スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

心と体の健康はまず歯の健康から 神奈川県歯科医師会会長 高橋紀樹さん

秦野市の高橋歯科医院院長・高橋紀樹さんが、このたび神奈川県歯科医師会第18代会長に就任した。県民に「咬み合わせ」の大切さ、「口腔管理が全身の健康維持につながること」などを伝え、予防医療の推進をはかり、地域の中での歯科医院の役割を示していくという。その内容と科学的根拠について伺った。

 

神奈川県歯科医師会会長 高橋紀樹さん
たかはし としき  1941年東京都生まれ。1965年日本歯科大学卒業、1969年同大学院卒業、歯学博士号取得。日本歯科大学細菌学講師を経て、1982年秦野市に高橋歯科医院を開院(秦野伊勢原歯科医師会所属)。1993年神奈川県歯科医師会理事に就任、1999年から4期8年の間、専務理事を務めるなど県歯科医師会の重要なポストを歴任する。また現在、吉林大学口腔医学院(中国)の客員教授も務めている。今年4月から会長に就任。任期は2年間。

http://www.dent-kng.or.jp
http://www.takahashi-dentalcenter.com

痛くなってからでは
もう手後れだよ

藤本 このたびは、社団法人神奈川県歯科医師会の第18代会長にご就任おめでとうございます。

高橋 8年間専務理事を務めてきて、歯科医師会の役目は理解しています。秦野の歯科医院は後継者も育ち、歯科医師会の仕事に専念していける環境も整ったこともありまして(選挙に)出させていただきました。

藤本 これまでのご経験を評価されてのことなのでしょうね。

高橋 私にはリーダーとしての資質はありませんが、優秀なブレーンに支えられていますので、これからも皆と相談しながらやっていこうと思っています。

藤本 改めてお尋ねしますが、歯科医師会とは、どのような役割を担っていらっしゃるのですか。

高橋紀樹さんとの対談写真 その1

高橋 県内33の地域歯科医師会を取りまとめる公益法人としての使命を全うし、県民の皆様に良質な歯科医療を提供するため、歯科医師会会員の経営や生活の安定をはかっていくこと。会員教育にも力を注いでいく必要があるでしょう。プラス、歯科医療というもののとらえ方を変えていく必要があると認識しています。

藤本 それはどういうことですか。

高橋 たとえば藤本さんは、どんなときに歯科医院に行きますか。

藤本 昔から歯が弱くて何軒もの歯医者さんに通いました。でもいつも、むし歯ができて歯が痛くなってからですね。

高橋 ほとんどの人が歯医者に行きたくないから、つい後回しにする。

藤本 その分、歯が悪くなるという悪循環ですね。

高橋 そうなってしまう理由は簡単。むし歯や歯周病では、命に別状がないという思い込みがあるからです。

藤本 私も、歯の健康と身体全体の健康が大きく関わり合っていることを知ったのは、ごく最近です。

高橋 正しい情報が、必要な人のところに届いていないようです。

藤本 そのあたりのことをもう少し教えていただけますか。

高橋 噛むという行為は、食物を細かく砕き、唾液と共に飲み込むための消化運動の一部と考えられてきましたが、実際は全身の健康維持に大きな役割を果たしていることがわかってきました。神奈川県歯科医師会では、80歳で20本の歯を残そうという「8020運動」の一環として、高齢者よい歯のコンクールを行っています。応募者は、高齢になっても多くの歯が残っている方ですが、多くの歯を残存し、その歯が機能している方々は姿勢も運動能力もすぐれ、ボケもなく、私たちの世代から見ても驚くほど若々しいのです。

藤本 自分の歯で噛むという行為には、どんな効果があるのでしょう。

高橋 噛むという刺激は脳に伝達され、脳の血流を増やし、脳の機能を活性化します。疫学的な研究によっても歯牙喪失がアルツハイマー型認知症の危険因子であることが示されています。また、噛むということは食べ物の物性が歯を通して顎や全身に加えられるということです。

藤本 私も肩こりや腰痛が多く、以前、歯の咬み合わせが悪いことが原因といわれたことがあります。

高橋 腰痛や肩こりのほか、不定愁訴、自立神経系、内分泌系、免疫系にも影響が見られます。ですから、自分の歯で咀嚼することが理想ですが、やむを得ず失った歯は人工的に補うことも大切です。

藤本 入れ歯やインプラントなど、歯科医療の技術進歩も目覚しいようですが、その情報もあいまいで、正直よくわかりません。

高橋 歯科治療は人によってケースバイケース。良い悪いを一口に言い切れるものではありません。いずれにしても、人工的に補ったものでは、咀嚼する力も全身への影響も劣りますが、欠損のままにしておくよりはるかに効果はあります。

藤本 具体的な症例があれば教えてください。

高橋 車いすに乗っていた人が立ち上がることができた例。徘徊していた認知症の人に義歯を入れ使用させたところ、約2か月後に自分の名前を言えるようになり、さらに時計を読むことができるようになった例など、数多く報告されています。

藤本 歯を残し、その歯で噛むことがすべての健康に関連するのですね。

高橋 それに加えて、医療費を削減することにもつながります。実際に70歳以上で8020運動を達成している方と達成していない方との医療費を比較すると、8020達成者のほうが明らかに低い医療費だったと報告されています。

藤本 国の医療費削減問題で、保険診療と自由診療について議論されているようですが、歯科医療を充実させれば医療費を削減することができるのですね。

早期治療で健康な歯を保つこと
若々しい人生のために

高橋 歯は自然治癒しない臓器なので、むし歯にしないことが一番ですが、むし歯も初期に治療すればするほど、その歯の寿命は長くなります。

藤本 放っておいたことで病状が悪化し、結果的に歯を削ったり、神経を抜いたりした苦い経験があります。

高橋紀樹さんとの対談写真 その2

高橋 むし歯の治療は早期発見、早期治療が大原則。痛まないからといって初期のむし歯を放置すると、来院したときには重症化しています。中には、慢性化して自覚症状のない場合もあり、そのような歯を放置すると、病巣感染といい、口腔とは全く関係のない遠隔臓器に二次的な疾患を成立させることがあります。

藤本 たとえばどんな病気ですか。

高橋 心臓病や腎臓病など、数多く挙げられます。また、最近私どもの医院に問い合わせがあった例では、手のひらや足の裏に水疱や膿疱ができる皮膚病(掌蹠膿胞)と病巣感染の関連性を調べる検査依頼です。そのほか、低体重児の出産や早産なども因果関係があることが、研究でわかってきています。

藤本 高齢者に多い病気への影響があれば、教えてください。

高橋 高齢者の直接的死因として多い肺炎は、口腔内微生物が誤って気道内に流入してしまうことによって起きますし、骨粗鬆症の外因の第1位は、歯周組織に生息する微生物の持っている内毒素であることが判明しています。

藤本 さまざまな全身疾患のおそれがあるのですね。すみません、今さら根本的な質問で恐縮ですが、そもそも、むし歯はどのようにして起こるのですか。

高橋 むし歯も歯周病も結核やコレラと同様、微生物が原因で発症する感染症です。通常、感染症というと、病因となる微生物が外から生体内に侵入し、増殖し、発症するケース。つまり外因感染を想定しますが、口腔感染症の特徴は内因感染といって、口腔内に生息する常在微生物によって感染が成立します。口腔内には多種多様な微生物が常在し、微生物の増加、微生物叢のバランス変化によってむし歯や歯周病が起こります。この予防に歯磨きを推奨する理由は、常在微生物叢を崩さず、絶対量を減らすことが大切だからです。

藤本 それらは、日常の歯ブラシ程度で管理できるものなのですか。

高橋 正しい歯磨きや甘い物をとりすぎないなど、食生活への配慮を含む自己管理(セルフケア)、家庭内管理(ホームケア)は基本ですが、歯周ポケットや歯間にたまった歯垢を、完璧に取り除くことはできません。

藤本 やはり、歯科医など専門家によるケアが必要なのですね。

高橋 歯科医師や歯科衛生士による適切な予防処置。たとえばフッ化物応用や予防填塞(フィッシャーシーラント)、歯石除去や歯面清掃など、プロフェッショナルケアを組み合わせて行うことが望ましいですね。

自由に選べる歯科治療それぞれの欠点利点を示し
本人に納得のいく説明を

藤本 かかりつけの歯科医があればいいのですが、「いい歯医者さん」と出会うのも容易ではありません。

高橋 保健所や市町村保健センターでも定期的に歯科健康診査・保健指導や予防処置を受けられますが、自分にとって「いい歯科医」を選ぶことも大切です。

藤本 その定義は難しいと思いますが、高橋歯科医院としてはどのようにお考えですか。

高橋 「インフォームド・コンセント」という言葉が一般化され、現場では常に説明と同意が求められています。患者の「なぜこの治療をするのか」という問いに対し、医師はリスクまでを含めた説明をし、患者はそれを知り納得したうえでの選択をする。これが一番だと思っています。

藤本 選択を迫られても、医学的、技術的説明では理解できないことも多いような気がします。

高橋 「家族だったら、こう治療します」と言えばわかりやすいですね。

藤本 やはり根本の信頼関係が必要なんだと思います。それさえあれば「先生に任せます」となるはずです。

患者と医師の関係を超え
人間同士のつきあいを

高橋 歯科医学の進歩は著明で、歯科医療にも多くの分野で反映されています。しかしそれを優先するあまり、歯科医師と患者という基本的関係より、歯科医師と疾患との関係が先行される傾向が見られます。ですから新入会員には研修の場で、歯科医師が医療の対象とするのは「疾患」ではなく、疾患を持った「人」であると、強く伝えるようにしています。

高橋紀樹さんとの対談写真 その3

藤本 最近は内科などでも、患者の顔を見ないでパソコンの画面ばかりを見ている先生もいます。情報化社会の問題というよりは、人間性の問題なのかもしれません。

高橋 ええ。そこさえ徹底できていれば、医療トラブルも起きません。

藤本 最後になりますが、先生の夢を聞かせてください。

高橋 当面の目標は、県歯科医師会会長としての務めをしっかりやることですね。行政と連携をとりながら、障害者やHIV感染者のための歯科医療ネットワークづくりなど。実効性のある事業を、ますます充実させていきたいと思っています。

藤本 高橋紀樹という、ひとりの人間としての夢はありますか。

高橋 生涯現役。死ぬまで現場でがんばって、健康なままバタンと逝きたいですね。

藤本 それは理想ですね。お忙しい毎日だと思いますが、無理をされない程度に、ますますのご活躍を期待しています。私たちも『ヴィサン』誌面を通して、歯と健康についての情報を発信していけたらと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。今日はとてもためになるお話をありがとうございました。

対談を終えて

前号の特集で取り上げた「認知症」が、歯の咬み合わせと大きな関係があると聞き、驚きました。加齢とともに衰えていく身体の機能ですが、口腔管理によって最低限におさえることができるというのは、「もう歯はあきらめた」という高齢の皆さんにとっては朗報です。

エピソードで印象的だったのは、もともと細菌学を専攻し、その道のスペシャリストを目指していたため、臨床医になるつもりはなかったという高橋先生。1972年当時、新潟に新設された歯学部(日本歯科大学)から助教授としてお呼びがかかったものの、北陸新幹線のなかった時代。新潟までは遠すぎるという理由で歯科臨床の道を選び、高橋歯科医院を開設されたそう。もし新幹線があったら、今日の会長はなかったのですね。

現在は息子さんと一緒に診療にあたり、別フロアでは奥様が矯正歯科治療を専門でなさっています。地域では「歯のホームドクター」として活躍。三世代にわたり通われている患者さんも多いと聞きました。地域に根ざした歯科医院の模範として、歯科医師会会員の皆様が学ぶことも多いのでしょう。

さすがに高橋先生、きれいな歯並びの笑顔がとても素敵でした。

(藤本裕子)

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