八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

2010年4月号

人を信じる心を伝えよう

あるときマンションのエレベーターで、一人の女の子と一緒になった。密室で私と女の子。何気なく「何年生?」と声をかけると、恥ずかしそうにその子は、小さな声で「3年生です」と答えた。

おせっかいおばちゃんの私は、「どこの学校なの?」とさらに聞いた。すると女の子は、下を向いたまま、申し訳なさそうに、「すみません。それは言えないことになっているんです」と言った。

きっと学校や家庭で、「知らない人に声をかけられたら、絶対に名前や学校を教えてはいけない」と言われているのだろう。

同じマンションとはいえ、どんな人が住んでいるのかもわからない時代。確かにそうすることで、危険は回避できるかもしれない。

自宅では、ピンポーンと来客があっても居留守を使う。新聞の集金や郵便局の配達も、チェーンロックをかけたままのやりとり。家に居て、電話が鳴っても受話器を取らず、留守録を聞く。確かにそうすることで、面倒やトラブルは回避できるかもしれない。

だがおそろしいのは、その行動が、傍らにいる子どもの心にどう映るかを、少しも考えていないことである。

人を信じてはいけない、大人はうそつきだ、といったメッセージを、毎日シャワーのように浴びせられた子どもは、どんな人間に成長するのだろう。果たして、人を思いやり、愛することのできる大人になるのだろうか。これ以上、自分さえよければ…の世の中になってもよいのだろうか。

女の子は、決して私を、あやしいおばさんと思ったわけではない。むしろ、わずか30秒ほどの間だが、答えられないことに息苦しさを感じていたはずだ。子どもは完全ではないが、わかるし、感じるものなのだ。

だとしたら私たちは、居留守を使う前に、日頃から隣近所のつきあいや、地域とのつながりを大切にすることが先決だ。それが結果として、子どもを守ることになるに違いない。

「大人になんかなりたくない」と、子どもたちは言う。「人っていいね。人生って楽しいね」と思わせることが、大人としての最大の役目ではないか。

まずは、私たちから、人を信じる心を伝えよう。

(藤本裕子)

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