八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー
5月の約束
トランタンが企画制作している『教育大阪ビーボラビータ』の巻末(カラー4頁)に、大阪で活躍中の12人のアーティストを紹介するコーナー「つくるということ」がある。すでに8名のアーティストの取材を終えた。
アーティストたちに共通しているのが、語る言葉が少ないということ。作品で表現しているからだろうか。それでも一つひとつの言葉が心に深く強く伝わってくる。
ものづくりへのこだわりは半端ではない。作品を生み出しても生み出しても際限のない思い…。表現する人にゴールはないのだろう。いい加減な作品をつくることを恥とさえいう、ものづくりに賭ける一途な思い。そんな心地よい価値観を、ますます喜んでいる私がいる。
絵画や工芸作品ではないが、私も「新聞」というものをつくっている。だから、彼らの言葉がうれしいし、「同じ仲間になりたい」と思う。
17年間も新聞をつくってきた。新聞の目的は情報発信だが、そもそも「情報」って一体何だろう。これだけの情報社会にあって、求められる真の情報とは…。それこそが、リブライフのテーマかもしれない。
そんな折り、12人のアーティストの一人、古池英貴さんと出会った。彼は自閉症という障害を持っている。ホテルの会議室で取材をした。取材といっても、彼と会話はしにくいため、彼をサポートしている絵の先生やお母さんから間接的に話を聞いた。
取材が終わって、古池さんにお礼の意味で握手をした。そして別れ際に、「今度、横浜にも来てくださいね」と言うと…、古池さんは、初めて私に向かって口を開いた。
「いつ?」。
その言葉に、頭をガツンと殴られた気がした。
社交辞令のつもりはなかったが、どこか無責任に発言している自分がいた。古池さんに失礼なことをしたと、深く反省した。
古池さんは今、かつてトランタン新聞社のオフィスがあった、横浜の氷川丸(山下公園)の絵を描いているという。私にプレゼントしてくれると聞いて、うれしかった。
あの日、私と出会ったことを、古池さんが「ひとつの作品」として描いてくれている。
人の心に寄り添えない人たちで溢れている現代社会。なのに古池さんは、心で真直ぐにコミュニケーションしていて、すごいなと思った。
来年5月に、古池さんは横浜に来る。約束しよう。







