八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

2010年12月号

大丈夫

ある日突然、声が出なくなった。3日後に地方で大事な講演会がある。「声が出ないと困るんです」と、医者に泣きついた。医者は失音でしゃべる私に、静かに頷いた。高齢、寡黙な医者は私に点滴をした。そして、ただ一言「大丈夫」と。だが次の日も声が出ない。再び点滴を打つ。そのときも「大丈夫!出るようになる」と。不安なまま、現地へ飛んだ。

講演会の朝。直前の打ち合わせでも声は出ず、主催者は不安の色を隠せない。そのまま舞台に立った。瞬間、どこからか、あの寡黙な医者の「大丈夫」という声が聞こえた。すると、マイクからちょっとかすれた私の声が流れた。声が出た! うれしかった。

最近、医者の間では、「大丈夫」と言わない鉄則があるらしい。言えば訴訟問題になるからと、ある大病院の院長が教えてくれた。病気が治らなかったら医者の責任?ロボット(機械)であれば修理に文句をつけてもいいが。

いや、もはや人間の心も体も、部品になりつつある。

医者の「大丈夫」の一言は、患者にとって、どれほど大きなものであるか。ヘタな薬より、よっぽど効果がある。

ついでにもう一つ「大丈夫」の話。百万母力プロジェクトで「一日お母さん大学公演」を主催したお母さん大学生のOさん。開催2週間前、チケットの売れゆきが芳しくなかった。なのにOさん、電話の声がとにかく明るい。自称「ノーテンキママ」。こちらが「大丈夫?」と聞く前に、大きな声で「大丈夫です!」と答える。これには正直、私のほうが癒された。

ほぼ毎日のように電話報告をくれる彼女だが、時には涙する日もあった。しかし、それでも電話を切るときは、必ず「大丈夫です」と。そんなOさんがいとおしかった。 自分が不安になったら負け。仲間も本部も関係者も、みんな不安になる。そこには、ひとりの母親を超えて、リーダーとしての責任と役割を演じきるOさんがいた。

本気で行動してはじめてわかる、人のやさしさ、世間の冷たさ…。家族とは、チームワークとは、仲間とは…。

母親は、子育ての中で、いろいろな困難や問題にぶつかるだろう。そんなとき、お母さんの「大丈夫だよ」の一言が、どれほどわが子を安心させるものか。

彼女がこのプロジェクトで見せた「勇気」は、子どもたちにしっかりと伝わっている。

コンサートの翌日、Oさんは、私のように全く声が出なくなっていた。おかしかった。

(藤本裕子)

バックナンバーの一覧へ戻る

ページのTOPにもどる
老若男女響学「お母さん大学」プロジェクトはこちら
お母さん大学メルマガ藤本でこぼこ通信 登録はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
ブンナプロジェクトはこちらから
池川 明先生のDVD「胎内記憶」&本のご購入はこちらから
 
株式会社トランタンネットワーク新聞社 〒221-0055 神奈川県横浜市神奈川区大野町1-8-406