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布えほんが誕生した 「30年以上前のことですから、今のように、地域に図書館がない時代です。子どもたちに絵本の読み聞かせをしてあげたい、という単純な思いでした」。
団地の文庫(集会所の図書室)で読み聞かせを始めた「文庫のおばさん」こと、池上従子さん。
「よこはま文庫の会」は、市内各地に存在する「文庫」の代表が集まってつくる組織。その分科会「手作り絵本の会」でつくった『かくれんぼ』という一冊の絵本との出会いが始まりです。
「障害があって普通の本が読めない子どもにも、『かくれんぼ』を楽しんでもらいたい││」。
ボタンやファスナー、リボンなどを使って、隠れた動物を探す仕掛けを施した「布えほん」をつくったのです。
これが、障害のあるなしにかかわらず、子どもたちに大好評。思わず気をよくした池上さんは、すぐに2作目にかかります。
その後、手芸の好きな人たちが集まってできたのが、ボランティアグループ「よこはま布えほんぐるーぷ」。今では、オリジナルの布えほん28作品、布おもちゃは、50点を数えました。
現在は、桜木町駅前の横浜市社会福祉協議会(以下、社協)ボランティアセンターを拠点に、毎週木曜日に50名の仲間たちと活動を行っています。
活動は22年を経て、その輪は全国に広がっています。池上さんには講演の依頼も多く、「私もつくりたい」という声に応えるために、著書も数多く出版しています。
手づくりの素晴らしさ 「メルヘン メルヘンひよこになあれ││」
布えほんを繰る池上さんの声は若々しく、昭和一桁生まれと聞いてびっくり。卵を裏返すとヒヨコになったり、ろうそくの火が消えたりと、次々に展開する仕掛けに、二度びっくり。素材のあたたかさと、つくり手の気持ちがひとつになって、何ともいえないほのぼの感、楽しい仕掛けにワクワク感が伝わってきます。
「今の子どもはコンビニ世代。その対極にあるような手づくりの良さを、お母さんたちにも知ってもらいたいですね」。
一冊の布えほんづくりには、構想から材料集め、手縫いの作業と、気の遠くなるような時間がかかります。でも、そうして愛情を込めてつくられた作品だからこそ、手にとる人の心に残る感動を与えられるのでしょう。
これまでの作品は、地区センター、ケアプラザなどで貸し出され、桜木町の社協だけでも、年間2700人が利用しているそうです。 |
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活動は海を越えて 「赤ちゃんから、大学生や高齢者まで、布えほんを通じてさまざまな交流がありました。5年前に東京で開催されたおもちゃ図書館の世界大会のときには、外国の方々にも、布えほんの読み聞かせをして、とても喜んでいただいたんですよ」。
池上さんのつくる布えほんは、世界に類を見ないもので、日本が誇る文化であり、大切な財産といえるでしょう。
「よこはま布えほんぐるーぷ」の代表は3年前に後進に譲りましたが、会の運営には今も関わっています。そのほか、講習会やお話会を随時行いながら、全国500か所のおもちゃ図書館をコーディネートする、おもちゃ図書館全国連絡会世話人など、要職を兼務される池上さん。日本じゅうを飛び回り、エネルギッシュにスケジュールをこなしています。
地元では、今年、能見台に建設予定の複合型福祉施設「りんごの森」に併設される、おもちゃ図書館での活動が予定されています。「たくさんの子どもたちの笑顔に出会えるのが、今からとても楽しみ」と、池上さん。
近くの氷取沢高校(磯子区)や永谷小学校(港南区)の「総合的な学習」では、子どもたちに布えほんのつくり方を指導するなど、教育活動にも熱心に取り組んでいます。
「今も昔も、本質的に子どもは変わりません。子どもたちがつくるえほんは、とてもユニークです」と絶賛する池上さん。「その感性の素晴らしさは、真似できませんね」と、目を細めます。
待っている人々のために 一方では、厳しい現実もあるようです。実は、今年度限りで、社協の事業が打ち切りになってしまうのです。
たくさんの人に愛され、望まれている布えほん、これだけ長く継続し、全国に広がる活動を絶やすわけにはいきません。
「布えほんを待っていてくれる人たちのためにも、助成金を取得する方法や運営方法を考え、何とか活動を継続していかなくてはなりません」。
池上さんは、初めて厳しい表情を見せました。
パワーの源 年を重ね、地域活動の大切さを、自ら実感される池上さん。
布えほんの活動のほかにも、夫婦で地元の「歩こう会」に参加し、地域の人たちとの交流を楽しんでいるそうです。
パワーの源を尋ねると、「何より、本が好き、子どもたちの笑顔が好き」と、明快なお答え。
「体を大切にして、いつまでもつくり続けたいですね」。
よこはま布えほんぐるーぷ ○連絡先 TEL045-785-0320(池上)
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