スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

マジックを通して学んだ「知的な距離感」の大切さ クロースアップ・マジシャン 前田知洋さん

自分にとっても、相手にとっても心地よい関係、それが「知的な距離感」。さまざまなテクニックと至近距離で見る安心感、巧みな演出…「クロースアップ・マジック」で多くの観客を魅了する、前田知洋さんの洗練された動きの秘密、スマートな人間関係をつくるコツなどについて迫った。

 

クロースアップ・マジシャン 前田知洋さん
まえだ ともひろ  1988年米国アカデミー・オブ・マジカル・アーツのオーディションに合格。ハリウッドのマジック・キャッスルに出演。帰国後、日本初のクロースアップ・マジシャンとして活躍し、近い距離で見せる「クロースアップ・マジック」のブームをつくる。アメリカをはじめイギリス、スペイン、ドイツなどでも活躍。「マジック・オブ・ザ・イヤー」ほか数々の賞を受賞。マジックのみならず、距離感、動作、会話など、すべてを含めてステージを完成させる。その洗練された身のこなしで、多くのファンを魅了している。

●前田知洋さん公式サイト
http://www.eva.hi-ho.ne.jp/tomo-maeda/

藤本 『知的な距離感』の出版、おめでとうございます。タイトルがいいですね。「プライベートエリア」平野洋子さん著『梅一夜』 写真という言葉も初めて聞いて、ハッとしました。この年齢になりますと、ついおばちゃんパワーでズケズケと相手に踏み込んでいってしまうことが多くて。でも、前田さんの本を読み、今日のお話を聞いて、私も気をつけなきゃって。

前田 ジャーナリストの方はいいんですよ。相手に踏み込んでいくのが仕事なんですから。そんなことをいったら、医者と患者の関係なんて成り立たないじゃないですか。「プライベートエリア」のとらえ方やその距離は、職業や、時と場合にもよります。

藤本 コミュニケーションについてのノウハウ本が山とある中で、このタイトルにはけっこう惹かれますね。

前田 最近は本屋さんに行くと、インパクトの強いタイトルがたくさん並んでいますよね。これは、比較的地味なほうではないですか。

藤本 品格というか、センスというか、おしゃれな雰囲気がします。先ほどは編集者の方も「前田さんの知的でエレガントなイメージを壊さないように終始心がけた」とコメントされていましたね。

前田 そう言われると、うれしいですね。タイトルは、出版社の皆さんも熱心に議論してくださって、最終的にこれに落ち着いたんです。「知洋」という名前なので、「知」という字にこだわりがあるのと、知的好奇心ということを意識しています

藤本 本にもちりばめられていますが、絵画や建築にも造詣が深く、知識の幅が広いのがわかります。

前田 「なんでそんなに雑学に詳しいの?」とよく言われますが、ぼくはとにかく「活字魔」で、普段からありとあらゆる活字を読みまくっているんです。お風呂に入っても、シャンプーや入浴剤の説明書きを一生懸命読んでしまうくらい(笑)。おかげでジャンルにこだわらず、知識だけは豊富で、今回の本を書くときにも随分役立ちました。

藤本 子どもの頃から本好きだったのですか。

前田 「なぜなぜ君」と呼ばれていたくらい、父や母をつかまえては「なんで? なんで?」と質問をしていました。

藤本 知識の引き出しが多いと、人と話すにも有利ですね。

前田 仕事でいろんな所へ出かけ、いろんな分野の方にお会いします。そんなとき、その情報がどれほど役に立っているか。ですから、お父さんやお母さんに言いたいのは、子どもが何かを尋ねてきたときには、面倒がらずに応えてあげてほしい。わからないことは、一緒に本で調べるとか。そういうことが大事なんだと思います。

藤本 対人関係を「距離感」という、ひとつの視点で書いたのは面白いですね。

前田 マジシャンにとって、観客とどれくらいの距離感で接するかは、とても大切なことです。もし距離を誤ってしまえば、トリックの秘密を知られてしまうばかりか、観客に嫌われてしまうかもしれません。ぼく自身がそんな失敗と経験を重ねながら、観客との心地よい距離を見つけていくことができました。正しい距離がわかると、秘密が悟られないだけでなく、同じマジックでも数倍の評価をもらえることに気づいたのです。

藤本 会社でのコミュニケーションについても、もっともだと思うことが多かったです。

前田 編集者との企画会議の段階で、今の時流から、会社を舞台にした人間関係もテーマにしてほしいといわれて、ふと考えてしまったんです。そういえば、ぼくは会社勤めをしたことがないなって。

藤本 ビジネス書のように、リアルなシーンがたくさん出てきますが。

前田 会社という組織ではないけれど、ぼくが仕事をさせていただく中でも、公演の主催者であるとか、番組のディレクターやプロデューサーであるとか、さまざまな方々とご一緒しています。上下だけでなく、横並びもあれば、斜めの関係もある。それぞれの方とのつきあいを思い出して書けばいいんだなと。

藤本 組織の中も外も同じ。ひとつの場をつくるとか、商品をつくるとか、どれにも共通するのかもしれません。

前田 女性は比較的、男性よりもプライベートエリアが狭く、立ち位置ひとつも気になるものです。ぼくがマジシャンとして、おしゃべりや説明をしながらカードを持って近づいた場合は、受け入れてもらえますが、黙ってスーッと近寄っていったら、相手も気持ち悪いと思うはずです。「カードをご覧になります?」という言葉やリアクションで相手を安心させ、親しみを感じてもらうわけです。

藤本 華麗なテクニックや素晴らしいトリックにも勝る、心理的作戦ですね。

前田 プライベートエリアは人によって個人差があり、時と場合によっても違います。相手の空間をその場で見極めることは難しく、まずは自分の空間を知り、不快にならないように心がけることです。

藤本 相手に近寄り過ぎないとか?

前田 正面に向き合うのではなく、さりげなく横位置に回り込むとか。

藤本 研究し尽くした前田さんは、距離感を意識することなくコントロールできるのだと思いますが、私たちもこの本で学び、実践していく機会を重ねていけば、ある程度は意識的に身につけることができそうですね。

前田 知識としてではなく、ぜひフィールドワークとして試してみてください。それに、人を観察すること前田知洋さんとの対談写真 その1も大事です。自分なりのルールや身体の使い方を身につけたら、外出することや人と会うことが楽しくなるはずです。

藤本 私たち母親にとって、最も身近な対人関係といえば、子どもとの距離ですが、そのあたりはどうですか。

前田 ぼくは子育ての経験はありませんが、友人や知人のお子さんには、ものすごく甘いんです。親子関係には、しつけも含めて、ある程度の厳しさが求められます。その点ぼくは「甘いおじさん」でいいわけです。子どもの頃を振り返ったら、距離をとり過ぎても、踏み込んでもいけない。つかず離れずの関係がベストではないでしょうか。

藤本 どんなご両親ですか。

前田 いけないことはいけないと、はっきり言うタイプですね。でも、だからといって、ぼくの職業など、人生の大事な選択のときには一切口を出しません。親としたらマジシャンなんていう不安定な仕事に、心配もあったでしょう。

藤本 今は国内外で大活躍の前田さんですが、ご家族は何ておっしゃっていますか。

前田 残念ながら母は他界しましたが、数年前、「徹子の部屋」に出させていただいたときには、随分喜んでくれました。今も、テレビでぼくの元気な姿を見てもらうことが、父へのいい親孝行になっていると思っています。

藤本 子ども時代は、どんなお子さんでしたか。

前田 ぼくが幼稚園の頃、兄が2回も交通事故にあってしまい、長く入院していました。幼くして「鍵っ子」となったぼくは、家でひとりおとなしく過ごしていることが多かったですね。本とのつきあいは、その頃からです。

藤本 当時からマジシャンの道を思い描いていたのですか。

前田 10歳のときに、日本テレビ開局25周年記念としてホテルオークラで行われた、世界の一流マジシャンが出演する番組を見ました。高島忠夫さんとマリ・クリスティーヌさんが司会と同時通訳をしていました。マジシャンは、「テーブルを通り抜ける銀貨」を演じたのですが、マジックそのものよりも、上等のテーブルクロスやインテリア、黒のタキシード姿など、その場の大人の雰囲気に魅了されてしまいました。普段からタキシードなど黒系の衣装が多いのは、このときの印象が今も強くあるからです。

藤本 それほど影響を受けるなんて、うらやましいような出会いですね。

前田 でも、そのときからマジシャンを目指していたわけではなく、外で友だちと真っ黒になって遊ぶような、ごく普通の少年でした。

藤本 本格的にマジックをやりだしたのはいつですか。

前田 偶然なんですが、進学した技術系の大学に、クロースアップ・マジックのサークルがあったんです。ところが、マジックをやってみると、意外に難しい。技術はマスターできても、「スゴイ!」と思わせることができないんです。自分にはどんな「表現」ができるだろうと考えて、随分研究しました。

藤本 人を感動させるのは、容易ではありませんね。

前田 そこで、音楽家や歌舞伎役者など、ジャンルを越えた表現者の本やインタビュー記事を読み漁り、そこで得たヒントを実際に試し、その結果をさらに研究するという作業を繰り返したのです。

藤本 学生当時から、マジックのアルバイトをしていたそうですね。

前田 レストランやナイトクラブでのアルバイト収入はけっこうな金額でしたが、卒業後の就職を考えると、いろいろ迷いがありました。そこで「マジック熱を冷まそう」と、ロサンゼルスの大学に語学留学をしたのです。

藤本 アメリカ生活をやめて、帰国したいきさつが面白いですね。

前田 ある日、日本にいた友人を通じて、仕事の話が舞い込んだのです。横浜に巨大なレストランがオープンするので、専属マジシャンとして来てほしいというものでした。

藤本 レストランでやるマジックというのは、どういうものですか。

前田 クロースアップ・マジックといって、一つひとつのテーブルを回り、お客様のすぐ目の前でマジックを披露するというスタイルです。

藤本 最近は、マジックバーも流行していますが、当時は珍しかったのではないですか。

前田 その頃は、それだけで生計を立てている人はいませんでしたので、「クロースアップ・マジシャン」という意味では、先駆的でしたね。

藤本 帰国されてからはどんな勉強をされたのですか。

前田 マジックだけではなく、ホテルやレストランで実際にサービスを受け、学ぶことに多くを費やしました。それから衣装やおもてなし、マジック以外のあらゆる芸術についても研究しました。今は、大使館でのパーティーやレセプションに招かれることが多いのですが、そこで働く方々の一流のサービスや技術にはたくさんの学びがあり、尽きることがありません。

藤本 多忙な毎日だそうですが、練習時間はあるのですか。

前田 普段は特別なものではなく、オーソドックスなマジックを10種類くらい準備していて、そのつど会場の雰囲気やその場の流れで、演じるマジックを決めていきます。ですから常にカードを持ち歩き、たとえば移動中の車の中や、人と会って話しているときなどに練習することが多いですね。時間にして一日4時間から、多いときで10時間程度というところです。

藤本 きっと、毎日の現場そのものが、練習の場なのでしょうね。

前田 その通りです。ありがたいことに、今はとても多くの演じる機会をいただいていますが、どのステージも同じということはありえません。お客様が楽しまれたり、また時には不可解な反応を示すことなども含め、すべてが経験であり、学びです。ぼくにとっては、最高の喜びですね。

藤本 お話させていただきながら思ったんですが、「もし前田さんがマジシャンじゃなかったとしたら…」って。

前田 ………?

藤本 パイロット、学校の先生、警察官…って、どれも不思議とピッタリくるんですよ。なぜでしょう。

前田 ハハハ。もともとマジシャンになろうと思ってなったわけではないし、今も、さまざまなことを勉強しています。どんな仕事も、最終目的は、人を幸せにすることですから、そのための努力は惜しまずにやれると思うんです。

藤本 本当にそうですね。職業はひとつのツールといっていいのかもしれません。

前田 人に元気や勇気を与えたいというのが、究極の願いですね。あっ、でもぼくは、パイロットにだけはなれないと思います。

藤本 えっ、なぜですか。前田知洋さんとの対談写真 その2

前田 心配症なんです。慎重過ぎて、飛行機なんて飛ばせないんじゃないかな。マジシャンは、お客様の命をお預かりすることはないんで(笑)。

藤本 今、人の痛みがわからない社会といわれますが、すべての人が「心」を失いかけています。そんな中で、ワクワクドキドキ、人を感動させるマジックというファンタジーの世界を伝えることで、夢や想像力を与えていくというのは、とても素敵なお仕事だと思います。これからも、ぜひ前田さんにしかできないマジックで、たくさんの方を幸せにしていってください。

前田 一つひとつのステージ、一人ひとりのお客様を大切にしながら、努力していきたいと思います。

藤本 私も、今日学ばせていただいたことを意識しながら、いろいろな人との関係を大切にしていきたいと思います。今日は素晴らしいマジックとお話をたくさん、ありがとうございました。ますますのご活躍を期待しています。

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