八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

2009年5月号

心でつながる母と子

あるときスーパーで、一枚のポスターが私に語りかけた。それは、行方不明になった野村香ちゃん。当時8歳だった香ちゃんが、自宅から近くの書道教室に向かったまま姿を消したのは、1991年10月1日のこと。

すでに9年が経過し、事件は風化されようとしていた。
当時つくっていた新聞の表紙に、香ちゃんの写真を大きく掲載。「香ちゃんを捜して!」と、全国の仲間と配り呼びかけた。

香ちゃんの母・郁子さんに会いに行ったとき、質問を用意していたにもかかわらず、ほとんど言葉にならなかったことを覚えている。

目の前にいる一人の母親の悲しみは、どれほどのものか。「あの日以来、笑うことさえいけないことだと思えて…」そう語った郁子さんの言葉が忘れられない。
あれから8年。私にできることは、今も新聞の片隅に「香ちゃんを捜して!」と入れることだけ…。

「お母さん業界新聞」を購読してくれている郁子さん。子育ての喜びに溢れるこの新聞を手にし、何をどう感じているのだろうか。

香ちゃんが行方不明になってから17年が過ぎた。この間、郁子さんは、どれほど苦悩し、どれほど涙を流したことか。それでも、涙が枯れることはない。

「母の涙」とたとえられる海。郁子さんの涙は大海へ流れ、きっとどこかで香ちゃんは、その母なる海を見ているだろう。

今の日本の子育てを見ていると、母子の絆の希薄化に、不安を感じずにいられない。母親たちの多くが、子どもの心を感じられず、マニュアルやうそっぽい情報に翻弄されている。子育てに不安を感じている母親はまだいい。

悩みながら母であることを感じ、その悩みに心して向き合うことが、母としての成長なのだと思う。
郁子さんと香ちゃんは、他者には入れない深いつながりの中で、互いを高め合いながら生きている。

だが、香ちゃんを自分の手で抱くまで、郁子さんが、心から癒されることなどないだろう。その日が一日でも早く訪れることを願いたい。

どんな小さなことでもかまいません。香ちゃんに関する情報をお持ちの方は、ご連絡ください。
(藤本裕子)

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