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活動の流れ
 
きっかけは同じ母親
 ずっと前から気になっていた。私たちの身近にこんなにも「悲しく不合理な出来事」に苦しんでいる人がいる。私たちトランタン新聞社は、活動を始めて早11年になる。これまで、たくさんのお母さんたちと交流し、情報をいただき、そしてそれをあるがままに発信し続けてきた。自分が母親であることだけでなく、多くのお母さんの気持ちを代弁してきたのである。
 今日、多発する17歳の事件や、子育て中の母親の事件。この混沌たる社会において、私たち母親が考えるべきは何か。マスコミは事あるごとに母親を餌食にし、面白おかしく記事を書く。自立し始めた子どもを家の中に閉じ込めておくわけもいかず、いつもそばにおいて守るわけにもいかないのに、何でもかんでも母親のせいにする。「パチンコに熱中する母親」や「子どもを置き去りにする母親」など、一部の「ダメ母」のおかげで母親の真価が問われている。だが、多くの母親は純粋に子どもを愛し、かけがいのないものとして大切に大切に育てているのである。そんな母親だからこそ、野村さんの気持ちが痛いほどわかる。

覚えていますか?
 初めて香ちゃんの事件を知ったのは、県警が公開捜査に踏み切った、平成3年10月7日。横浜市内で8歳になる女の子が行方不明になった。連日、マスコミが伝える捜査の進展状況に、人々は「まだ見つからないのか」「かわいそう。早く見つかればいいのに」とやきもきした。だが1か月もしないうちに、マスコミから消えていった。その後は、たとえば小学校の卒業式、1年後の10月1日の動きを「依然として未解決」と報道するにとどまっている。有力な手がかり、大きな進展がないことで、事件は風化し、次第に人々の心から忘れられてしまっている。
 気にかかるニュースではあるが、所詮は対岸の火事。「うちの子でなくてよかった。うちの子がそうならないように気をつけよう」とは思うものの、本気で捜そうとか、毎日神様に手を合わせるほどの人はおそらく、そうはいないだろう。みな他人事だ。 だが、考えてみてほしい。親が子を思う気持ちは限りなく大きい。ショッピングセンターや遊園地で、または駅の雑踏の中、一瞬のスキに子どもを見失った経験を持つ母親は多いだろう。時間の問題ではない。たとえ数分であろうと、それはまさに地獄の時間である。悪いことばかりが頭に浮かび、とにかく無事でいてくれと心の中で叫びながら必死に捜し回るだろう。「私が目を離さなかったら」「こんなところに連れて来なければ」と自分を責めながら、謝り続けながら、祈るに違いない。それが母親だ。

言葉にならない思い
 「月刊 お母さん業界新聞」に香ちゃんの記事を書きたいと思い立ったのである。早速、旭署に申し入れる。と同時に、新聞その他私たちの活動を知ってもらうための資料を見せ「いい加減な記事は書きません。何とか野村さんをご紹介いただけないか」とお願いした。結果、迅速な対応をいただき、早速香ちゃんの母親・野村郁子さんに電話を入れることができた。
 一度話を聞いてほしいとお願いし、その夜、すぐにご自宅にお邪魔することになった。私たちの思いを理解してくださっているのか、決してイヤな顔は見せないが、郁子さんの口は重く、表情は曇りがちだった。こちらからの質問にかすかな声で返すのが精一杯で、ともすると時間だけが流れてしまっていた。
 正直私は、何と言ってよいかわからなかった。言葉はあまりに空虚で、用意してきたことの半分も伝えられなかった。そんなこちらの意を察してか、「よろしくお願いします」の言葉とともに、香ちゃんの写真を差し出してくれた。

ひとりの母親として
 香ちゃんの写真を前に苦しい日々が続いた。少ないやりとりの中に出てきた「二次的な問題が…」という郁子さんの言葉も頭から離れなかった。 「同じ母親だからわかる」などと、安易な自分を反省した。反抗期のわが息子は顔を合わせれば口応えをし、夏休みの宿題をいまだに提出していないというだらしなさ。それでも、私のところにいる。「行ってきます」と家を出た息子が戻らなかったら…考えただけで胸が苦しくなる。郁子さんの苦しみはわかるわけがない。
 警察犬も雨に匂いを消されて役に立たなかった。「あの日、雨さえ降っていなければ、もっと人通りが多かったはず」。雨を恨むことしかできない。何の手がかりも証拠も証言もない。犯人を恨むことも、人にぶつけることもできずに11年もの月日を過ごすということは、一体どんなものだろうか。

掲載する意味
 その苦悩は日を追うごとに強くなった。事件のことや、その周辺にあるさまざまな事柄(人の動きなど)を深く知らずに、簡単に写真を掲載することはかえって中途半端になってしまうと判断し、約束していた9月号の掲載を見送った。私たちにできること、すべきことは一体何か。何のために掲載するのかをもう一度考えた。
 まずは事件のことをきちんと調べ、正しい情報を集めなければ。当時の新聞をめくり、また全国の行方不明児のデータや実態などの情報を収集した。そうして改めて、野村さんに私たちの思いを伝え、納得してもらわなければと意を強くし、手紙を書いた。すべてを正直に。と同時に、県警に直接取材、旭署にも再び足を運んだ。

発信する責任
 香ちゃんがいなくなってから、特に地元の旭区や相模鉄道沿線では、学校関係者やPTA、ライオンズクラブの方々など、たくさんの人々が捜査に協力している。有志で構成する「香ちゃんをさがす会」では、今も毎月1日に、二俣川駅や鶴ケ峰駅、運転試験所などでビラ配りを実施している。
 野村さんから「さがす会の方と一緒に話を伺います」と回答をいただいた。メンバーのおふたりは約束の夜7時、これまでの活動をわかりやすく説明するためにと、資料まで用意して来てくださった。その上で「マスコミの自分本位の報道のあり方」や、それを受けた人々の反応と、それによって起こりうる事柄などをていねいに話された。善意の人々の心暖まるやさしさに感謝する反面、どこかで、心ない人々の許せない言動を恐れてしまう現実。私にもやっと少しずつ見えてきた。野村さんの迷いや気遣い。
「そう言えばこんなことあったよね、で終わってしまう記事ならやめてほしい。私たちの中の香ちゃんは、いつまで経っても8歳のあのときのまま。香ちゃんが帰って来るその日まで、野村さんと全く同じ気持ちで香ちゃんを待っているんです」という言葉に、勇気づけられると同時に、責任の重さを痛感した。

子どもを守る
 今回の県警の対応は素早かった。今年4月に横浜市保土ケ谷署官内で起きた小2男児誘拐事件は、5日後に容疑者2人が逮捕され無事解決した。捜査の常道に基づいたうれしい結果。県警以下、所轄署員たちは気持ちを一新してかかることになった。今一度、未解決の香ちゃん事件を見直したり、子どもの安全について対策を練るなどの動きが起こっている。
 県警の生活安全総務対策室の中に、誘拐防止教室が設けられた。要請に応じて女性警察官が幼稚園や小学校に出向き、子どもたちに「行き先を言おう」「知らない人にはついて行かない」など、パンフレットやぬいぐるみを使ってやさしく注意を促すものだ。
 私たちができるのは、まず日ごろから子どもとコミュニケーションをとること。今日子どもがどんな洋服で出かけているかもわからないでは話にならない。子どもが年ごろになれば行き先がわからなかったりもするだろうが、うとましがられても声をかけることが大切。お母さんが「待ってくれている」のと「いつ帰ったって平気」とでは大きく違うのだ。
 では万が一、子どもがいなくなった場合は、どのようにすればいいのか。県警に話を聞いた。「第一にいたずらに騒がないこと。現場付近に直行するのは、私服刑事が多いので、決して警察が来ないと大声を上げたりしないで。家にかかってきたすべての電話の通話相手、時間、内容、状況などを細かくメモしておくことも大切。あとで重要な手がかりになる。気持ちはわかるが、できるだけ冷静を心がけてほしい」という。
 起こってからでは遅い。常に意識を持っておくことが必要だ。隣にどんな人が住んでいるかもわからない社会では、安心して子育てできるわけなどない。私たち母親こそ「地域で子育て」の意識を持って、社会を変えていかなければならないだろう。


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連絡先/神奈川県旭警察署TEL045-361-0110(特別捜査本部)
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