藤本 そうですか。ありがとうございます。描くときは何も考えないので、自分ではわからないんですけど。
高杉 そうですか。ありがとうございます。描くときは何も考えないので、自分ではわからないんですけど。
藤本 それと高杉さんの描かれる観音様には、いろんな表情があるんですね。やさしさだけでなく、力強く見守る感じのものとか…。
高杉 じっと話を聴いてくれたり、微笑んだりする感じのものや、しっかり見つめてくれたり、そばに一緒にいてくれる感じがするものだったりと、それぞれ微妙に違います。
藤本 そもそも高杉さんが、観音様の絵を描くようになったきっかけは、何だったのですか。
高杉 初めて描いたのは、9年前のこと。それまでに起こった出来事のどれか一つが欠けても、出会った誰か一人が欠けても、あの日、観音を描くことはなかったと思うのです。時の流れと人の流れの中でごく自然に観音を描くシーンにたどり着いたというのが実感ですね。直接のきっかけは友だちです。まず友だちの友だちに墨絵画家の個展に誘われ、私が別の友人もお連れすると、その方が先生と意気投合。後日、今度は私が友人のお供で行きました。そして友人がお地蔵様を描いたとき、「私だったら観音!」とフッと思ったんです。もし、友人が花を描いていたら、観音は思い浮かばなかったかもしれない。そう思うと、こわいくらいに一つひとつの出来事に意味があり、つながっていたのです。
藤本 どんな感じでしたか。
高杉 すごい手応えがありました。「今、私の心臓は観音を描くためにドキドキと動いてくれている」と思いましたね。あどけなくて無垢な観音が、この掌の中から生まれたんです。パズルの最後の一コマがピタッとハマったみたいに、私、その瞬間から観音を描く人になってしまったんです。もう水を得た魚状態で、その夜から夢中で描き続けました。
藤本 もともと墨絵の経験があったわけではないのですね。
高杉 全くありませんでした。ただ何十年とブランクはありましたが、子どもの頃に書道や油絵に熱中した時代がありますので、墨や筆には多少、慣れていたかもしれませんね。通ずるところがあったのかとも思います。
藤本 道理で、基礎となるものはあったのですね。とても初歩的な質問ですみませんが、観音というのは女性でしょうか、男性でしょうか。
高杉 男性と女性を超えた存在であるといわれています。でも私の描く銀河観音は、とても女性的だと思います。
藤本 では「銀河観音」とは、どんな観音なのでしょうか。
高杉 観音画を描き始めてから半年後のある夜、渦巻きの銀河に立つ観音が夢枕に現われたんです。その日も遅くまで描いていたのですが、描き終わってベッドに入るのを待っていたかのように突然のことでした。これが夢枕というものか!と思いました。そして、すぐに消えてしまうのだろうと思い、しっかり受け止めようと見つめました。時間は思ったよりたっぷりとあって、この間に自分の描いている観音の意味と名前を知らされたんです。平和と、本来の自分を呼び覚ますことを願っての銀河観音だということを…。静寂で美しい、祈りの世界でした。
藤本 「銀河観音」は高杉さんに現われた観音だったんですね。この絵を象徴する素晴らしい呼び名ですね。
高杉 私は、銀河の彼方から私たちを見守る存在があるということを知らされた者なのだと思います。この日を境に、それまで誰にも話していなかった絵のことがクチコミで広がり、個展をさせていただくようになりました。
藤本 どちらでされたのですか。
高杉 地元の横浜では数回やらせていただきました。京都・鎌倉・銀座、前回は鹿児島でした。海外はベルギーや中国での国際展と、サンフランシスコの個展がありました。春にはアトリエのあるZAIM(横浜市中区)のフェスティバル、秋には熊本の予定です。