八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

LIVE LIFE 2007年4月号

アジテーターという仕事

先日、高校生に職業講話をする機会をいただいた。職業講話とは「仕事」について話をするということ。最近の講演会は、母親に限らず、シニアや教師、企業人などジャンルが広がっているが、正直なところ、高校生向けの講演というのは、あまり経験がない。

実は、主催者からの最初の依頼は「客室乗務員」についての話だったが、30年前の仕事について話すなんて無理…。今の仕事について話をさせてほしいとお願いした。「スチュワーデスだったら、若い人のほうがいい。私じゃ、子どもたちの夢がなくなりますよ」と言ったら、妙に納得されたのでムカついた(笑)。

そんなやりとりがあった矢先に、先日のANAの胴体着陸。あの日、偶然にもテレビ画面を通してその「瞬間」に遭遇した。手に汗を握りながら、無事着陸を祈った。というのも、機内にいる乗客や乗員がどのような状態であるかがはっきりと描けたからだ。

さて、私の職業って何? どんな「職業講話」ができるのか。新聞や雑誌をつくる人のことを一般に「編集者」というが、私は自分が編集者と思ったことは一度もない。確かに3種の媒体の編集長ではあるが、文章も得意ではないし、雑誌づくりが好きなわけでもない。

主催者に「マザー・ジャーナリスト」ではダメですか?と尋ねたが、これも見事に却下された。ジャーナリストは大手の新聞社を言うのか。お母さんの新聞社では通用しない。本当は「お母さん」という仕事について話したかったが、厚生労働省の職業分類に「お母さん」はない。すると主催者が、藤本さんは「アジテーター」ですよねと。アジテーター…ちょっとやばい言葉。辞書で引くと、@扇動者、A攪拌機(かくはんき)Bかきまぜる装置、とある。アジトというと、俗に、よろしくない(反社会的な)ことを指示する指令所。なるほど、当たっているかも。よく、人をそそのかし、その気にさせる。

さて学校では、アジテーター・藤本裕子と紹介されるのかと楽しみにしていたが、フツーに「編集者」として紹介された。しかも主催者から「子どもたちはほとんど反応しないけれど、めげずに話してください」と注意があった。「反応がないのは講話者が悪い」と、覚悟して戦場に向かった。それにしても、子どもたちは毎日つまらない授業を受けているのかと思うと、気の毒になった。

教室には20名ほどの子どもたちがいた。みんな、まだあどけない顔をしている。開口一番「私は『編集者』ではなく『変種者』です」と自己紹介。一瞬にして全員が「?」と首をかしげた。さて、どんな講話だったか…。

今の大人たちは、未来に向かう子どもたちに夢を与えることはできない。ならば、せめて彼らの邪魔をすることだけはしてほしくない。子どもたちは、生きるために生まれてきたはずだ。それを、大人たちにアジテートするのが、私の本当の仕事かもしれない。

(藤本裕子)

バックナンバーの一覧へ戻る

ページのTOPにもどる
老若男女響学「お母さん大学」プロジェクトはこちら
お母さん大学メルマガ藤本でこぼこ通信 登録はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
『百万母力』はこちらから
ブンナプロジェクトはこちらから
池川 明先生のDVD「胎内記憶」&本のご購入はこちらから
 
株式会社トランタンネットワーク新聞社 〒221-0055 神奈川県横浜市神奈川区大野町1-8-406