スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

マザー・テレサとの出会いが、ぼくの映画人生を変えた

世界中の貧しい人、苦しい人を救い、ノーべル平和賞に輝いたマザー・テレサが逝って10年。その87歳の生涯をよく知る日本人といえば、映画監督の千葉茂樹さん。日本ではまだ、ほとんどその活動を知られていない頃から、『マザー・テレサとその世界』など何本ものドキュメンタリー映画をつくり、日本中に彼女の名を知らしめた人である。今回は、マザーとの交流で生まれた、いくつかのエピソードを聞かせてくれた。千葉監督が今、取り組んでいる次回作は、なんとアニメーション! タイトルは『こちらたまご 応答ねがいます』。小さな命を大切にするというテーマは、マザーの精神でもあった。来春の完成を目指している。

 

映画監督 千葉茂樹さん
ちば しげき  1933年福島県生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒。劇映画、テレビ、教育短編など多方面で脚本、演出活動を続ける。近代映画協会、日本シナリオ作家協会に所属。現 日本映画学校副校長。『マザー・テレサとその世界』ほか『アウシュビッツ愛の奇蹟』『アンデスの嶺のもとに』など国内外の数々の映画賞を受賞。『マザー・テレサとその世界』『コルベ神父』ほか著書も多数。来春公開予定のアニメ『こちらたまご 応答ねがいます』を製作中。

藤本 マザー・テレサさんとの出会いを教えてください。千葉茂樹さんとの対談写真 その1

千葉 30年ほど前のことです。「国際養子」をテーマに撮っていて、たまたまベルギーの家族が養子として迎える子どもが、マザー・テレサの「子どもの家」の子どもだったことで、初めてマザーの存在を知りました。実際に会ったのは2年後の1976年。紹介状もなしに訪ねたとき、最初に質問されたのが「日本には貧しい人々はたくさんいますか?」という言葉でした。日本から来たといったので、富士山と言われるかと思ったら、いきなりその言葉。面食らいましたね。

藤本 実際は、どう答えられたのですか。

千葉 「ええ、日本にも貧しい人はたくさんいます」と。そのあとマザーは、貧しい人々がどれほど素晴らしいものかと熱心に話されたのです。「so beautiful」「so great」と何度も言うのですが、正直、最初は意味がわかりませんでした。

藤本 それがわかったのはどうしてですか。

千葉 その後、2週間にわたり、カルカッタ、ニューデリー、ボンベイにあるマザーの修道会が運営する奉仕センターを回り、ボランティアの真似事を体験させていただき、そこで働くマザーやシスターたちの姿にふれたのです。

藤本 どんな生活をされているのですか。

千葉 食べるものも、着るものも、それこそ最低のもの。最も貧しい人々とともにある彼女たちは、献身的に人々に尽くしていました。たとえばボンベイでの昼食は、毎日、機内食でした。マザーが飛行機を利用したときに、「残された機内食はどうするの?」と尋ね、以来、近くのボンベイ空港から譲り受けていると聞きました。

藤本 監督の映画『マザー・テレサとその世界』を拝見しましたが、本当に質素な生活をされているのですね。

千葉 これまでの人生では、なるべく「避けたい」と思っていた現実が目の前にありました。本物を見せつけられたというか、これはもうたまらなく、大きく心を揺さぶられました。「キリストのように感じ、キリストのように働く」と言葉でいうのは簡単ですが、実践することは生半可ではありません。

藤本 すぐに映画の話になったのですか。

千葉 それが簡単ではありませんでした。インド政府の撮影許可を取ることもそうですが、第一にマザーの了解を得るのが大変でした。「私たちのことは、メディアを使って知らせることではない。一対一の人間と向き合うこと」と、マスコミには厳しかったんです。私がマザー宛てに送った手紙にも全く返信がないままに、1年以上の月日が過ぎました。マザーが病気療養のためにインドを離れていたのはあとで知ったのですが、無事、許可をいただいたときはうれしかったですね。取材許可のサインを求めたときに、マザーはこう言ったのです。「サインは無用です。私とあなた方は、愛を持ったひとつの共同体として神様のために働きましょう。家族にサインは要らないでしょう」と。

藤本 愛という信頼を得ることができた。素晴らしいエピソードですね。

千葉 「死を待つ人の家」で撮影中、こんなことがありました。カメラを持ってウロウロしづらかったこともあって、「よし、たまにはぼくらも何かお手伝いをしよう」と、シスターと一緒に掃除を始めたんです。そこへマザーがやって来て「あなた方の仕事は映画をつくって日本の人々に伝えることです。すぐに掃除をやめて、ホテルで休みなさい」と言ったんです。ホテルに引き返すときは、さすがに複雑な気持ちでしたね。

藤本 監督の気持ちもわかりますが、マザーがおっしゃる意味もわかります。すでに、監督の仕事を認めてくださっていたのでしょう。

千葉 「人には皆、使命がある。あなたの回りにカルカッタを探しなさい」と、マザーはいつも話していました。クランクインの日、シスターの終生誓願式での言葉は、生涯忘れることのできないものです。「ソーシャルワーカーという仕事ではなく、神の思し召しに応えるのです」という言葉は、ぼくにとっては「映画製作はぼくの使命。生活のために映画をつくるのではなく、貧しい人、苦しい人や社会のためにやることなんだ」と、確かに聞こえたのです。

藤本 完成した映画は、国内外でたくさんの賞を受賞し、評価を受けましたね。

千葉 1979年の春に映画が完成し、同年秋にマザーはノーベル平和賞を受賞。それまで無名だったマザー・テレサの名は、20世紀を代表する偉大な人物として世界中に知られるようになりました。

藤本 今年、日本で始まった「赤ちゃんポスト」についても、まだ日本ではその存在がほとんど知られていなかった2004年に、ビデオ化されたそうですね。

千葉 今は、ものすごく大きなテーマになっていますが、ぼく自身は戦略とかではなく、流されるままに撮ってきただけです。偶然に出会いが生まれたりするんですね。

藤本 それこそ運命というか、必然で、社会に広く伝えていくという、監督の「使命」なのではないでしょうか。

千葉 予期せぬ妊娠や望まれない出産で苦しむ母子の存在、増え続ける十代の人工中絶に対するひとつの取り組みとして、ドイツにあった「ベビー・クラッぺ」(捨て子ポスト)に注目したのです。日本における生命尊重活動は、1981年に 講演のために来日したマザーの呼びかけが大きな動因となっていて、今年5月に熊本慈恵病院が開設した「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)も、そうした20年余の積み重ねから生まれたものです。

藤本 初めて「赤ちゃんポスト」を聞いたとき、ビックリしました。今も、捨てることを助長するのではないかなど、世論もいろいろだと思いますが…。

千葉 修道会も、15世紀には裏口にそうした窓口を設けていたという話もあり、ヨーロッパなどの、子どもをどう救うかという取り組みは、長い歴史があります。実際にたくさんの捨て子が、ポストによって救われているのです。

藤本 来日されたマザーが、中絶のことをコメントされたことがありましたね。千葉茂樹さんとの対談写真 その2

千葉 「日本は美しい国です。しかし、胎内の幼い生命を葬っても平気だということは、心の貧しい国といわねばなりません」というマザーの言葉ですね。

藤本 物質的には豊かな日本ですが、今は、子どもから大人まで、みんな心を失ってしまっているように思えます。

千葉 現代に不幸と苦しみがこれほど多いのは、家庭の中の愛の欠如にあるのだと思います。日本の家庭崩壊の現実についてマザーは、家庭から「祈り」がなくなってしまったからだと言っています。

藤本 私はクリスマスを祝い、お彼岸に手を合わすという宗教心のない人間なので、「祈り」という意味があまりよくわからないのですが。

千葉 祈りは、3つのことに気づくことから始まります。1つは、多くの人々に生かされていることに気づくこと。そこから感謝がわいてきます。2つ目は、欠けている自分に目を向けること。そこには反省が生まれます。そして3つ目は、自分なりの可能性を見つめること。小さな存在の自分にもできることがあると思えば、勇気がわいてくる。今日より明日、少しでも成長したいと願い、このようなことを習慣にしていれば、宗教の有無にかかわらず、自分を深め、高めていけるのではないでしょうか。それこそが、マザーのいう愛の実践を生み出す原動力をつくるものだと思います。愛のある家庭については、国際養子家族の話が好例です。

藤本 日本では、「国際養子」はあまり聞きませんが、世界には珍しくないようですね。

千葉 『こんにちわ地球家族』という映画で撮ったベルギーの家族は、世界一の大家族。ごく普通の夫婦が、実子4人を含め25人の子どもを育てています。子どもたちは、肌の色も(元の)国籍も違う。しかも、ハンディキャップのある子どもが3人もいます。

藤本 それほど多くの子どもを育てることの意味は何でしょう。

千葉 夫妻の言葉を借りれば、子どもたちは、人生において多くの夢を与えてくれる存在。取材後も私と一緒に一家と交流を続けている妻にいわせると、「素晴らしい感性を持っている子どもたちこそ、大人にとっての教師的存在」だと。さらに国際養子運動の原点をいえば、「子どもは愛のある家庭で育つ権利があり、彼らが私たちに愛と平和と喜びをもたらしてくれる」という考えからです。マザーもおっしゃっています。「子どもは神様からの贈り物・子どもとは本来、愛し愛される存在としてこの世に送られてくるもの。愛は、まず家庭から始まるのです」。

藤本 最後に、現在製作中のアニメ映画『こちらたまご 応答ねがいます』のお話を、聞かせてください。

千葉 熊本で10人の子どもを育てている岸信子さんが、テレビのワイドショー番組を見たことに端を発します。あどけない笑顔の女子高生が、「1か月のこづかいは10万円では足りない。妊娠したら堕ろせばいいじゃない」と話すのを見た岸さん。「命はそんなに簡単なものではない。年頃の娘たちにも生命の神秘や子育ての感動を伝えたい」と一筆入魂。朝までかけて、一気に書き上げたそうです。

藤本 家庭や学校でも、性教育はいまだタブー視される向きもあって、親子でもなかなか話せる機会はありません。受精や生理、陣痛のことなど、子どもにもわかりやすく書かれていますね。これをきっかけに、親子で生命の誕生について話せたらいいですね。

千葉 お母さんのお腹の中にある受精卵=「たまご」が、主人公であるお兄ちゃんの「卓君」と交信しながら、徐々に成長していく過程を描いていきます。特に大切にしたいのは、卓が「たまご危ない!」と言って、中絶しようとする産院の手術室に飛び込んでいくシーンですが、子どもたちにも共感してもらえると思うんです。

藤本 あまり教育的にならず、楽しいストーリーの中で命の大切さが伝わるようなものをつくってほしいですね。

千葉 もうひとつ大事なコンセプトは、そういう価値を共感できる人たちと一緒につくっていこうという点です。熊本の生命尊重センターの皆さんをはじめ、産婦人科の先生方…。それに、全国にいるお母さんたちが加わってくれたら最高です。

藤本 お母さんばかりでなく、子育てを応援したいという人たちもたくさんいますから、そういう皆さんに働きかけていけたらいいですね。映画の完成はいつでしょうか。

千葉 来春を目指していますので、『リブライフ』読者の皆さんにもぜひ応援していただきたいと思います。

藤本 監督のお話から改めて、幸せの意味や命の大切さを考えることができました。マザーの言葉にもある「誰ひとりとして無駄な存在はいない」。多くの人たちに、伝えていきたいですね。今日は、ありがとうございました。 

★「こちらたまご応答ねがいます」アニメ製作委員会本部では、協賛者、協力者を広く募集中。お問い合わせは、以下まで。
ピクチャーズネットワーク(担当/平形則安)
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町37-14 篠原ビル4F
TEL03-5738-0720 FAX03-5738-0722「こちらたまご 応答ねがいます」 本写真

 

 

 

 

 

 

『こちらたまご 応答ねがいます』

著者/岸信子 発行/新風舎

<ストーリー>
6年生の卓のもとに突然聞こえてきた声…。「おにいさん、おにいさん、こちらたまご 応答ねがいます」。それは、卓の母親に宿った新たなる生命の声でした。細胞分裂を繰り返し成長する「たまご」にしだいに命の尊さを感じ取っていく卓。そんなある日、いつになく元気のないたまごが卓を呼びました。「あの、やっぱりぼくは、どうも歓迎されていないみたいなんです」。卓の両親はいろいろな理由から「中絶」を考えていたのです。それを知った卓は立ち上がりました。たまご救出劇、さてその行方は…。

★リブライフな人として、こちらのコーナーでも紹介しています。

「援交で子どもができたら堕ろせばいいじゃん」

6年前、テレビのワイドショー番組で、女子高生が笑いながらこう話すのを見た瞬間、「違う、違う。お岸さん 写真願いだからしっかり考えて」と心の中で叫んでしまったというのは、熊本に住む10人の子どもたちの母、岸信子さん(52歳)。その晩、朝までかけて、原稿用紙400枚にわたる「命」の童話を書き上げた。

「長男を妊娠したとき、『妊娠と出産』の本を読み、赤ちゃんは奇跡のかたまりなんだ。子どもを産むって、なんてすごいことなんだろうと思った途端、涙がポトポト落ちてきたんです。いつかこの感動を伝えたい。それが私の夢でした」。

願いが叶ったのは昨年。長男を出産してから23年の月日が流れ、岸さんは、7男3女のお母さんになっていた。あの晩一気に書いた400枚の原稿を手直しして、第1回福永令三児童文学賞(新風舎主催)に応募。見事、金賞に選ばれ、出版にこぎつけた。岸さん 家族写真

アニメの話がきたときは、信じられなかったという。「でも、うちにも本好きな子もいれば、本を読まない子もいる。アニメなら見てくれる子も多いだろう。生命の神秘や子育ての感動を、ひとりでも多くの子どもたちに伝えたい」と岸さん。映画の完成を家族みんなで楽しみにしている。にぎやかな毎日はブログでどうぞ
http://www.kkt.jp/column/diary/index.html

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