スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

スペシャル対談 藤本裕子が各界トップに迫る!

明日のための音楽を届けたい  作曲家・音楽プロデューサー 中村幸代さん 

美しく洗練されたメロディーに情感溢れるアレンジや、スケール感のあるオーケストレーションで、大自然をテーマにした音楽制作には欠かせない存在の中村幸代さん。プライベートでは1児の母となり、感動体験を曲づくりに生かす毎日。音楽を通して伝えたい「思い」などを伺った。

 

作曲家・音楽プロデューサー 中村幸代さん
なかむら ゆきよ  1967年神奈川県鎌倉市出身。17歳から作曲を始め、1989年『YUKIYO』でアルバムデビュー。1998年長野オリンピックでは室内競技表彰式テーマ曲を担当して国際的に注目を集める。その後、数々のドラマやスペシャル番組の音楽プロデュースを手掛け、多数アーティストのアレンジ&プロデュースを行う。紀行やドキュメンタリー番組に出演し諸国を訪問、NHK「新日曜美術館」の司会など活動は多岐にわたる。現在もオリジナルライブを開催するほか、ピアニストとしてのコラボレーションステージも多い。プライベートでは、環境問題や児童問題に積極的に取り組む一児の母。『soleil』ほかアルバムも多数。
http://www.yukiyonakamura.com

壮大な宇宙から感じた
「命」や「愛」を音楽にして。

藤本 ご出身は鎌倉だそうですが、いい所ですね。中村幸代さんとの対談写真 その1

中村 はい。生まれは大船ですが、育ったのは長谷の近くです。いつもどこかで大仏様が私を守ってくれていました。小さい頃はよく姉と一緒に、路地裏を抜けて海まで出たものです。夕方にはひぐらしが鳴いて、都会にはない風情がある町でしたね。

藤本 現在はテレビやラジオ、ライブと大活躍ですが、音楽家になろうと思ったきっかけは何ですか。

中村 小学3年生のときに学校の課外授業で初めてプラネタリウムに行ったんです。たくさんの星を見て、「宇宙は広いんだなあ。なんで地球にだけ命があるんだろう。命は何にも代えられない宝物なんだな」って感動してその夜は眠れなかった。その体験が、今の私をつくっています。

藤本 壮大な宇宙を感じた8歳の少女は、そのころどんな毎日を送っていましたか。

中村 仲の良い友だちが通っていた音楽教室に一緒に通い始めた頃です。体が弱くてスポーツはからきしダメ。宇宙物理学の本を読んだり、音楽を聴いたりしていましたね。

藤本 デビューは早かったのですね。

中村 20歳のときでした。ところが23歳でスランプというか、結果的に、それが私にとっての転機になったわけですが、「何をもって人を感動させるのか」「人に伝えたいこと、表現したいものは何か」などと考えて、もやの中に入り込んでしまったのです。

藤本 表現者がぶつかる壁ですね。

中村 プロになったものの、私はクラシックピアノから始めたのではなかったので、「13歳からピアノをやるやつなんかいない」と言われ、コンプレックスに陥ってしまったのです。

藤本 厳しい世界なのでしょうね。やめようと思ったことはないですか。

中村 ないですね。音楽が好きで、音楽を通して人と共感したいんです。たとえば私の身の回りに起こった祖母の死や愛犬の死など、少しの経験から「命の大切さ、人が与えてくれたものの大きさ」を実感するようになると、ますます「命」とか「愛」を表現していきたいと思えたのです。

藤本 今の時代に、絶対必要なテーマだと思います。これまで、たくさんの映像音楽やドラマのテーマソングをつくられていますが、どのように曲づくりをされるのですか。

中村 台本やVTRを見せてもらいますが、ドキュメンタリー番組は、企画書やプロデューサーの言葉からイメージをつくることが多いですね。楽器を前に、イメージを集中し、自分の内側から聴こえてくる音をつないでいくという作業です。

藤本 『子連れ狼』や『はみだし刑事』などテレビ音楽も多いですね。でも、中村さんのイメージと時代劇や刑事モノって合わない感じがします(笑)。

中村 「人の心」を表現するという意味では、みんな同じです。どんなときも、主人公のことを考えながらイメージしていきますね。

藤本 「Love&Peace」が中村さんのテーマだと伺いましたが。

中村 日本には今は戦争はないかもしれませんが、日々、心ない戦いが起きていると思うんです。私は中学校のときにいじめにあったことがあって、そのときに受けた傷をどこかで引きずっているのかもしれません。

藤本 そんな経験が…。

中村 両親はどちらかといえば完璧主義で、優等生を常に求められていたんです。成功すれば喜んでくれますが、失敗したときなんか、めちゃくちゃ家の中が暗いんですよ。

藤本 それはちょっとつらいですね。

中村 反省しているのに、口をきいてくれない。「よくがんばったねって、どうして言ってくれないの?」って。「もっとがんばらなきゃ」と、親の期待に応えようとする自分がいる一方で、いじめられている現実があっても親にも言えない、家庭にも学校にも居場所がないというような、そんな原体験があるんです。

藤本 だからこそ、心安らかに命をつないでいくことの素晴らしさを、音楽を通して伝えたいのですね。

中村 さりげなく感じてもらいたいんです。音楽を聴いて好きな場所、好きな人、そのまま愛しいと思えることを思い出してもらうことができたら、きっと地球も元気になっていくんじゃないかと思えるんです。

藤本 今日は息子さんをお連れですが、お名前と年齢を教えてください。中村幸代さんとの対談写真 その2

中村 2歳半で、「康介」といいます。

藤本 「こーちゃん」ですね。どんな子育てをされていますか。 

中村 許される限り職場にも連れていきます。最近は子ども同士の関わりを持たせたいと、児童館や体操教室に連れていくんですが、彼はみんなの輪の中に入っていけない。端っこで見ていたり、下を向いて何かを拾っていたり。なんででしょう…。

藤本 彼の個性ですね。親としてやきもきする気持ち、よくわかりますが、素直で純粋なだけですよ。

中村 そうですね。人の目なんか気にせず、自分のやりたいまま、本能のままに動いている姿を見ていると、マイペースというか、彼には彼の世界があるんだなあ。ゆっくりでいいから好きなものも見つけていってほしいなあって、心から思えるんです。

藤本 私にも孫がいますので、すごくわかります。でも私の場合は、自分の子育てのときはいっぱいいっぱいで、何もわかりませんでした。

中村 私自身、今まで肩肘張ってきたところがありましたが、それが不思議となくなって、素のままの自分でいいのかな。人と比べるのではなく、私がいいと思うものをそのまま音楽に託してみようという気持ちになれた。これは息子のおかげです。

藤本 お母さんになって、音楽も少し変わったのでしょうか。でも、子育てと仕事の両立は大変でしょう。

中村 毎日が時間との戦いです。でも、この子はまだ小さいけれど、私のことや、いろいろなことが、実はよくわかっているんじゃないかなと。

藤本 どういうことですか。

中村 仕事のとき、ある方に息子を預けたんですが、「こーちゃんがね、ママってかわいそうって言っていたよ」って。「何で?」って聞くと、「ママ、忙しい」って。またある日、康介がふと「ママ、大丈夫?」って言うんです。もうびっくりしました。

藤本 子どもは全部わかっていると思いますよ。ママのことを誰より感じているのでしょう。

中村 本当にそうですね。日々、成長していく姿を見ていると、毎日が感動です。母親になったからこそ、見えてくるものがあり、それが今の曲づくりにも影響しています。

藤本 母親は、子どもにとってはまさに宇宙のような存在です。きっと母親になられたことで、さらに深く人々の心に伝わるものを発信されるでしょう。

中村 「幸せ」の価値観が変わってきたんですね。『ヴィサン』は健康情報誌ですが、健康とは、自分の中で日々、生きている実感を持つことだと思います。アルバムの『ソレイユ』は子育て中のお母さんたちに向けてつくられたそうですね。中村幸代さんとの対談写真 その3

藤本 私自身、子どもが早産で2か月も早く生まれてしまい、生後間もなく締め切りに追われ、搾乳しながら曲をつくるというつらい時期があったんです。その仕事のあとはしばらく育休をもらって子どもと2人で過ごしましたが、これがまたどうしようもない孤独感とのたたかいで。自分は何をやっているんだろう。部屋の片隅でおっぱいをあげている自分のことを神様は見てくれないって。

中村 わかります。私にもそんな時期がありましたよ。

藤本 育児雑誌の離乳食のつくり方を見てつくっても、子どもは全然食べないし。ほかの子と息子を比べては落ち込んで、気持ちが焦るばかり。ピリピリしている自分がいましたね。

中村 子育て中の母親たちの多くが感じていることです。

藤本 これからの音楽活動について教えてください。

中村 今はやるべきことがある幸せを感じています。母親になって社会を見れば、悪いニュースばかりで、将来が不安です。多くの人たちが肉体も精神も疲れてしまっています。もっとみんなが自分の価値感に自信を持って、自分らしく楽しく生きていける世の中になればって、本当に思います。だからこそ、一人ひとりに寄り添うことのできる音楽を、私なりにつくっていけたらと思います。

息子と一緒の感動体験が一番の健康法ですね。

藤本 健康面で気を配っていることはありますか。

中村 やはり母親になってから、食事が変わりました。栄養や食材にも気を遣うようになりましたね。子どもには魚や野菜を食べさせたいですし、ちょっと高くても、有機野菜を選ぶようになりました。

藤本 お料理もなさるんですか。

中村 時間がないので凝った料理はできませんが、コンビニ弁当やレトルト食品はなるべく避けるようにしています。ちなみに今朝は、白いごはんに納豆とオクラを混ぜて食べました。息子が大好きなんです。

藤本 納豆とオクラなんて、渋いですね。でもすごく体によさそう。

中村 それから、歩くことも健康の秘訣です。

藤本 歩く時間などあるのですか。

中村 息子を連れて買物したり、散歩したり。ベビーカーを押して一駅くらいは歩きます。早く家に帰っても息子の遊び相手をさせられるわけですから、それなら歩いたほうが息子も喜ぶし、健康にもいいかなって。

藤本 私は滅多に歩きませんが、たまに歩くと、今までにない出会いや発見がありますね。

中村 そうなんです。かわいいワンちゃんと出会ったり、お月様に感動したり。この前は、とてもきれいな夕陽に、康介が感動していました。そして、その息子の感動している姿に私も感動するんですね。いろいろな風景も見れるし、親子でさわかな気分になれる、最高の健康法です。

藤本 これからのご予定は。

中村 間もなく始まるテレビドラマ『桃太郎侍』のオープニングと劇中歌が決定し、製作中です。また、8月には新しいアルバムが予定されています。

藤本 どんな感じの曲になるのか、こっそり教えてください(笑)。

中村 和と洋をミックスした、時代劇っぽくない曲ですね。人間の喜怒哀楽がテーマになっています。

藤本 楽しみですね。さて、最後になりますが、中村さん流の素敵な生き方について聞かせてください。

中村 私自身が弱くて、まだまだだなと思います。でも人間は、いろいろな扉を持って生まれ、いろい中村幸代さんとの対談写真 その4ろな世界、いろいろな出会いがあることを息子から学びました。そして私の場合、今日もそうですが、藤本さんの一言ひとこと、日々の生活の中で目にした文章の一節や一枚の写真など、そのすべてが曲づくりや楽器の演奏に影響するんです。「人生を生きる」というより「生かされている」のだと、つくづく思います。だからこそ、これからも一歩ずつ前を向いて歩いていきたいですね。

藤本 中村さんのこれからが楽しみです。ぜひがんばってください。今日は本当にありがとうございました。

対談を終えて

「音楽を通して、人と共感したい」という中村さん。小さい頃から自分の感性を信じ、素直に生きてきたからこそ、今、音楽家としての才能が花開いたのだろう。 
美しく透明感のある中村さん。ナイーブで繊細なイメージとは裏腹、彼女の芯にある強いエネルギーが無限に放たれているのを感じる。最新アルバムタイトルの『ソレイユ』とは仏語で「太陽」や「ひまわり」をいうが、彼女自身が太陽に向かってまっすぐ立っている「ひまわり」のよう。
「命」や「愛」をテーマにした音楽は、幼い頃から生活の中で感じてきたことを、あるがまま表現したもの。大切なものが失われつつある、今の時代の危機感を、誰より感じているに違いない。
そのことをより明らかにさせてくれたのが、まさに「子育て」だった。小さな命を産み育てる中で感じることすべてが、中村さんの音楽の中で生きている。子どもの成長とともに、彼女の中にある「感性」が蘇っていくような気がして、私の心も高鳴った。こーちゃんの存在は偉大だ!

(藤本裕子)

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