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水上 勉原作の『ブンナよ、木からおりてこい』を描いた
画家・島野千鶴子さん。型紙と防染糊を使い、布や紙
に模様を染める「型染」という伝統的な染色技法により、
独創的な作品を生み出した。
水上 勉原作の『ブンナよ、木からおりてこい』を描いた
画家・島野千鶴子さん。型紙と防染糊を使い、布や紙
に模様を染める「型染」という伝統的な染色技法により、
独創的な作品を生み出した。
すでに「リブライフ」読者にはおなじみ、水上 勉原作の『ブンナよ、木からおりてこい』(水上 勉作/若州一滴文庫刊/以下『ブンナ』と表現)を描いた画家・島野千鶴子さん。型紙と防染糊を使い、布や紙に模様を染める「型染」という伝統的な染色技法により、独創的な作品を生み出した。
小さい頃から絵を描くことが好きだった島野さんは、京都精華短期大学(現・精華大学)美術・染織科で染色の専門知識と技法を学び、卒業後は京都和染工芸に勤務。和紙デザインをする傍ら1977年、すばる書房の「月刊絵本新人賞」に応募、優秀賞に選ばれたのを機に絵本の世界へ。
絵本『ぺろぺろ』(偕成社)は染色絵本展で優秀賞を受賞し、絵本化されたもの。駄菓子屋さんでお菓子の一等を当てたい女の子の心理を丁寧に描いた切なくて愛らしい物語、しかも郷愁感たっぷりの素敵な絵本である。
清野友義さん(「きよの絵本劇場」主宰)を通じて、文豪・水上 勉作品『ブンナ』と出会ったのは20年前。2児の母親でもある島野さんが、生き物の死生観、輪廻思想=命の大切さを描いた「ブンナ」に感動したのはいうまでもない。
だが「長編童話を『絵』にするのは容易なことではない。一行も削るところのない作品を絵にする重責(プレッシャー)の一方で、何もないところから一つひとつのシーンを想像し、探していく楽しさがあった」と当時を振り返る。

「人間は、生まれたときからずっと平等ではない。しかし、心は平等である」と、講演で語った水上氏。「どこに生まれるかで人生が左右する」とは、貧しい時代を生きた水上氏
自身に重ねることができる。まさに、物語が生まれる由縁。『ブンナ』を描く意味を知ると同時に、今も、島野さんの心にずっしりとある言葉だそう。
描き上げた作品を持参すると、「絵にユーモアがあって暗くない。デッサンもしっかりしている」と水上氏。さらに「この本のテーマは『輪廻』。鼠の死体からたくさんの虫が生まれ、蝶や蛾になって飛び立つところを描いてほしい」と言われ、描き足したという。
かつて水上氏は、児童文学である『ブンナ』をさして、こう言った。「数ある作品の中で、後世に残るのは『ブンナ』だけだろう。子どもは話を聞くのが大好きだ。ぜひ母から子へと語り継いでほしい」と。
その後、島野さんが描いた37点の原画をスライド化し、清野さんが読み語る「きよの絵本劇場」は、全国公演の旅へ。共通の思いはただひとつ、「日本中の親子に届けたい」。

「『ブンナ』は、若い頃の勢いで描いた作品。今読み返すと私自身、納得いかないところもある。年齢を重ねた今だからこそ、表現しきれなかったところが描ける気がする」と、新たなる意欲を伺わせた。
「新しいモノ、便利なモノがもてはやされる時代。人の気持ちやモノなどなくなりつつある大切なものを、カタチとして描き残していきたい」と島野さん。「今までも、これからも自然体。縁あって出会った人たちと、いい仕事をしていきたい」という。