八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

2011年9月号

お母さんの学びの夏

500人の子どもたちがふじ丸に乗船し、小笠原に向けて出航。旅立つ娘を見送るお母さんは、お母さん大学生の村本聖子さん。(本紙7頁)

やさしい母親の庇護のもと、その巣の中でぬくぬく育ってきた娘が、今まさに母の巣から旅立った。

期待と不安、うれしさとさびしさ…揺れる母の思いが波と重なる。子どもの心と母の心は、離れていくに従って、さらに強く、さらに深くつながっていくに違いない。

かつてわが娘(次女)が、18歳で家を出ると言った日のことを思い出した。娘の気持ちを考える以前に、取り乱してしまった自分。仕事に没頭するあまり、子どもとの時間もままならず、母として何も伝えられていないことに、ただ焦るだけの愚かで情けない母親だった。料理に掃除に洗濯…そんなものは、教えるものではなく、日々の生活の中で、自然に母から子へと伝わるものなのに…。

娘は母の気持ちを知る由もなく、容赦なく出ていった。当時は、娘の自立を素直に祝福できるほど、寛容な母親ではなかった。そんな母親落第の私だから、「お母さん大学」という発想が生まれた。母であることをもっと学びたい…。至らない自分にとっても必要な事業だった。

最近、その次女が、「お母さん大学で学びたい」と言い出した。今まで私の仕事には無関心で、新聞も読んでいなかったのに、どうした風の吹き回しか…。こんな展開になるとは予想もしていなかったが、親子で同級生も悪くない。母になるための時間は、これからゆっくり流れていく。

さて、年に一度の「一日お母さん大学」(7月30日)に、全国からお母さんたちが集まってきた。母親が子どもと離れることは容易ではない。ましてや遠く、一日がかりのイベントに参加するなんて…。子どもが小さい、お金がかかる、今じゃなくてもいいのに…と、行けない理由を挙げたらキリがない。それでも、参加する意味がある。

子どもと離れ、一人の人間として自分を見つめる日。一人で新幹線や飛行機に乗り、一人で道を歩く。そのとき母親は、どんな人と出会い、どんな道を見つけたのか。

一人になったからこそ見えたものがある。お母さんがこの夏経験した「勇気」は、カタチがなく目には見えないものだけれど、必ずわが子につながっている。

私にとっても今年は特別な夏。これまで娘に、何一つ母親らしいことはしてやれていないが、自分には大切な未来があることを、走り続ける私の背中から感じてくれたのかもしれない。

これからは、走る娘の背中をじっと見守るのが私の仕事だ。

(藤本裕子)

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