スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

学校が変わる!? みんなで 変えよう!! 大阪市教育センター所長 浜田邦男さん

平成14年度は大きな教育改革の年。「総合的な学習の時間」の導入などを盛り込んだ新学習指導要領に基づくカリキュラムがスタートする。さまざまな情報を前に、母親たちは戸惑いの色を隠せない。先生方の研修、研究、相談、情報の責を担う大阪市教育センター所長をお訪ねし、母親として今、何をすべきかを伺った。

大阪市教育センター所長 浜田邦男さん
はまだ くにお  1936年大阪府出身。大阪府南河内郡在住。神戸大学教育学部卒。1963年大阪市公立中学校に奉職。1982年に大阪市教育委員会事務局に勤務。その後、大阪市立聾学校校長を経て、1997年大阪市教育委員会事務局教育次長に就任。1999年に大阪市を退職後、大阪市教育センター所長として現在に至る。(2002年当時)

子どもは親を見ている

藤本 来年度から「学校が変わる」と言われていますが、具体的にはどう変わるのでしょうか。浜田邦男さんとの対談写真 その2

浜田 変わらんといけない時がきたんでしょうね。長年、硬直状態、閉塞状態だった教育も「ここらで何とかせんと」と、国も考えたんやろうね。

藤本 不況やますます深刻化する子どもたちの問題。社会全体が危機感を持っていますよね。

浜田 今までは知識や偏差値教育といわれ、線路が敷かれていたからね。今はいろんな人がいるね。七大陸最高峰最年少登頂を果たした石川直樹君や丸野遥香ちゃんなんて、すごい子おるでしょ。

藤本 私も聞いたことがあります。

浜田 この子はすごいよ。犬の散歩をしたときに、その糞の始末に困って「ペーパースコップ」を発明した。こういう子の家庭はどんなんか興味あるね。何かで見たけど、遥香ちゃんを中心に家族の連携をとっている。お父さんもお母さんも子どもに強制することなく、「3人それぞれでいい」となってるらしいよ。

藤本 家族それぞれの自立ですね。

浜田 ぼくが言いたいのは、「教育改革」について、「5日制どうしよう」とかよく言われるけど、「そんなの自分たちで考えなさい」ってことなんだよ。

藤本 先に言われてしまいましたね。土曜日をどう過ごしたらいいか、お聞きしたかったんです。

浜田 そう思ってパンフレットを持って来たよ。(大阪市教育委員会発行の「タッチ(子どもの施設ガイド)」や「学ぶ気持ちを応援します(生涯学習大阪計画)」を広げる)。

藤本 面白そうなプログラムばかりですね。

浜田 子どもはタダ(利用料)だから、5日制になったら利用したらいいんだよ。でも、ただ行くだけでなく、自分で考えて選択する力をつけなきゃね。

藤本 こういう所で、さまざまな体験を通していろんなことを学んでいくのですね。

浜田 子どもは自分より数倍素晴らしくなると思っている親が多いけど、あまりに期待し過ぎるのは子どもにとってどうかと思うね。親がこの程度なんだから子どももそんなもんと思わんとね。だけど、子どもが素晴らしい未知の可能性をいっぱい持っているのは確かだね。

藤本 親も意外に子どものことを知らなかったり。

浜田 子どもをひとりの人格として見て、謙虚にならなきゃいかんね。

藤本 子どもを私物化したり、過度な期待をしてプレッシャーを与えてしまったりしがちです。

浜田 だから子ども自身に考える力がついていかない。でも子どもは親のことをしっかり見てるからね。

子育てに自信を持とう!

藤本 私もお母さんたちによく言います。「ただ、ごはんをつくるのが母親の仕事ではない」って。親がどんな生き方、考え方をしているのかを見せていくことこそ、本当の「子育て」だと思います。

浜田 いいねえ、それ。

藤本 子育てに自信を持とうよ、自分らしくていいんだよと伝えたいんです。

浜田 いじめや不登校、虐待はどれもあってはならんけど、残念ながら全国では、毎日のように起こっているね。経済状況も含めて不透明な時代を、政治家や企業家も困惑している。全国で13万4000人もいる不登校児童生徒を放ってはおけないからね。

藤本 すごい数ですね。母親たちも真剣に考える必要がありますね。

浜田 他人事じゃない。

藤本 つい目先や自分の周りだけを考えがちですが、一人ひとりが意識を持つことが大切ですね。

浜田 ニューヨークも狂牛病も対岸の火事ではない。素晴らしいといわれる人間も、これくらいガツンと頭を叩かれて、考えを改めるというか、今まで通りではダメということに気づかないと。

藤本 確かにもう、自分さえよければいいという時代ではないですね。

浜田 土曜日が休みになったら「ゆとり」ができる。その分みんなで考える時間を持とうよ。親も考え、子どもたちにも自分で考えさせる。

藤本 家庭の責任も重大。この不況や、働き方の多様化で、土日も仕事の家庭もあると思うんですが。

浜田 親が働く姿を子どもに見せることも大切。家で商売をやっているなら、その手伝いとか、いろいろ関わり方はあると思うよ。

藤本 家庭なりの「考える時間」をつくるんですね。

浜田 国が「すべての土曜日について学校を休みにする」と言った。そうと決まったら、みんなで、それをどう生かすか考えようということだよ。

藤本 それによる「授業時間の減少」についてはどうお考えですか。母親たちの中には「学力の低下」を心配する声も多いのですが。

浜田 その辺りは、文部科学省がきっちり調べると言ってるよ。不断の検証をやるそうだから、家庭も理解して、学校と一緒になってやってほしいね。

藤本 いいですね。ただ、母親たちにとって大切なのはデータではなくて、今の、うちの子の問題。 

体験から学ぶことが大切

浜田 当然だね。学力といえば普通は「読み書き」や「計算する力」をいうが、これは時間をかければ浜田邦男さんとの対談写真 その1かけるだけいい。ペーパーも有効だからやるに越したことはない。と同時に、何でも一緒はあかんということだよ。これからは「習熟度別」だろうね。

藤本 これまでとは大きく変わっていきますね。

浜田 いわゆる能力別、習熟度別クラスの実施だね。ぼくも長年現場に携わってきたけど、なんぼサポートしてもしんどい子はいるんだよ。横並びでやれば当然無理も生じてくるからね。

藤本 具体的な試みはあるんですか。

浜田 国も学級編成の弾力化を打ち出している。10人ぐらいの少人数指導も有り得るよ。たとえば、国、算、理を習熟度別にして興味を持たせるとかね。もちろん、従来のドリル学習も要るけどね。

藤本 子どもたちが興味を持つ授業ですね。

浜田 共通で学ぶべき内容は厳選し、生徒が選択して学習できる幅を拡大していく。子どもの特性に合わせて、意欲的・主体的な学習がより活発に行われるようになっていく。

藤本 好きなことなら一生懸命できますよね。

浜田 学びたいと思う気持ちが大切。誰がどこの学校に行ったとかを言うのは、もうやめよう。

藤本 母親たちにも意識改革が必要ですね。

浜田 そういうことです。大阪市も「教育改革」として全面的にやっていきますよ。

家庭では毎日が総合学習

藤本 「総合的な学習の時間」は、具体的にどんなものが上げられますか。

浜田 全国的な「総合的な学習の時間」は、知識を教え込むのではなく、「自ら学び、自ら考える力を育て、学び方や調べ方を身につけること」だが、大阪市の狙いはこれ(パンフレットを広げる)だよ。

藤本 「未来に向けてたくましく生きるなにわっ子の育成を目指して」というコピー、いいですね。

浜田 もう少し細かく言うと、「健やかで心豊かな子」「変化する社会でたくましく生きる子」「郷土大阪を愛する子」の3つをうたっているよ。

藤本 車いすの体験学習や職場体験学習、大阪の食文化を学ぶ体験学習、自然体験学習、パソコン学習、伝統文化を生かした学習など。盛りだくさんですね。

浜田 すでに大阪で始まっている取り組みだが、結構面白いよ。あとは大阪らしさをどう入れていくか

藤本 「総合的な学習の時間」は、先生方にもまだ不安があると聞いていますが。

浜田 先生も初めてのことで、試行錯誤だと思うよ。

藤本 大阪市では、「総合的な学習の時間」はどのくらい実施されているんですか。

浜田 来年度から大阪市内すべての小中学校で実施されるけど、12年度からが移行期間となっていて、中学校では昨年59%だったのが、今年は84%という伸び。高校養諸校も小中に準じてやっていくよ。

藤本 面白い事例はありますか。

浜田 玉川小学校の「好っきやねン大阪! らくごのこ」は、4年生が林家染雀という落語家を呼んで来て、たとえば「おーきに」や大根の「でーこん」に始まって、いろいろな大阪言葉を、落語を通じて探ったんやね。「大阪言葉」を入れた作文や、落語の小噺を子どもらがつくったんやけどね。

藤本 4年生がつくった落語を1、2年生に聞かせたり、子ども会で発表したり。人前でプレゼンテーション(※1)する、つまり考えたことを表現させるんやね。

※1 プレゼンテーション(presentation) 掲示。研究発表。説明。計画案を理解させるためのイメージスケッチほかさまざまな説明をすること。略してプレゼン。

浜田 こういうことが、コミュニケーションの力をつけていくことにもなるんですね。

藤本 大きな狙いのひとつは、書物や活字を通してでなく、ナマに触れる機会をつくること。本物の落語を「体験して感じる」ことが素晴らしい。それともうひとつは、さまざまな「知識」をつけること。やはり生きていく上では、あらゆるジャンルの知識が役に立つ。以前、大学院の学生たちの前で話す機会があったが、そこでぼくは「競馬の話」をしたんだよ。これが学生たちに受けたんだな。◎が本命、▲が大穴とか、意外にみんな知らないね。競馬もね、いろんな知識を統合した真剣勝負だよ。人生を楽しくする勉強といえば、わかりやすいけどね(笑)。

親も先生も手をつなごう

藤本 所長のように経験豊富な方はいいけど、そうでない先生はどうすればいいんですか。浜田邦男さんとの対談写真 その3

浜田 22歳で学校を出た途端に、誰からも「先生」と呼ばれてしまうわけやからね。大切なのは、これからの情報化社会に則して、アカウンタビリティ(※2)、つまり何をどうするかを学校側が説明せなあかんということやね。「こういうものをつくりますから、お母さんどうですか?」とメッセージする。アメリカのチャータースクール(※3)のように、お母さん方も「先生どーいうことですか? 違うんとちがいますか?」、文句の前に質問することやね。

※2 アカウンタビリティ(accountability) 説明責任と訳されることが多い。実施義務。
  市民にわかりやすく説明する義務を負うという考え方。

※3 チャータースクール(charter-school) 一言で言えば「手づくりの公立学校」。教育
  方針の事業案を申請し承認されれば、自治体と契約し補助金を受けることができる。

藤本 いわゆるパートナーシップですね。

浜田 お母さん方は、先生は当事者だが、自分は当事者ではないと思うてる。まずは当事者意識を持つこと。自分が学校を変えると思わなければ、学校は変わらない。

藤本 母親たちを見ると、「総合的な学習」は聞いたことはある、「人材バンク」もプリントはもらったがよくわからない、という現実があるようです。

浜田 パンフレットもつくっただけでは伝わらない。どう伝えていくかが今後の課題だ。

藤本 「人材バンク」も、特別な人しか登録できないと思い込んでいます。

浜田 「人材バンク」はね、大阪市が全国で一番最初に始めたんだよ。パンフレットには「学校の授業などで、地域の人のさまざまな知識・技能、あるいは豊かな経験を、ボランティアとして生かしていただくために、個々の人材情報を登録するもの」とある。

藤本 母親たちの能力を生かせる場ですね。

浜田 そうそう。団塊の世代だけじゃなく、20代、30代の若いお母さんたちにも活躍してもらいたい。

藤本 私は母親業というのは、毎日が「総合的な学習」の実践だと思うんです。

浜田 だから一緒に子どものことを考えよう。「どうしたらいいの?」と思ったら、まずは一緒のステージに上がることやね。

藤本 先生方も地域のネットワークをつくったり、「総合的な学習の時間」の研究が必要ですね。

浜田 ええ。大阪市の学校園でつくっているネットワークのWebページでもいろんな取り組みを紹介し、たくさんの情報を公開しています。データのメンテナンスや環境は行政の責任でしっかりつくっていくから、お母さんたちは、先生や子どもに面倒がらずに対応してほしい。先生に「ちょっとどーですか?」と聞く。まずはそこからやね。

藤本 関心を持つことから、一歩ですね。

浜田 内輪の話やけど、家内も60(歳)過ぎてから何かやりたいなんて言い出した。今はボランティアで外国人に日本語を教えてるよ。

藤本 素晴らしい活動をなさっているんですね。

浜田 地域の中で関わることが大事。ひとつ関わるとそこから広がるからね。物事ってみんなそうでしょ。それから、教育で何が大事かいうたら、つくり事、にせ事はダメ。子どもはすぐに見抜いてしまう。

藤本 形ばかりじゃダメだということですね。

浜田 「本気」で子どもと向き合わなきゃね。

藤本 人材バンクはどのくらいあるんですか。

浜田 現在523校で、「大阪市学校支援人材バンク」への登録者数は904人となっています。

藤本 どんな人が登録されているんですか。

浜田 さまざまですよ。人間国宝級の人もいれば、弁護士や医師、調理師さんもいる。登録には、学校や公的機関・団体による推薦が必要です。

藤本 たとえば5人の子どもの母親はどうですか。子育ての経験やノウハウをたくさん持っていますよ。

浜田 なるほど。新しい発想だね。

藤本 子育ては大事業です。5人を育てた経験や知恵はものすごいと思います。 (人材バンクのパンフレットを見て)10に分類される「活動分野」とは、1国際・外国語 2社会・生活 3大阪文化 4人権・平和 5福祉・保健 6経済・産業 7自然・環境 8科学・技術 9文化・芸術10スポーツって、これだけジャンルがあっても、「子育て」という分類はないんですね。

浜田 そうやね。今の時代は役所も幼稚園も「子育て支援」と言ってるのにね。

藤本 今年度の「東京都福祉のまちづくり条例」には、「子育て」という項目が盛り込まれました。今は「子育て」は大切なキーワードです。

浜田 商店街のおっちゃんやおばちゃんだけでなく、母親たちも受け入れなきゃダメだね。

藤本 学校に関心を持つきっかけになるはずです。

浜田 お母さんたちを含め、地域の人々がどう学校教育に参加するか。三者の連携プレーが必要だね。

藤本 所長の考える真の教育とはどんなものですか。

浜田 たとえばアメリカでは、自分はこうしたい。なぜならこれこれこうだからと、きちんと説明するでしょ。子どもの意思も尊重する。一人ひとりが自覚と責任を持っているから、自らが考えて行動する。

藤本 思っていることを素直に表現する力ですね。

浜田 そう。プレゼンテーションの力です。

藤本 自分の意見を持っていない母親、それに価値観の違いと好き嫌いを混同する人が多い。お互いの生き方を尊重することが大切。本来、コミュニケーションとは、相手を理解することからですね。

浜田 向こうではね、子どものこづかい交渉もしつこいよ。「ぼくはこういう物が欲しいから、これだけ欲しい」「これで間に合うだろう」「いや、もう少し上げてほしい」…と。

藤本 当たり前に教育されているわけですね。

浜田 それが「生きる力」。自分の考えをしっかり持って、考えの違う人に対してどう表現していくか。

藤本 子どもだけじゃなく、親も同じですね。

浜田 それから心豊かな感性を育てていくこと。「愚かしいものは、見ざる、聞かざる、言わざる、無関心」という言葉もあるよ。と同時に、教育は予定されたように動くものではない。不測の事態にどう対応できるかが先生の力量だ。

藤本 確かにそうですね。教室では想像もつかないことが次々に起こる。

浜田 そのためにも、先生は専門的な勉強だけではダメ。人間的に成長していかないと。

藤本 人間性が問われるのですね。先生たちも個性を発揮するときですね。

浜田 お母さんたちにも協力してもらわないとね。

藤本 もちろんです。この『ビーボラビータ』は、学校と家庭と地域を結ぶ教育情報誌。将来の子どもたちのために、パートナーシップを目指しています。

浜田 我々が目指すものと同じやね。

藤本 ところで、この表紙いかがですか。ビーボラビータはイタリア語で「自分らしく生きる」という意味なんです。

浜田 い〜ね〜。いいと思うよ。すべての人が子育てに関わりながら、自分らしくということやね。

藤本 IT社会といわれる情報化の時代。何が本当の情報かわからない。母親たちにとって、本当に必要な情報とは何か。だからこそ、『ビーボラビータ』はお母さんたちのナマの声を大切にしていきたい。ポイントは母親の視点ですが、お父さんたちにもどんどん発信してもらいたいですね。

浜田 楽しみだね。大いにやってください。それにしてもこのイラストい〜ね〜。お父さんの目なんか最高やね。「いえ〜い!」って、言うてんのやろね。

藤本 わかってもらえました? これまでの『教育大阪』と雰囲気が変わるので、不安もありますが。

浜田 やっぱり変わるときは、これくらい思い切って変えないと。よーわからんけど、なんか面白い。浜田邦男さんとの対談写真 その4

藤本 表紙は「いろんな家族があっていいよね」って、新しい家族像の提案です。

浜田 みんなで「大きく変わろうよ」というメッセージやね。応援するよ。

藤本 所長に応援していただけたら心強いです。母親として何ができるかを真剣に考え、大勢の方々と手を結びながら『ビーボラビータ』をつくっていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。今日は所長のお人柄に触れ、とっても楽しいひとときを過ごさせていただきました。本当にどうもありがとうございました。

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