八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

2008年2月号

心を大いに揺さぶるもの

生きていると、いろんな出会いがあるものだ。ついこの間まで文学の世界など無縁だった私の机には今、『水上勉全集』(26巻)が並んでいる。ネットオークションで格安で手に入れた「宝物」だ。

昨年の夏、一匹の「ブンナ」というトノサマガエルが、私の人生に直球で飛び込んできた。これまで蛙に愛着など持ったことはない。はっきりいって、嫌い。それなのに…。

『ブンナよ、木からおりてこい』(若州一滴文庫刊)は30年前に水上氏が書いた童話。本の最後に、あとがきと並んで「母たちへの一文」が記されていて感動した。が、当時、「この作品は母親たちから総すかんを食らった」と、氏はどこかに書いていた。舞台では劇団青年座が、これまでに全国で(海外でも)1200回も巡演している。知る人ぞ知る作品だという。

今年は30年ぶりに、ブンナが冬眠から目覚めそうな予感。地球温暖化で生物の生存も難しい時代。ブンナはあの日のように、夢を持つことができるのか!?

先日は日経新聞の「半歩遅れの読書術」というコーナーで、作家の黒井千次氏が「腐れ縁の本を読む」と題し、この物語を紹介していたが、「腐れ縁の本」とは言い得て妙。さぞかし水上氏も、天国でにんまりしていることだろう。

さらに2月には、宮本亜門プロデュースによる「ブンナよ、木からおりてこい」が、ワシントンDCで行われる「ジャパン!カルチャー+ハイパーカルチャー」で上演される。

先日、おかしな夢を見た。私が、お会いしたこともない水上先生の介護をしている夢。先生の枕元で薬(10種類以上の錠剤)を並べているのだが、私のあまりの不器用さに不安を隠せず、横目でチラチラとこちらを見る先生。夫の夢さえ見ないのにと、目覚めて「ふっ」とおかしくなった。

ブンナの出会いがご縁で、現在はご長女が住む信州にある先生のご自宅を訪問させていただいたことがあり、療養しながら執筆されていた部屋も拝見した。きっと私の中で、先生の数々の作品と、そのときの様子がオーバーラップし夢幻化したのだろう。

水上先生は、私の中で毎日生きている。が、私の中では文豪=水上勉ではなく、人間=水上勉。人間とは何か、生きるとは何かを、直球で投げてくれる人。

この原稿を書いていたら、偶然にご長女から電話が…。その偶然にまた笑ってしまった。きっと、天国の水上先生も一緒に、ワシントンDCに行くだろう。どんなブンナが演じられるのか、じっとはしていられないはずだ。

私の机の上に、でんとして並んでいる『水上勉全集』。そして傍らには、大好きなTUBEのパネル。大概の人がそのアンバランスを笑う。確かに、日本海の暗く寒い冬のイメージの水上勉と、青い空と海をイメージするTUBEは、ミスマッチ。だが、共に私の心を大いに揺さぶるもの。不思議とパズルにようにピタッとハマる快感を覚えるのだ。

(藤本裕子)

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