藤本 この世界に入って何年になりますか。
春日錦 春日野部屋に入門したのは15歳のとき。1年後に初土俵を踏んで以来、17年になります。
藤本 入門のきっかけは何ですか。
春日錦 小学5年生のときに兄と部屋の見学に訪れたその日から、相撲の虜になりました。ちょうどその頃学校で、皆の前で夢を発表するという授業があり、「将来は横綱になる」と宣言したんです。
藤本 11歳の少年を虜にした理由はどこにあったのですか。
春日錦 当時の春日野親方(栃錦関)がぼくをポンとひざに乗せ、足の大きさと爪の長さを見てこう言ったんです。「おっ、立派な足だ。君は将来、1m80cmを超えて、いいお相撲さんになるな」と。そのときは特別体格がよかったわけでもなく、将来お相撲さんになろうと思っていたわけじゃないんです。でもその言葉はうれしかったし、間近で稽古を見て、心打たれるものがあったんです。小さい人が大きい人を投げ倒すのはかっこよかったし、ボクシングや柔道のように体重制限や階級がなく、「勝てば、どんどん上にいける」のも魅力でした。フェアなスポーツだなと。
藤本 どんなお子さんだったのですか。
春日錦 中学生時代はやんちゃでしたし、反抗期も長かったですね。家が魚屋をやっていましたから、普段から人の出入りが多く、勉強するような環境ではありませんでした。夏休みや春休みになると、グアムやサイパンに行く友だちの家庭(生活)に憧れていました。でも「相撲取り」になると決めてからは、とにかく「早く大人になって、夢を叶えたい」の一心でした。
藤本 何かスポーツをやっていたのですか。
春日錦 柔道はやりましたが、部活動は美術部でした。進む道が決まっていたので、中3の2学期からは学校に行かず、サッカーや野球をやったり、走ったりと、体をつくることに専念していました。
藤本 中学校卒業と同時に、門を叩いたわけですね。ご両親はそのとき、何ておっしゃっていましたか。
春日錦 大相撲は好きでしたが、「まさか息子が…」という感じだったと思います。ぼくが決めたことには、反対もしませんでしたが。
藤本 心の中では寂しいし、心配もあったと思いますよ。
春日錦 相撲練習所に毎日通っていた頃は、自宅に逃げ戻ったこともありました。常々「がんばりなさい」とは言われていましたが、そういうときは何も言わない親でしたね。でも「中途半端にはするな。やめるならきちんと話してけじめをつけてからにしなさい」と。
藤本 相当ハードな練習も、あるのでしょうね。
春日錦 肉体的にきついのではなく、精神的なことですね。自分がいっぱいいっぱいになってしまって、親にも師匠にも、仲間にも言えない…。でも、逃げて楽になるのはほんの一瞬。すぐに「みんな心配してるだろうな。巡業先で応援してくれる人たちも、ぼくが行かなかったら寂しがるだろうな」と、食事ものどを通らない。結局、ぼくのやっていることは「皆への裏切り」じゃないかと。なんて、ちょっとかっこつけて言いましたが、結局は自分なんですね。自分が寂しいんです。「ここで終わってしまったら、人生を投げ出すことになる」と気づいてから、少しずつ努力していきました。
藤本 日本の国技である相撲という特別な世界。そんなプレッシャーはないですか。
春日錦 注目されるという意味では責任は大きいと思いますが、勝負の世界なんで、要は勝たなければなりません。
藤本 結果が明解なのは、厳しいけれど、勝って上にいく喜びもあるのではないですか。調子がいいときには、勝てない(はずの)試合にも勝てるとか、よくいいますよね。
春日錦 運も勝負のうちで、運が味方してくれることもありますが、どうもぼくは「ここ一番に弱い」ところがある。2度の幕下優勝決定戦に出ましたが、「ここで勝っていいところを見せよう。両親やご贔屓さんに恩返ししなきゃ」なんて気負ってしまって、結局、負けてしまうんです。
藤本 それだけの大一番ですから緊張して当たり前。でも「絶対に勝つぞ!」と、相手を威嚇するような闘志を見せるタイプではないのですね。
春日錦 内側にはもちろんありますが、表には出しません。卯年生まれなもんで、自分でいうのも何ですが、性格は温厚で諍いは嫌い。日常生活でも、怒ることはありませんし、戦いは、本当はあまり好きではないんです。
藤本 スポーツ選手には、あまり向いてないんじゃないですか。
春日錦 それは言えてるかもしれません(笑)。でも相撲というスポーツは、誰でも横綱になれるチャンスがある。幕内と十両の差は大きいですが、やはり「勝ち」を重ねていって、この先「三役」を目指したいですね。
藤本 上になればなるほど、人に評価もされる反面、いろいろ言う人も出てきます。私生活を含め、すべてが注目されるわけですから、それも大変でしょうね。
春日錦 人間として、もっともっと成長していかなければならないと思います。「勝てば官軍」という言葉もありますが、その前に「人としてどうあるべきか」が問題です。
藤本 ボクシングでは、亀田大毅選手の言動が何かと世間をにぎわせています。それについてはどう思いますか。
春日錦 ルールを破って罰則を受けるのは当然。いんちきしても勝てばいいなんて思っていたら、友だちを失くします。何より、自分の心が貧しくなるはずです。
藤本 物事の本質は常に内面にある。それを知っているのは自分自身ですからね。
春日錦 相撲取りも、相撲がすべてではありません。ぼく自身の究極の願いは、世界中の人々が幸せに生きること。そのために、自分には何ができるのかを常に考えています。今は、結果で評価されますが、人生において勝ち負けはないと思っています。
藤本 では関取にとって、「相撲」とは何ですか。
春日錦 自分が学び成長する機会だと思っています。もちろん今は、一番、一番、精一杯の力を出しきって闘っています。でも大事なのは、その中で自分をどう高められるかだと思います。
藤本 今日まで、さまざまな局面を乗り越えてこられたのだと思いますが、その若さで、どうしてそんなに人生を達観されているのですか。
春日錦 両親や親方をはじめ、多くの人の教えがあって、今のぼくがあります。そして、今日のご縁をつくってくれた南山みどりさんとの出会いも大きいですね。
藤本 みどりさんとの出会いについて教えてください。
春日錦 10年前のことですが、新幹線に偶然乗り合わせたんです。時間にしてわずか15分の立ち話でしたが、みどりさんの話がなぜか心に引っかかった。別れ際にケータイの番号を教えたら、すぐに電話をくださったんです。
藤本 ナンパしたわけではないんですよね。
春日錦 ハハハ。ぼくはみどりさんを「前世の母」と信じています。彼女の息子さんはぼくと同級で、スポーツ選手でした。それに彼女が心と体のバランスをとる仕事をしていたという偶然も重なって、親身になってぼくの悩み相談に乗ってくれたんです。今も夫婦して困ったことがあれば、SOSを出せる唯一の人。家族ぐるみのおつきあいをさせていただいています。
藤本 映画かドラマのような出会いですね。
春日錦 普通ならあり得ない話です。導かれるように、必然的に出会わされたとしかいいようがありません。それから先は、みどりさんと共に学びながら、病気や苦難を乗り越え、今に至ります。
藤本 みどりさんの講義を受け、今では関取自身が「ハンズ・オン・ヒーリング」をなさるそうですね。
春日錦 先日も、弟子のひとりが突き指をして握る力もないといっていたんで、「ヒーリング」を15分ほど施術したんです。そしたら「嘘みたいに治った」って。本人はそういっても、周りは「ハイハイ」っていう感じで。
藤本 お世辞だというんですね。実際はどうなんですか。効くんでしょ?
春日錦 それはぼくが実証済みです。今までも故障や人間関係のストレスがあって。でもそのたびにみどりさんのケアを受けて、心と体のバランスをとっていきました。彼女の言葉や施術は、不思議と、スーッと入ってくるんです。
藤本 体が求めていたんだと思いますし、2人の信頼関係もあるでしょう。でも一番は、関取自身がピュアで素直な方なんでしょうね。
春日錦 人間にはもともと自然治癒力が備わっているんです。でも普通はそのエネルギーをなかなか活用できない。それを引き出してもらったおかげで、今は自分でも、少しはコントロールできるようになりました。心も体も開放し、人間本来の姿に戻ることで、とても満ち足りた毎日を送ることができるんです。
藤本 スピリチュアルな世界は、ちょっとしたブームになっていますが、相撲界ではいかがですか。
春日錦 整体や心理療法など、「気」を活用した施術を受けることはあっても、自分でする人は、恐らくいないと思います。
藤本 角界の「ヒーラー」ですね。
春日錦 自分が充たされていなければ、人を幸せにすることはできません。人には、愛を持って接することが大切です。
藤本 それなら土俵でも、愛を持っての攻撃=「ハグ」で「はず押し」なんてどうですか。
春日錦 ええ。ぜひやりたいですね。「決まり手は、ハグではず押し」なんていう大見出しが、スポーツ紙の一面を飾るかもしれません。
藤本 いい、いい! 絶対にやってください。「相撲界の江原啓之」になれるかもしれません。愛といえば、とても愛妻家だそうですね。
春日錦 結婚して3年ですが、私には出来過ぎの妻です。健康管理はもちろん、何でもこまめにやってくれるので、とても感謝しています。
藤本 奥様とは、どういうご縁で出会ったのですか。
春日錦 彼女の叔母さんが後援会の方で、一緒にパーティーに来てくれたのが最初です。押しの一手でいい感じになったものの、結婚となると難しい。何しろ、1年うち約半分は巡業などで家を空けます。不憫な思いはさせられないと考えましたが、つきあっていくうちに、価値観が似ていることに気づいたんです。5年間つきあって、一度もケンカしたことはありません。やさしくて真面目だし、彼女なら家業もしっかりやってくれそうと、結婚を決めました。
藤本 結婚生活は、いかがですか。
春日錦 幸い、稽古場の近くに住まいがあるので、午前中の稽古を済ませたら、午後はのんびりできます。オフの時間は、家でゆっくり本を読んだり、デパ地下の食料品売場をウロウロしたり。メンズファッションの売場では、「引退したらどんな洋服を着よう?」「ポールスミスなんかどう?」なんて話しながら、ウロウロしています。
藤本 奥様はファッションに興味をお持ちなんですか。
春日錦 今は着物の学校で助手のようなことをしています。実は今日の帯は、ぼくの誕生日に妻が、桐生織りの伝統工芸師の方に特注してお揃いでつくってくれたものです。虎の柄も気に入っていますが、緑色がいいでしょう?
藤本 何ともいえない素敵な色ですね。
春日錦 グリーンは癒しの色で、大好きなんです。
藤本 回しは何色ですか。
春日錦 ここのところずっと締めているのは、地元のファンクラブの皆さんから贈られたもので、えんじ色ですね。
藤本 自分たちが贈った回しを締めて土俵に上がってくれたら、ファンとしてはうれしいでしょうね。
春日錦 うれしいのはぼくのほうですよ。巡業でも場所中でも、声をかけられるのが一番うれしいですね。
藤本 私も、いつか絶対に応援に行きますね。11月の秋場所が楽しみになってきました。これからも健康には気をつけて、がんばって闘ってくださいね。今日はありがとうございました。
●対談後、編集長が一言、「私と一番相撲をとってほしいんです」。「?」と一瞬の間のあと、やおら差し出した指を見て、「ああ、指相撲ね」と納得。だが勝負は、編集長の2勝0敗で関取完敗! 見よ、この編集長の勝ち誇った顔を。
★リブライフな人として、こちらのコーナーでも紹介しています。
人の悩みを解決し、心を元気にすること。それが私の仕事です。カウンセリング、認知療法、コーチン
グ、リーディング、チャネリング、ヒプノセラピー、エンジェルワーク、カードリーディング、エネルギーワークなど、あらゆる手法(ツール)を活用し、話しながら問題を解決していくセッションです。
春日錦関とのおつきあいは10年になり、これまでにいろいろなセッションを行ってきましたが、それによって私も成長させていただいていることに感謝しています。関取は、真面目でやさしく思いやりがあり、人一倍の努力家です。勝敗が問われる世界なので大変だと思いますが、出会った時から「一番一番を大切にして、自分自身が満足できる、納得のいくお相撲をとろうね」と伝えています。最近は特にヒーリングエネルギーが強くってきているので、将来が楽しみです。夫人の美保さんもやさしく思いやりに溢れ、なおかつ気配りのある素晴らしい女性。お互いを尊重し合い、大切にしているのが伝わってくる素敵なご夫婦です。
★12月8日(土)に、池川クリニックの池川明先生との合同セッションを予定している南山みどりさん。詳しくはHP「天使の笑顔」をご覧ください。
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