八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー
人生ってそんなもんさ
330キロのスピードで24時間走り続ける「ルマン24時間耐久レース」。それはまさにモンスターレースと呼ぶにふさわしいが、シャルル・ド・ゴール空港からルマンまでの道程も、私たちにとっては過酷なレースだった。
空港でレンタカーを駆ったトランタン一行7名。フランス語の標識もアナウンスもわからない。ただでさえ不安なのに、さらなる不安が私たちを襲った。というのも、マニュアル車で左ハンドル。しかもナビはない。空港の駐車場でテスト走行を試みるが、クラッチ動作がうまくいかず、数m走ってはエンストの繰り返し。「こんなんでフリーウェイを走れるのか?」…全員に不安が過る。だがドライバー(青柳)は、無謀にもそのまま高速道路へ侵入。もう後戻りはできない…。車が動き始めた。
その後もなぜか(青柳は車の不調を訴えていたが)車はエンストを繰り返しながら、ホテルの所在がわからずパリの街をウロウロ。翌日も高速道路の入口を探し、いろいろな人に道を尋ねながら、何とかルマンに辿り着いたときは、まるでゴールした気分。しかし、予期せぬトラブルは、ルマンを離れてから起きた。
せっかくだから、ロワール地方のお城に行こうと、高速道路のサービスエリアでガソリンを入れて走り出した。ところが、数キロも行かない所で車に何やら異変が。減速してギヤチェンジするたびに、今にもエンジンが止まりそう。いや、もうほとんど止まる寸前。何とか騙し騙しで次のインターチェンジ「トゥール」の街まで行き、フリーウェイを下りると、街の一角で息絶えた。
目の前のマーケットに立ち寄り助けを求めると、英語が全く通じない。買い物に来ていた気さくな地元の女性に助けてもらって、レンタカー会社に連絡。30分後に現われたレッカー車に牽引され、修理工場へと移送された。牽引するドライバーは、気のいいムッシュ(おじさん)。トラブルを見極めるため、故障車に同乗してトゥールの街を走ったそのとき、彼にジョークを交えてこう尋ねた。
Why is he so angry?(なぜ、車はご機嫌斜めなの?)
すると、彼はこう答えた。
It 's a life.(人生ってそんななもんさ)
つまり、「人生ってそんなにうまくいくもんじゃないよ。だから楽しいんだよ、だから生きている意味があるんだよ」って…。トラブルで消沈しきっている私たちの心をなごませてくれた粋なフランスおじさん。
今回のルマンツアーは、この言葉がすべてだと思った。
It 's a life.
こうして、私たちも解決できないエンジントラブル(?)で、リタイヤすることになった。







