藤本 ところで学校教育の中に、子どもたちの「奉仕活動の義務化」という問題がありますが。
早瀬 「教育改革国民会議」が言い出したやつね。あの「奉仕活動の義務化」は、結局「体験活動ボランティア支援センター」と「社会奉仕体験の重視」というものに変わりましたよね。
藤本 どう思われますか。
早瀬 教員免許を取るために、実習の学生たちが福祉施設にあふれている。つまり、「福祉施設の教材化」が起こっているのです。福祉系の勉強をした人が訓練に来るならいいけど、現場にも大変失礼な話です。それともうひとつは、自発的なことを強制してしまっては、自発的なことの面白さを教えられない。親に決められた許婚と結婚させられるようなものですよ。
藤本 でも意外に、子どもたちは素直ですから、ボランティアの機会を与えられて、体験をすることによって感動しているようですね。
早瀬 だから「体験のプログラム」をつくったほうがいい。最大の問題は、このしくみをどのように展開するかを、議論しないままに実行されてしまっていることにあります。つまり、どういうプログラムをつくるかが議論されていない。
藤本 見切り発車ですか。
早瀬 ある意味そうともいえます。でも、結果からいえば、子どもたちは楽しんでいますよ。
藤本 授業より面白い?
早瀬 学校は全部「義務」なんですよ。子どもにとっては、学校の授業は大体がつまらないもの。学校が面白くない子どもたちにとっては「義務化」がどうのこうのとかの議論は、全く無意味なんです。その点、我々のような市民活動は、子どもたちにとっては「解放区」だったわけですよ。ところが今度は、そこへ先生たちが介入してくるからややこしくなってきてる。
藤本 そういう経験や体験を持っていない先生も多いのでしょう。これからは、子どもたちだけでなく、先生も一緒にボランティア活動を体験してもらいたいですね。
早瀬 だからぼくがここで提案したいのは、参加したい子どもと、すすめたい大人と、受け入れたい施設という三者が、共同作業でやりましょうということ。3つの条件が整えば、これはイケるんじゃないかなと踏んでるんですよ。
藤本 なんか難しそうですね。
早瀬 いや。簡単なことですよ。我々もいろんな活動をしてきましたけどね。たとえば「バリバリ元気天国」とかいってね。釜が崎とか山谷に行ってあの辺のおっちゃんたちと交わるんですよ。偏見をなくそうといった活動なんですけどね。そんなとき、あそこにいるおっちゃんたちの本当のやさしさや人間性に触れて、子どもたちは心の底からケタケタ笑って喜びます。そういう経験が大事。やはり自発性を励ますものは、自発性しかないなと実感しています。
藤本 義務や仕事ではないんですね。
早瀬 子どもたちと泊まりで行くキャンプのときもそうですが、スタッフたちは毎晩必死で会議です。「明日はどうやって子どもたちを喜ばしてやろう。もっといいことないか」ってね。給料や命令ではない自発的な意思が、子どもたちの心を動かすんですよ。
藤本 学校の先生も同じですね。
早瀬 やりたい先生がどれだけいるかということです。裏を返せば、やりたくない先生の姿を、絶対に子どもたちには見せてはいけません。
藤本 子どもはとくに敏感ですからね。
早瀬 「ボランティアコーディネーション(※)」もそう。両者を対等化することが大切です。
※ボランティアコーディネーション/応援(ボランティア活動)をしたい人・組織と、応援(ボランティア活動)を受けたい人・組織をつなぐコーディネート業務。
藤本 「お手伝いしてやってる」「やらせてやってる」ではない、地域と行政のコラボレーション(※)も同じですね。
※コラボレーション/人や組織が共同で事を起こすこと。協力して働くという意味から、協働作業、協働製作という場合もある。
早瀬 行政と一緒にやっていく場合は、組織の違いを理解することから始めなければなりません。意思決定の仕方が違う。
藤本 上手なパートナーシップを組むには。
早瀬 組織が前に出過ぎるとつらい。やっぱりこれからは、行政にももっと「個人的には…」と言える関係になってもらわないと…。
藤本 社会が変わろうとしている、今がチャンスですね。最後に、早瀬さんの夢を聞かせてください。
早瀬 今の話につながるけど、自分のことを自分で決められる社会をつくりたい。それには自由と連帯が大切。一人ひとり違っていることを認め合っていける、そんな社会にならんとあかんね。根本的にはヘンな自分に対する自信を持って生きていきたいね。
藤本 そんなやさしい社会が理想ですね。これからもそのダイナミックな思想と熱意で、たくさんの人を応援してあげてください。元気が出るお話をどうもありがとうございました。