スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

世界一の夢を叶えた! 自信を持って叱って育てる シンクロナイズドスイミングコーチ 井村雅代さん

昨年、福岡世界水泳選手権のシンクロデュエットで日本初の金メダルを獲得させた井村さん。個性を伸ばしながらオリンピック選手を育てた数多くの実績。常に上を目指そうという姿勢、愛情を込めた「叱って育てる指導法」に全世界が注目。大阪市で活躍した女性に贈られる「きらめき賞」を受賞されたのも記憶に新しい。井村コーチの教育方法の真髄、そして夢を伺った。

 

シンクロナイズドスイミングコーチ 井村雅代さん
いむら まさよ  井村シンクロクラブ代表/日本水泳連盟シンクロヘッドコーチ/日本オリンピック委員会強化スタッフスポーツコーチ/大阪府教育委員会教育委員
1950年大阪市出身。天理大学体育学部卒業後、大阪市の中学校教諭となる。同年、浜寺水練学校シンクロナイズドスイミングチームのメンバーとして、日本選手権優勝。以後、教師をしながらシンクロナイズドスイミングの指導に携わる。1985年井村シンクロクラブを創設。2000年シドニーオリンピックでは銀メダル、2001年福岡世界水泳選手権のデュエットでは金メダル獲得という、日本シンクロ史上初の偉業達成に貢献した。

子どもに目標を持たせる

藤本 このたびはきらめき賞の受賞おめでとうございます。福岡世界水泳選手権では念願の金メダ井村雅代さんとの対談写真 その1ル獲得で、2001年は最高の年でしたね。

井村 おかげさまで。幸運だったと思います。

藤本 井村さんのシンクロナイズドスイミングの指導力というか「人を育てる力」に注目して、ご著書『愛があるなら叱りなさい』(幻冬舎刊)を読ませていただき、感動しました。

井村 どうもありがとう。

藤本 選手を叱って育てるという指導法について、トップの指導者になられるまでのご苦労、ご自身がどんな風に強くなっていかれたのかなど。そのあたりを、ぜひ伺わせてください。

井村 強くないですよ私。昔は真面目な子やった。母は、買いたい物があったら高くても「あとで後悔するから買っときなさい」という、さばけた人でした。「何でもやらなきゃわからないでしょ」と育ったおかげで、チャレンジ精神が身につきました。しつけは厳しかった。今の親とは全く違う、いわゆる昔の親でしたね。

藤本 具体的なエピソードはありますか。

井村 たとえばしんどい顔をしてると「イヤならやめなさい」って。成績が悪くても何も言わない。自分のことは、自分が一番わかってるはずやからって。

藤本 気持ちいいですね。

井村 27年間コーチをしていますが、昔の母親は潔かった。それに、子どもを育てるためにコーチの私と親が一体となって子どもに接していた。今は親と子が一緒にこっちを向いている。

藤本 親として、ドキッとします。

井村 子どもを思う気持ちの勘違い。子どもが泣いていたら一緒に泣いてやるのが親だと思ってる。甘やかし過ぎ。昔から子どもは変わらないのに、親だけが変わってしまった。

藤本 電車で子どもを座らせて、立っている親をよく見かけますね。

井村 私言うんです。「子どもは元気だけが取り柄なんやから黙って立っときなさい!」って。

藤本 こういう姿勢こそが、本当の教育です。井村さんと出会った子どもは幸せですね。

技術より人間性が大切

井村 一流のシンクロ選手になりたい子どもたちは、私と出会ったら、みんな最初はハートマークで見つめてくれます。井村シンクロのジャージ着たら、それだけでオリンピックに行ける気になってしまう。

藤本 カリスマジャージですね。

井村 親もそう思い込んでいる場合が多いのです。でも要は、このジャージを着て何をするか。目標を持った子どもたちの前にはレールはある。素晴らしい先輩がたくさんいる。この先輩たちを超えるのはあなたたち自身だと教えます。

藤本 実際に世界一の選手たちを見て接して、子どもたちはどういう反応を示すのですか。

井村 うち(井村シンクロ)は門は広いから誰でも入れます。でも途中で「シンクロに向いてないようだから…」とやめていく人もいます。そのときに大切なことは、シンクロはやめるけれど、次のことに向かってがんばろうという気持ちを持っているかということです。

藤本 目的を持って去るのであれば仕方ない。

井村 立花美哉も武田美保もテレビで見るとすごい人に見えるけど、私生活は普通の女の子です。スポーツ選手でかっこいいのは競技で勝ち、普段は人を思いやれる普通の人であること。反対にかっこ悪いのは、スポーツが強いだけで自分は偉いと勘違いしてしまうこと。プールでは「世界一私はキレイ。隣りの子に負けてたまるか!と思ってやれ」と、とにかく、「プールは戦いの場である」と教えています。

藤本 そうやって勝負に勝たせるんですね。

井村 「あんたらはシンクロで一番でも人間性は一番じゃない。プールから上がったら世の中にいる人みんなが先生だ」と。で、また水の中では「あんたは女王様よ」言うて育てないとダメ。

藤本 そのあたりの切り替えが大変ですね。

井村 ジキルとハイドのような二重人格者を育てているのかと思いますよ。

藤本 人を育てるのは、本当に難しいですね。

井村 シンクロがいくらすごくてもそれはひとつの通過点に過ぎない。長い人生を考えたら、シンクロ選手でいる時間なんてほんとにわずか。選手をやめたら、もう足を上げることなんかないんだから、それよりもっと、シンクロを通じて何を学ぶかが大切で、たとえば礼状をきれいに書けるとか、あいさつをきちっとすることが大事なんや。謙虚になれって。

藤本 謙虚さ」がなければ人は成長しない。でもここの選手たちは「タダ者」ではないですよ。

井村 自分の中で「たかがシンクロ。何もすごいことないよ」と思いながら、「されどシンクロ。人々に勇気も与えられるシンクロなんや」と思ってるんです。

藤本 あいさつといえば、シドニーオリンピックの「空手」を取り入れた演技は斬新でしたね。

井村 実はあれ、大変だったの。たった8秒の陸上動作のために9か月もかけた。一流の先生に、気品と誇りを持った最高のあいさつも習いました。井村雅代さんとの対談写真 その3

藤本 シンクロと空手の組み合わせに世界じゅうが沸いた。

井村 曲のテーマやコンセプト、とくに「技」を考えるのがコーチの重要な仕事です。よかったからといって繰り返すのは足踏みするのと同じこと。いえ、必死で勝負を挑んでくる人たちは、それ以上のものを用意してくるはずです。

藤本 それに打ち勝っていくためには…。

井村 あのときも、真剣に悩みました。常にライバルがいて、追い抜こうと思うばかりについ垂直思考になってしまう。ですから、もっと視野を広げて、さまざまな角度から考えてみる。

藤本 私も企画に煮詰まったときは、全く違うことをする。違った場所に行く。久しく会っていない人に会う。発想の転換を試みるのです。

井村 そう。ちょっとした遊び心を持って水平思考を心がけたのです。そうして周りを見てみると、今まで見えなかったものが見えてきたり、耳を傾けることで新鮮な情報を手に入れたり。

藤本 なるほど。水平思考とは面白いですね。でも、オリンピックほどの大舞台となると、一体どんな風にテーマを導き出すんですか。

井村 単純な発想です。全世界の人々がオリンピックを見る。その人たちの共通点は何かと考えたとき、日本には「四季」がありますが、ない国もある。「雪」を知らない人もいるし「平和」でない国もある。「癒し」を表現しても、それを見て傷つく人もいる…。世界の人々の共通点は「愛」と「信じること」くらいしか見つかりませんでした。そこで、自分の国である「日本」を表現しようと決めたのです。

藤本 プロデューサーとしての勘が働いた?

井村 武道の先生の所へおじゃまして、凛とした空気に触れました。本物の「空手」を見て「コレだ!」と思いました。そして「おじぎ」を見て「よし、笛が鳴る前に勝負を決めてやろう!」とひらめいたのです。

藤本 選手たちの反応はいかがでしたか。

井村 ど素人の選手たちですから一からの出発でした。超一流の先生が時間をかけてくださったのですから、結果を見せたかった。学ばせていただいたことに対する「感謝」の気持ちです。

藤本 最高の結果が出せてよかったですね。ところで、学校についてはどう思われますか。

教師は完璧幻想を捨てて

井村 学校関係や企業にも講演に行きますが、企業は、もう死活問題。みんな必死です。その点、先生たちは両極端。子どものことを一生懸命に考えて努力している人とそうでない人。

藤本 そうかも知れませんね。井村さんご自身もかつて先生をなさっていたんですよね。

井村 8年間の教師生活を経験しましたが、子どもたちともとことん闘いました。近ごろは、この子は叱られたことに対し、どの程度納得しているのかという「気配」のわからない教師が多いことに問題がある。管理とは気配を感じ取ることでしょ。

藤本 学校では学級崩壊も起きていますが。

井村 小学校1年生で学級崩壊だなんて、「先生、あんた何年生きてんねん。小学校1年生の子どもの心もなぜつかめないの」と言いたいわ。

藤本 なぜ、そうなってしまうんでしょう。

井村 教育者いうたら、失敗できないと思っている先生が多いのでしょうね。「聖職」なんていわれるけど、完璧な人間はいない。私だってテレビに映るのはごく一部。「強い」と言われるけど、実際は強くない。

藤本 私も同じです。テレビで紹介していただくこともありますが、なぜか「強い女」とクローズアップされてしまう。

井村 似てるわね。全部が強い人、完璧な人なんていないでしょ。先生だって間違うこともある。そしたら周りは指摘してあげて、先生も言われたら素直に直していくということが大事。

藤本 私も今までいろんな失敗をして、その都度周りの人たちによって育てられてきました。

井村 最初から完璧なんてあり得ない。先生も堂々と言えばいいのよ。「わからない。だから教えてください」って。

藤本 先生も試行錯誤。子育てと同じですね。井村雅代さんとの対談写真 その2

井村 完璧な母親なんて気持ち悪いわ。自分で問題を見つけて学ばなければ。悲しいのは「自分の子どもが何考えてるかわからん」という言葉。「あんたら自分で育てといて何してんねん」いう感じやね。クラブのお母さんには「子どもに『ご苦労さま』なんて言うな。恩を着せろ。選手としてすごくたって、家で子どもにふんぞり返らしちゃダメ!」といつも言ってます。

藤本 子どもに媚びてしまっている親が多い。

井村 正しいものは正しい、悪いものは悪いと教えないと。私は口うるさく言います。

藤本 憎まれ役に徹するわけですね。

井村 トレーニングで泣く子にはなおさら厳しく、非情になります。泣いても何の解決にもならない。良くなるように行動を起こすことが大切です。注意するのは「思い」があるからです。

藤本 「愛があるから叱る」のですね。

子どもに媚びてはダメ!

井村 やっぱり「叱る」のは難しい。よく、高橋尚子さん(マラソンのゴールド・メダリスト)を育てた小出義雄監督の「ほめる教育」と比較されることがありますが、高橋さんは「ほめたから育った」わけではありません。日々の高い目標に設定された練習をこなしていった、高橋さんのように「極めた人」にこそ通用するもの。普通の人は「よし」と言われれば、それをキープしようと思ってしまいます。人間「守り」に入ったらおしまいだから、私は常に上を目指して「もっともっと」と言う。

藤本 私もそっちのタイプです。「無理」と言われればなおさら挑戦したくなる。 

井村 人間は無限の可能性を秘めていて、段階を追って鍛えればどんどん能力アップします。目標を持って着実にステップアップさせるのは、「叱る教育」なんだと思っています。

藤本 思いきり叱れる関係っていいですよね。

井村 やはり信頼。もちろん、人(子ども)に言うのなら、まずは自分に厳しくなければね。

藤本 親子の間でも同じですね。

井村 親が子どもを叱れないなんて、全く理解できません。なんで親が子どもの悪い所を見過ごせるのか、私には不思議です。

藤本 子どもから信頼される大人がいない。

井村 一番身近な人生の先輩として子どもに「見せる」ことが大事でしょ。私の父は仕事ばかりで、しつけや教育にはノータッチでしたが「考える人」でした。常に何かと葛藤していた。

藤本 そんな姿から何を学ばれましたか。

井村 男親の「闘う姿」というか、「考えて判断を下す」ことの大切さみたいなもの。

藤本 最近のお父さんは「考える」というより、やさしくて、話のわかるお父さんという感じ。

井村 子どもや奥さんのごきげんをとるような。

藤本 そういうお父さん、お母さんと一緒に選手を育てていくことで問題はありませんか。

井村 クラブチームの場合、クラブを成功させるのも失敗させるのも親。だから私は、あえて親とコーチとの間に、一線を引いています。

藤本 「親」「コーチ」「選手」がひとつになることが理想ではないんですね。

井村 一線を引いて協力し合う。「学校」と「家庭」も同じでしょ。

藤本 役割を認め合い、それぞれの「聖域」を保ちながら融合していくことが大切なんですね。

井村 人生の先輩が子どもに媚びてはいけない。それから、子どもが大切なら他人に預けなさい。預けた人を100%信じて疑わないこと。

藤本 中には「この先生で大丈夫?」という不安もあると思うんですが。

井村 それでもまずは「託す」こと。子どもはどんな人からも学んでいきます。いい先生を見て「ああいう人になりたいな」と思うし、逆の場合は「ああいう人になってはあかん」と、子どもは勝手に学びます。

先生を信じて託すこと

藤本 指導者として、先生たちにアドバイスを。

井村 「なぜ先生になったの?」と自分に問いかけてみて。「人を育てる」仕事の価値を見い出してもらいたい。不況はチャンスです。学校も、親も、みんな生き方を考え始めるでしょ。

藤本 先生たちばかりでなく、親も意識を持って変わっていかなければなりませんね。

井村 一緒に子どもの将来を考えることやね。

藤本 最後に、世界の頂点に登り詰めた井村さんですが、この先の夢、目標を教えてください。

井村 素晴らしい選手をたくさん育てて、彼女らを輝かせること。最初はできなかった子が、少しずつ自信をつけてできるようになる…。こういう変身のプロセスを一緒に楽しめるというのは「快感」です。こういう仕事をさせてもらえてありがたいですね。

藤本 金メダルを取られたときはどうでした?井村雅代さんとの対談写真 その4

井村 よく知っている人たちは、取材攻勢で疲れてた私に「おめでとうを言うのも気の毒やな」って。よっぽどボーッとしてたんですね(笑)。

藤本 プライベートでは自然体なんですね。

井村 元気とか強いとかいわれるけど、私はいつも自然体。世界一になっても何も変わらへん。あとは自分らしく生きる、かっこいい女になりたいね。

藤本 とっても素敵な生き方ですね。やっぱり一流の人は違うなあ。かっこつけなくてもカッコイイ。今後もますますのご活躍を期待しています。本当に今日はどうもありがとうございました。

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