八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

2011年2月号

母から子へ継承すること

怖い形相のお面をかぶり「泣ぐわらす(泣く子)はいねえが〜」と家々を回ると、子どもたちは「いい子にします」と泣きながら必死に母親にしがみつく。岩手県吉浜に代々続く小正月の奇習「スネカ」。怠け者や親の言うことを聞かない子どもを戒める。秋田県男鹿の「ナマハゲ」同様、重要無形民俗文化財に指定されている。

だが、子どもにとっては、重要文化財もへったれくれもない。親に叱られたこと(いけないことをしたと身に覚え)がある、多くの子どもたちは、いきなり恐怖のどん底に突き落とされるわけで、これほど理不尽な話はない。

ところが先日、同様の手で、孫が恐怖をあおられている姿を見てしまった。オムツ替えが嫌だと逃げ回る孫に向かって、「とんとんさんが来るよ?」と、娘が脅しているではないか。孫は、その言葉に立ち止まった。

はて、とんとんさんとは、どちらさん? 

思えば20年前、私もよくこの手を使ったものだ。当時は「とんとんさん」ではなく、「(オ)バケさん」だった。聞かない盛りの3人娘に、「バケさんが来るよ?」は効果てきめん。私にとってバケさんは、子育てをする上での大切なパートナー。ずいぶん助けられたものだが、そのバケさんがわが家に来なくなったのは、いつの頃だろう。

当時を覚えている3女によると、私(お母さん)は、壁を叩いて足音を出す演出までしていたという…。

わが家、いや、私の重要無形民俗文化財を、しっかり継承した長女。名前は「とんとんさん」になって、ちょっぴりかわいいイメージもあるが、孫にとってはとてつもなく恐ろしい、想像上のイキモノに違いない。それなら、ちゃんと姿をあらわす「スネカ」のほうがまだ合法的だ。

文化を伝承した張本人が言うのもおかしいが、オババとしては、かわいい孫には微塵もこわい思いをさせたくない。「とんとんさんが来たら、必ずちゃーちゃん(私)がやっつけるから大丈夫だよ」と、孫の耳元でささやいた。

新年早々のお母さん大学の宿題は、「家庭で学んだ大切なこと」(4〜5頁参照)。提出された皆の宿題を読みながら、「私はろくな親じゃなかったなぁ」と反省しきり。

せめて「とんとんさん」を、おとぎ話の主人公にでもして、わが家の重要無形民俗文化財として継承するというのはどうだろう。利用されるだけされて、私にやっつけられるのでは浮かばれない。

報告ですが、私のお母さん大学の宿題は、落第点でした。

(藤本裕子)

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