです。福祉系の勉強をした人が訓練に来るならいいけど、現場にも大変失礼な話です。それともうひとつは、自発的なことを強制してしまっては、自発的なことの面白さを教えられない。親に決められた許婚と結婚させられるようなものですよ。

藤本 でも意外に、子どもたちは素直ですから、ボランティアの機会を与えられて、体験をすることによって感動しているようですね。

早瀬 だから「体験のプログラム」をつくったほうがいい。最大の問題は、このしくみをどのように展開するかを、議論しないままに実行されてしまっていることにあります。つまり、どういうプログラムをつくるかが議論されていない。

藤本 見切り発車ですか。

早瀬 ある意味そうともいえます。でも、結果からいえば、子どもたちは楽しんでいますよ。

藤本 授業より面白い?

早瀬 学校は全部「義務」なんですよ。子どもにとっては、学校の授業は大体がつまらないもの。学校が面白くない子どもたちにとっては「義務化」がどうのこうのとかの議論は、全く無意味なんです。その点、我々のような市民活動は、子どもたちにとっては「解放区」だったわけですよ。ところが今度は、そこへ先生たちが介入してくるからややこしくなってきてる。

藤本 そういう経験や体験を持っていない先生も多いのでしょう。これからは、子どもたちだけでなく、先生も一緒にボランティア活動を体験してもらいたいですね。

早瀬 だからぼくがここで提案したいのは、参加したい子どもと、すすめたい大人と、受け入れたい施設という三者が、共同作業でやりましょうということ。3つの条件が整えば、これはイケるんじゃないかなと踏んでるんですよ。

藤本 なんか難しそうですね。

早瀬 いや。簡単なことですよ。我々もいろんな活動をしてきましたけどね。たとえば「バリバリ元気天国」とかいってね。釜が崎とか山谷に行ってあの辺のおっちゃんたちと交わるんですよ。偏見をなくそうといった活動なんですけどね。そんなとき、あそこにいるおっちゃんたちの本当のやさしさや人間性に触れて、子どもたちは心の底からケタケタ笑って喜びます。そういう経験が大事。やはり自発性を励ますものは、自発性しかないなと実感しています。

藤本 義務や仕事ではないんですね。

早瀬 子どもたちと泊まりで行くキャンプのときもそうですが、スタッフたちは毎晩必死で会議です。「明日はどうやって子どもたちを喜ばしてやろう。もっといいことないか」ってね。給料や命令ではない自発的な意思が、子どもたちの心を動かすんですよ。

藤本 学校の先生も同じですね。

早瀬 やりたい先生がどれだけいるかということです。裏を返せば、やりたくない先生の姿を、絶対に子どもたちには見せてはいけません。

藤本 子どもはとくに敏感ですからね。

早瀬 「ボランティアコーディネーション(※)」もそう。両者を対等化することが大切です。

※ボランティアコーディネーション/応援(ボランティア活動)をしたい人・組織と、応援(ボランティア活動)を受けたい人・組織をつなぐコーディネート業務。

藤本 「お手伝いしてやってる」「やらせてやってる」ではない、地域と行政のコラボレーション(※)も同じですね。

※コラボレーション/人や組織が共同で事を起こすこと。協力して働くという意味から、協働作業、協働製作という場合もある。

早瀬 行政と一緒にやっていく場合は、組織の違いを理解することから始めなければなりません。意思決定の仕方が違う。

藤本 上手なパートナーシップを組むには。

早瀬 組織が前に出過ぎるとつらい。やっぱりこれからは、行政にももっと「個人的には…」と言える関係になってもらわないと…。早瀬 昇さんとの対談写真 その4

藤本 社会が変わろうとしている、今がチャンスですね。最後に、早瀬さんの夢を聞かせてください。

早瀬 今の話につながるけど、自分のことを自分で決められる社会をつくりたい。それには自由と連帯が大切。一人ひとり違っていることを認め合っていける、そんな社会にならんとあかんね。根本的にはヘンな自分に対する自信を持って生きていきたいね。

藤本 そんなやさしい社会が理想ですね。これからもそのダイナミックな思想と熱意で、たくさんの人を応援してあげてください。元気が出るお話をどうもありがとうございました。

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