清野友義の絵本暮らし抄 絵本を通して子育てや人生を考える
泣く子も黙る絵本の力
子どもだって喜怒哀楽もあるし、好き嫌いもある。大人だって同じである。たとえばあまりの酒好きは、酒の話だけでもうれしそうになる。誰だって、人から笑われるくらい好きなものはある。絵本の嫌いな子どももいれば、酒の嫌いな大人もいる。要は何事も男女とか年令とかおよそ職業などでは決めつけないことだ。かつて絵本が大好きな大人がいることにびっくりした私は、なんと愚かだったかと思い出す。
ある昼下がり、特急電車内での出来事だ。背中におんぶされている子どもが泣き叫んでいる。いつまでも泣き止まないので母親は周りにも気遣い、困り果てていた。次の駅までは10分以上はある。私はそうっとかばんの中から、たまたま持っていた『あつおのぼうけん』(田島征彦・作)という障害を持つ少年の冒険話の絵本を持ち出し「ほうらね、ほうらね」とめくってみせた。ページをめくるだけだが、子どもは瞳を見開いて泣き止んだのだ。
やっと次の駅に停車。母親は「ありがとうございました!」と言い残し、急いで下車した。親にとっては魔の時間。子どもには興味津々のあっ!という間の時間だったろう。絵本も子どもも不思議だね。







