藤本 シナリオライターから監督へ転身される経緯を、教えてください。
千葉 シナリオは自分のものであっても、監督が受け取ったときからは手を離れて演出家のものになります。それに、半端なフィクションを加えず、そのまま作品にできたらどんなに面白いだろう。つまり、ノンフィクションでしか描けない世界があることを感じたのです。教育映画や産業映画も盛んになってきた時代で、短編映画やドキュメンタリー映画をつくるようになったのです。
藤本 監督の作品には、第二次世界大戦を扱った『豪日を架ける―愛の鉄道』、国際養子を描いた『こんにちわ地球家族』など、社会的なメッセージを持ったものが多いようですね。昨年話題になった「赤ちゃんポスト」も、まだ日本では存在が知られていなかった2004年に、すでに撮られていたのですね。
千葉 そのとき取材に同行された熊本の医師が、昨年5月、日本で「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を実現させたのです。ドイツにあった「ベビー・クラッぺ」(捨て子ポスト)は、予期せぬ妊娠や望まれない出産で苦しむ母子の存在、増え続ける十代の人工中絶に対するひとつの取り組みです。日本における生命尊重活動は、1981年に講演で来日したマザーの呼びかけが大きな動因となっていて、そうした20年余の積み重ねから生まれたものです。
藤本 「赤ちゃんポスト」は、捨てることを助長するのではないかなど、世論もいろいろだと思いますが…。
千葉 ヨーロッパでは長い歴史があり、実際にたくさんの捨て子がポストによって救われています。来日されたマザーが、「日本は美しい国です。しかし、胎内の幼い生命を葬っても平気というのは、心の貧しい国といわねばなりません」と中絶についてコメントしたことは、日本でも大きく報道されました。
藤本 豊かな日本ですが、今は、子どもから大人まで、みんな心を失ってしまっているように思えます。
千葉 現代のさまざまな問題は、家庭の中の愛の欠如にあると思います。「子どもは神様からの贈り物。子どもとは本来、愛し愛される存在としてこの世に送られてくるもの。愛は、まず家庭から始まるのです」と、マザーも言っています。
藤本 最後に、現在製作中のアニメ映画『こちらたまご 応答ねがいます』(今春公開予定)のお話を
聞かせてください。
千葉 熊本で7男3女の子の母親、岸信子さんが、テレビのワイドショー番組を見たことに端を発します。援助交際をしているという、あどけない笑顔の女子高生が、「1か月のこづかいは10万円では足りない。妊娠したら堕ろせばいいじゃない」と話すのを見た岸さん。「命はそんなに簡単なものではない。年頃の娘たちにも生命の神秘や子育ての感動を伝えたい」と一筆入魂。朝までかけて、一気に書き上げたそうです。
藤本 受精や生理、陣痛のことなどがわかりやすく書かれているので、これをきっかけに、親子で生命の誕生について話せたらいいですね。
千葉 お母さんのお腹の中にある受精卵=「たまご」が、主人公であるお兄ちゃんと交信しながら、徐々に成長していく過程を描いていきます。楽しいストーリーの中で命の大切さを伝えていけたらと思っています。