八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

LIVE LIFE 2007年2月号

小さな悩みと大きな勇気

先日、大阪のシンポジウムに参加するために、新横浜から新幹線に乗った。私の楽しみは、車中でお弁当を食べること。その日はうなぎ弁当とビールを持って乗車。ビールを飲んでたらふく食べたあと、明日のシンポジウムに備えようと、主催者から用意された資料をテーブルの上に置いた。表紙には『企業とNPOの子育て支援協働推進セミナー』というタイトル。

満腹の私はほろ酔い気分。資料には目もくれず、心地よい眠りに誘われていた。突然、隣に座っていた30代前半の男性から声をかけられた。

「失礼ですが、どんなお仕事をなさっているのですか?」。一瞬、ドキッ!とした。もしかして、これってナンパかも!? ここ数年、そういった機会?はない。

不安と期待が交錯する私の心中を察知したのか、その人は「あの、その表紙がちょっと気になったもので」と。

「へっ?」とは言わなかったけど、彼が興味を持ったのは、私ではなく、このタイトルだった。

「生きるというテーマの新聞をつくっています。これは、明日参加するシンポジウムの資料なんです」と。

名古屋に住んでいる3人の子どものお父さんだった。「子育てについて考えることがあって」とあれこれ話し始めた。子どもが生まれた途端に、社会のことに無関心ではいられなくなった。父親になって初めて気づくことばかりで、いろいろ感じることも多いという。名古屋駅に着くまで、子育てについて語り合った。

最近は随分、父親の育児参加も盛んになってきている。しかし、休日に親子で遊びに行くとか、子どもの学校行事に参加するとか、父親の役割って、それだけではないはずだ。「教育パパ」なる言葉も妙に違和感がある。

なぜ、世の中はいい方向にいかないのだろう。いじめや陰湿な事件は増え、地球環境もますます悪化している。子どもにとって少しもいい社会になっていない。子どもたちの未来を本気で考えている大人がどれほどいるのだろう。「子どもたちのために自分に何ができるだろう」と悩んでいる、ひとりの父親の悩みが新鮮に思えた。

その小さな悩みが、これからの社会につながるはずだ。お父さんたちがやるべきことは、たくさんある。

それにしても、不思議な縁だ。私がこの資料を出していなかったら、この父親と話をすることもなかったし、「昼間から弁当食って、ビール飲んでるただのおばさん」で終わっていただろう。

気になっても、実際に声をかける人はなかなかいない。勇気だっている。お父さんの小さな悩みと大きな勇気が、未来の子どもたちを救うに違いない。

(藤本裕子)

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