八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

2008年7月号

お母さんのもてあました手

夏の思い出といえば、幼稚園や学校のプールの時間。わが家の3人娘も、小さい頃はプールをとても楽しみにしていた。もう20年近くも前の話になるが、子どもたちがプールの日の朝は慌ただしい。体温を計りカードに書き込んで、印鑑を押して持参しなければ、プールに入れなかった。

当時は、毎朝3人を学校に送り出すだけでも大変。それぞれ忘れ物がないかを確認し、髪を整える。ロングヘアーの髪を束ねたり、編み込みにしたり。少しでもおかしいと「やり直して」と騒ぐし、紺色の水着もサイズを間違えないように注意をはらわなければならなかった。

まだ水銀体温計しかない時代、1人に3分はかかるため、3人順番に計っていたら、遅刻だってしかねない。

そこで私が使っていたのが、必殺「お母さんの手温計」!3人を並べ、順番に額に手を当てて、「え〜と、あつこ36度2分、ともこ36度5分。ひなこ36度8分…、ハイ、みんなOK!」。娘たちは、うれしそうにカードに体温を記入し、学校へ出かけていった。

かなり大きくなるまで、性能がいい「お母さんの手温計」を信じていた娘たち。純粋に「お母さんの手ってスゴイ!」と思っていたというから罪深い。

ウソがバレたと知ったのは、あるとき私が風邪で寝込んでいた朝のこと。娘たちはそれぞれ自分の額に手を当てて、適当に数字を書き込んでいるではないか。「これはヤバイ!バレてる!」と。

でも「お母さんの手温計」は、ただの体温計ではないことも知っているはず。娘たちの肌を感じ、顔色や心の色をちゃんと読む。しかもその瞬間、「今日一日、楽しく元気に過ごせるように」と、母力パワーをたっぷり注入。さらに子どもが不安だったり、落ち込んでいたりするときには、「大丈夫だよ」と、手から安心パワーを送るのだ。

いつの頃からか、子どもたちは「お母さんの手温計」を必要としなくなった。最後に娘たちの額に手を当てたのは、いつのことだろう。

私は今、もてあましたこの手で、私が、娘たちにできることは何だろうと考えている。 ただ、両手を合わせて祈るだけでは寂しい。体が動く限りは、鍬(ペン)を持って土を耕し、種を蒔き、娘たちが笑顔になる花を咲かせたい。

(藤本裕子)

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