スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

老いることで個性豊かに  傾聴ボランティア 篠崎延子さん

50歳で夫に先立たれ、いきなり自立を求められた篠崎さん。追い討ちをかけるように、母の痴呆と介護。が、その経験を生かして、ヘルパー2級、1級、介護福祉士の資格を取得。介護施設でお年寄りと向き合う中で「傾聴ボランティア」の活動と出会い、「老い」というものの素晴らしさに感動したという。篠崎さんの第二の人生は、今、始まったばかり。

 

傾聴ボランティア 篠崎延子さん書籍 幸せを呼ぶ聞き上手
しのざき のぶこ  1941年茨城県出身、横浜市在住。50代でホームヘルパーに。その後、介護福祉士資格を取得。シニア・ピア・カウンセラー養成講座(ホール・ファミリー・ケア協会主催)を受講後、傾聴ボランティアを開始。現在も訪問介護職に携わる傍ら、傾聴ボランティア・ネットワーク神奈川会員として活動。かながわシニア塾代表。日本中高年性教育研究会理事など要職を兼務。2006年上梓した『幸せを呼ぶ聞き上手』(神奈川新聞社)が本年「第2回かなしん自費出版大賞」優秀賞、「ふるさと自費出版大賞」優秀賞をダブル受賞。個人誌「きつつき」を毎月発行。

夫に先立たれ未亡人に…
それが、私の自立の一歩

藤本 2月に、ご著書『幸せを呼ぶ聞き上手』(神奈川新聞社刊)が、「ふるさと自費出版大賞」優秀賞篠崎延子さんとの対談写真 その1に選定され、神奈川新聞社主催の「かなしん自費出版大賞」優秀賞を受賞されたそうで、おめでとうございます。

篠崎 ありがとうございます。本を出させていただいたのは、多くの方の支えがあったからで、改めて今、感謝の気持ちでいっぱいです

藤本 「傾聴ボランティア」という言葉が新鮮ですが、どういう経緯でこの活動を始められたのですか。

篠崎 話は遡りますが、50歳のとき病気で夫に先立たれ、未亡人となりました。専業主婦でしたから、最初は「どうしよう…」と不安でしたが、少しして、「制約がなくなったのだから、これからは自由に生きよう」と思い直しました。ところがそう思った途端、兄夫婦と暮らしていた母がどうやら認知がおかしくなり、私が引き取ることになったのです。

藤本 お母様の介護というのはどんなものでしたか。

篠崎 ボケ始めは、周囲の人間が振り回され、感情的になるものです。次第におかしくなっていく母を「ボケている」とは言いながら、病気がそうさせているとは思えなくて…。

藤本 介護経験者に聞くと、「最初は単なる物忘れか、とぼけかわからなかった」なんてよく言いますね。

篠崎 物忘れや勘違いを指摘すればするほど本人は感情的になり、周囲の者を苛立たせ、悪循環になります。当時の私には介護の知識は全くありませんでしたので、イライラして邪険な対応をし、あとになって「かわいそうなことをした」と後悔してはやさしくし、そしてまた、「なんでこんなことするの!?」の繰り返し。

藤本 娘からしたら、複雑な思いなのでしょうね。

篠崎 セーターをズボンと思ってはこうとしたり、散歩に出て迷子になり、交番に「届けられて」いたり。あるとき玄関で服を脱いでいるので「何をしているの?」と聞くと、「お風呂」と答える母。扉を開けてヌードで外へ…と考えたら、腹が立つやら、情けないやらで、つい皮肉の一つも出てしまう。そんな日々でした。

藤本 どのくらい続いたのですか

篠崎 笑ったり怒ったり、約2年間の日々も、母が亡くなって終了。張り詰めていた心もしぼみました。

藤本 大変なご苦労でしたね。でも、そんな経験がすべて、その後の生き方につながっていくわけですね。

篠崎 緊張感のなくなった心身は、風にふわりと浮いてしまいそうでした。少しゆっくりしようとのんびり過ごしていたときです。知人が、開所したばかりの老人保健施設のボランティア受け入れ窓口の話を持ってきたのです。「私には荷が重い」と断るつもりで出かけると、理事長夫妻や事務局長らに引き止められ、帰りには「ボランティア・コーディネーター」をお引き受けしていたんです。今思えば、そこでの仕事の経験が、今の私をつくってくれています。

藤本 篠崎さんのお人柄を見込んでのことでしょう。慣れないお仕事は大変ではなかったですか。

篠崎 大変という言葉ではありませんが、不慣れさゆえの失敗はキリがなく、思い出すと恥ずかしいことばかり。施設の職員の皆さん、特に看護師さん、介護士さんたちはよくもまあ、私のようなど素人のおばさんに、さまざまなことを教えてくださったと感謝の気持ちでいっぱいです。

藤本 その後、次々と介護の資格を取得されたようですが、この世界に目覚めたのはなぜですか。

篠崎 ヘルパー2級、1級、さらに介護福祉士免許も取りました。大変ですがやりがいのある仕事。明るく献身的に働く介護士さんたちの姿にも感動し、本当に素敵な世界だと思いました。

藤本 介護の世界を「素敵な世界」と表現した方は初めてです。

一度入ったらやめられない
とても素敵な「介護の世界」

篠崎 施設にはいろんな人生を歩んできた方がいて、自分の知らない世界を見聞きすることができる篠崎延子さんとの対談写真 その2んです。お年寄りが目を輝かせたり、目を潤ませたりしながら昔を懐かしみ、人生のさまざまな断片を話してくれる。それは、石ころの中から小さな宝石を拾うような輝きに満ちています。

藤本 仕事でご年配の方に取材をさせていただくと、たいがいの方が「私には肩書きも何もない。人様に自慢できるようなことは何もない」とおっしゃいます。だから私は、生きてきたそのことだけで十分だと。おばあちゃんの手料理や夫の操縦法、子育ての失敗談も立派な情報で、そういうことを次世代に継いでいくことが大事なんですよ、と言うんです。

篠崎 雑談から哲学まで。ご年配の方の話はどれも味わい深く、心に残ります。あるとき一人の男性が、戦争のことをポツポツと話し始めたんです。どれくらいの時間だったでしょうか。「お風呂の時間ですよ」という言葉に席を立ち、私に「ありがとう」と言われたんです。話をしてお礼を言われたことはなかったので、妙に印象に残りました。そしたら、その方は入浴後にお亡くなりになってしまい…。つくづく考えたんです。「最後に話をしたのは私だったんだ。ご家族の方は戦争の話を聞いたことがあるのかな」と。もっと大切に話を聞かなければ、と思った瞬間です。

藤本 そう思えるところが、篠崎さんのやさしさであり、感性の素晴らしさなのでしょう。

篠崎 その後、ますますお年寄りとお話をする機会が増えました。話は面白いし、楽しいし。その上、相手は話しながら目に見えていきいきとしてくる。一方で、その姿は私の気持ちまで上気させてくれるのです。話を聞くことには素敵な循環があることを実感。この感動が、私に「傾聴」との出会いを与えてくれました。

藤本 改めて「傾聴」とはどのようなものなのでしょう。

「傾聴」とは高齢者の気持ちに寄り添い
心を傾けて聞くことです

篠崎 元気な高齢者がカウンセリングの基本を学び、悩みを持つお年寄りの話し相手として相談に乗るのが「シニア・ピア・カウンセリング」。日本では、高齢者への「傾聴ボランティア活動」ともいわれています。「ピア」は仲間、同士という意味を持っています。同じ世代で、同じ時代を生きてきたからこそわかり合える仲間意識があり、悩みを打ち明けるには、最適の相手なのです。

藤本 傾聴はどこで学べるのですか。

篠崎 30年ほど前に米カリフォルニア州で生まれた「シニア・ピア・カウンセリング」。その後全米に広がり、多くの実績を上げています。日本では2000年に、ホール・ファミリー・ケア協会が主催し、「シニア・ピア・カウンセラー養成講座」を実施。たまたま私はそれを新聞記事で知り、受講したのですが、今ではたくさんの傾聴ボランティアがいて、グループをつくるなどして活躍しています。

藤本 講座では、どのようなことを学ぶのですか。

篠崎 講議と、「ロールプレイング」「高齢者の身体と心の基礎的な知識」に分かれ、カウンセリングの基礎技能、高齢者自身の意識はどう変わっていくか、加齢とは、うつや痴呆とは何かなど加齢と心身の変化について、約3か月で総合的に学びます。最も大切なのは、悩みや不安を抱えるお年寄りの気持ちに寄り添い、心を傾けて「聴く」ことです。施設にいる方たちは、身体のことは聞かれても、ほかの話は全くすることがない。これでは、心を元気にすることはできません。

藤本 本誌「ヴィサン」のコンセプトも同じ。健康に生きるためには、毎日を楽しくいきいきと、心が元気になることが大切ですね。

篠崎 傾聴ボランティアをやっているのも、実は私のため。皆さんに元気や勇気をいただき、日々学ばせていただいています。

藤本 ご本にある傾聴のコツは、もっともと思うことばかりでした。普段からつい、自分の言いたいことが先になってしまう私としては、大いに学びとなりました。

篠崎 とんでもない。取材や対談などどれほど大変なお仕事だろうと感心し、資料も拝見しました。傾聴も取材も、人間性の問われるスキルといえるでしょう。大切なのは、自分の感性を磨くことだと思います。

藤本 私が感性の大切さに気づいたのはつい最近。孫が生まれてからのことなんです。子どもはすごい。感性の生き物ですからね。

篠崎 ある意味、お年寄りも同じ。感性のかたまりのようなものです。

藤本 「老いることでかえって個性が豊かになっている」というフレーズもありましたね。

篠崎 長い人生で培ってきたものがエッセンスになり、個性豊かに人柄そのものを見せてくれるのです。

藤本 夫の両親も含め、親族は他界しましたが、幸い仕事で出会わせていただいている人生の諸先輩方を大事にしなければなりません。考えたら「傾聴」は、それぞれの地域や家庭で生かしていけるものですよね。

篠崎 基本のスキルは活きると思いますが、親子や夫婦間では、感情が先走ってしまうので、意外に難しい。最低限、相手の話をさえぎらず、まずはよく聴くことです。

藤本 現在は、どのように傾聴ボランティア活動をしているのですか。

自分のために続ける
ボランティア活動

篠崎 自分の空いた時間で、施設や在宅個人のお話し相手をしています。お年寄りの中には、「生きていてもしょうがない。早くお迎えに来てほしい」なんて言う人がいますが、実際はその逆で、「死にたくない。誰か気持ちを察して」と訴えているのです。おいしい食事、快適な入浴、ベッドなど環境はもちろん、お年寄りの心をいい状態に保ってあげられるといいのですが…。

藤本 傾聴ボランティアは、これからますます増えていくのでしょうね。今後の活動について教えてください

篠崎 テーマは「傾聴」「高齢者介護」「セクシャリティー」など、シニア世代が心華やいで生きるための講演やワークショップ活動を進めていきたいと思っています。

藤本 篠崎さんご自身のこれからについてはいかがですか。

篠崎 50歳を過ぎ、私の人生は大きく変わりました。というより、変えようと思ってやってきました。ある意味、母が反面教師です。90歳を前に逝ったのですが、最期まで「私の人生は何だったの!?」と恨み、辛みを口にしていました。親戚や他人のために人生を犠牲にしてきたと。でも私は、母のような生き篠崎延子さんとの対談写真 その3方はしたくない。これからも、恨み、辛み、妬み、憎しみなど、「み」のつくものはダメ。楽しく、悔いのない人生を生きたいですね。

藤本 いろいろご苦労のあったお母様も、最期は娘さんに見守られ、天国に行くことができたのですよね。とても幸せなことだと思いますよ。お母様は、自分の生き様を見せ、生き方を示してくださったのでしょう。篠崎さんの第二の人生も、これからですね。今日は人生の先輩として、また傾聴のご専門家として、ためになるお話をありがとうございました。これからも地域の皆さんのために、お元気でご活躍ください。

対談を終えて

老人ホームや介護施設、個人のお宅に出向き、お年寄りの孤独や不安に耳を傾ける篠崎さん。最初は誰かのためになればと始めたボランティア活動だったが、いつしか自分がお年寄りから元気をいただいていることに気づく。

「傾聴」とは相手の気持ちに寄り添って、ひたすら聴くこと。それには自分から心を開き、相手が安心して話せるように聴いてあげることが大事だと。まさに信頼と尊敬の念を込めたもの。家族の会話、友だちとのおしゃべり、組織や地域での人間関係…。人とのコミュニケーションが難しいといわれるこの時代に、求められるスキルである。
篠崎さんは、「きつつき」という個人誌を、通信として毎月発行している。テーマは「行き当たりばったり」というのが、きつつきおばさんこと、篠崎さんらしい。そこには、出会った人々や起こった出来事、見聞きしたものの感想など、その時々に感じたことがさり気なく書かれている。文章は軽快で小気味よく、また温もりがあり、輝いている。「元来、書くことが好きで苦にならない」という篠崎さん。2冊目の本の出版も、そう遠くはないだろう。
印象的だったのは、「この仕事をして一番の成果は、死への恐怖がなくなったこと」。その言葉の深さに、篠崎さんの人としてのやさしさと強さを感じた。私も人の話に心を傾けられるような、豊かな人間を目指したい老人ホームや介護施設、個人のお宅に出向き、お年寄りの孤独や不安に耳を傾ける篠崎さん。最初は誰かのためになればと始めたボランティア活動だったが、いつしか自分がお年寄りから元気をいただいていることに気づく。
「傾聴」とは相手の気持ちに寄り添って、ひたすら聴くこと。それには自分から心を開き、相手が安心して話せるように聴いてあげることが大事だと。まさに信頼と尊敬の念を込めたもの。家族の会話、友だちとのおしゃべり、組織や地域での人間関係…。人とのコミュニケーションが難しいといわれるこの時代に、求められるスキルである。
  篠崎さんは、「きつつき」という個人誌を、通信として毎月発行している。テーマは「行き当たりばったり」というのが、きつつきおばさんこと、篠崎さんらしい。そこには、出会った人々や起こった出来事、見聞きしたものの感想など、その時々に感じたことがさり気なく書かれている。文章は軽快で小気味よく、また温もりがあり、輝いている。「元来、書くことが好きで苦にならない」という篠崎さん。2冊目の本の出版も、そう遠くはないだろう。
印象的だったのは、「この仕事をして一番の成果は、死への恐怖がなくなったこと」。その言葉の深さに、篠崎さんの人としてのやさしさと強さを感じた。私も人の話に心を傾けられるような、豊かな人間を目指したい。

(藤本裕子)

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