今月の特集 編集部注目のこの話題!
明治45年生まれの「みよちゃん」は御歳96歳。前号で紹介した、清野友義さんが入所する老健施設「めぐみの家」の利用者である。ご覧の通り(写真)屈託のない笑顔がトレードマーク。めぐみの家では皆に「みよちゃん」と呼ばれ、若い女性スタッフからは「憧れの老い方」と慕われている。
明治45年生まれの「みよちゃん」は御歳96歳。前号で紹介した、清野友義さんが入所する老健施設「めぐみの家」の利用者である。ご覧の通り(写真)屈託のない笑顔がトレードマーク。めぐみの家では皆に「みよちゃん」と呼ばれ、若い女性スタッフからは「憧れの老い方」と慕われている。
人はなぜ、こんなにも美しく老いることができるのだろう? 武田美代さんに出会って、こう思わない人はいない。それほど、かわいく、品良く、ゆったりと歳を重ねている。
答えは、話を聞いてすぐにわかった。それは、美代さんの「母」としての生き方にあった。末子の修さんが3歳のときに高熱で脊髄性小児麻痺を患い、その翌年には、夫が急逝するという悲運にみまわれた美代さん。5人の子どもを抱えて生きていくため、夜通し針仕事をした。
「貧しさの中で、子どもたちの笑顔とやさしさが救いやった。『高校を辞めて私も働く』と言った長女を説得して卒業させると、バスガイド(当時の花形職)となり一家を支えてくれはった。今も子どもたちは『海が見たい、山が見たい』いう私の願い通りに北海道や白浜に連れていってくれはる。何が幸せかいうたら、子どもたちが皆ええ子やちゅうことやわ」。
テレビは天気予報とニュースしか見ない。新聞は隅々まで目を通す。川柳や読者の投稿欄が面白くてたまらないという。80歳で始めた詩吟が、美代さんの生きる目標であり、元気の秘訣でもある。腹式呼吸と姿勢がポイント。3年に1度の上級試験を経て、今では七段の腕前というから驚きである。目の前で詩吟の朗読を披露してくれた。途端に声の張りと艶、目つきが変わった。かわいい「みよちゃん」から、凛とした女性に変身だ。
勤勉実直な修さんは、ハンディを抱えつつも向学の念で京都府立総合資料館に就職。56歳になる現在も歴史の専門家としてご活躍。母親である「みよちゃん」との2人暮らしでは、帰宅してベッドに上がったが最後、「介護される人」になるのだという。この歳にしてなお、「子育て」をしている美代さん。母も息子もこの上なく幸せな日々に違いない。
「みよちゃんが美しいのは、きっと花のせいや」と清野さん。花が大好きという美代さんは、花に囲まれて暮らしている。自分が食べることよりも大切にしている水遣りの仕事。「お花は正直や。お水も真心込めてやらんと咲かしません。大事に育てたらきれいに咲いて、見るもんを喜ばせてくれる。私もお花からエネルギーをもろてんやろなあ。命はみんなおんなじや」。そう言ってコロコロと笑いだした。
「どんなお花が好きですか?」の問いに、迷うことなく「アマリリス」と答えた美代さん。その花言葉は「誇り。素晴らしく美しい」である。
目の前でお稽古中の漢詩をうたってくれた