八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

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LIVE LIFE 2007年8月号

夏休みの宿題

ブンナよ、木からおりてこい 写真

『ブンナよ、木からおりてこい』(水上 勉・若州一滴文庫)という一冊の童話。どんな作品かは、皆さんがこの本に出会ってからの楽しみとして、ここではあえて伏せておく。

娘にブンナのことを話そうとして、読後の私の尋常ではない様子に、言葉をさえぎられた。これからブンナを読むのだから「ストーリーは言わないで!」と。

ブンナを読み、眠っていた(枯れていた)心が息を吹き返した。何より驚いたのは、水上氏が、本の巻末に「母たちへの一文」を記していたことだ。氏はこの作品を母親たちに向けて書いたのだろうか。その中に「母親や子供とともに、この世の平和や戦争のことを考えてみたかった」。さらに「子供がよりぬきんでたい、誰よりもえらい人間になりたい、と夢を見、学問にも、体育にも実力を発揮し、思うように他の子をしのいでゆくことの裏側で、とりこぼしてゆく大切なことについても、いっしょに考えてみようと思った」とある。水上氏は実に30年も前から、現代の学歴社会や経済中心の社会が、子どもたちに及ぼす影響を案じていたのだ。

文豪・水上勉が、子どもに話をするのが好きだったということを、ご存知の方はどれほどいるのだろう。戦争が激しい時代に、娯楽もなかった村の分教場教員として、子どもたちとともに芝居をしたり、創作童話を聞かせたりして過ごす日々があったという。

前号の特集「きよの絵本劇場」の清野友義さんに、水上氏が「ブンナをよろしく!」とバトンを渡した意味は? 清野氏はブンナとともに「命の大切さを伝える」全国行脚の旅に出て、30年もの間、子どもたちに語り続けた。しかし、志半ばにして一昨年、脳硬塞に倒れた。(現在は車椅子の身だが、リハビリの甲斐あって、昨年復帰公演を果たした)。

偶然か必然かわからない。清野氏と出会い、そして、ブンナと出会った。ぐらぐらと崩れていく価値観。その深いところにある何かに、喜びを感じている私がいた。「母親たちに伝えるべきことは何?」「お母さんとは何?」というお母さん大学の究極のテーマと重なった。

ああでもない、こうでもないと「お母さん大学」を頭で考え説明するよりも、ブンナを読んでもらったほうが早い。そこから何かが始まるだろう。今こそ、「子育ての原点」に還るときだ。

まずは、17年間の活動を通じて出会った108人に、この本を贈ろう。ひとりで悩んでいても、始まらない。108人の皆さんと感動したい。そこから何かが始まる。「お母さん大学」から皆さんへの夏休みの宿題。清野流でいうなら、感想文ではなく、感動文だ。

日本中の人たちに、この本を届ける壮大なプロジェクト「第一講義・ブンナプロジェクト」の始まりです。

(藤本裕子)

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