八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

LIVE LIFE 2006年6月号

普通に素敵に生きるということ

『ヴィサン』(かながわ健康財団発行)の取材で出会った手塚俊男さん。5月24日で102歳になった手塚さんは湘南で一人暮らしをしている。最愛の妻を亡くしたのは今から14年前のこと。一時は落ち込んだ手塚さんだが、現実に向き合うことで、妻の分も生き抜く決心をした。

90歳のときに自転車で転倒し、足を骨折して医者から「寝たきりになるでしょう」と告げられた手塚さん。 「何クソ!」と起き上がり、本気でリハビリに励んだという。

お会いした日は、バーバリーの上着を品良く着こなし、おしゃれ用のステッキを手に、サングラスは伊達めがね。補聴器も入れ歯も無用の長物。人間は100歳まで、こんなにも元気で生きられるものかと感動した。

朝5時に起きて風呂に入り、朝食をとる(もちろん自炊)。その後、1時間ほど新聞を読み、江の島まで散歩するのが日課。自宅はマンションの4階だが、健康のためエレベーターは使わない。地域では、毎月、地元の保育園と老人ホームに慰問に行く。友人・知人が多く、どこへでも気軽に出かけるので、日中はほとんどが留守電だ。

毎日掃除や洗濯を欠かさないのは、「自分には明日が来るかわからない」から。

正直、お会いするまでは「100歳の方と、きちんと会話ができるだろうか」と不安だった。どこかに年寄りを馬鹿にした自分がいた。人間をわかっていなかったといたく反省。

手塚さんの「誰とでも5分で友だちになる技」は、次世代に伝えたい最高のコミュニケーション力。外で背中を丸くしている人を見ると、「あれではダメだ」と背筋を正す。「人のふり見てわがふり直せ、だよね」と語る生きている喜びに満ちた、感謝の日々である。

元気の秘訣を尋ねると、「人間はいくつになっても、色気と食い気ですよ」と笑った。車から降りる手塚さんに手を差し出すと、私の手を握りながら「これがいいんですよね」とにっこり。粋でウィットに富んだ話っぷりは誰より楽しく、時の経つのも忘れてしまうほど。今度、美術館でデートをする約束をした。

仕事でいろいろな人と出会うが、こんな風に「普通に素敵に生きている人」は初めてだった。

別の日に、ある会にお誘いしたが、朝から生憎の雨。「こんな日にお呼び立てして、すみません」と言うと、「いやぁ、雨の日もなかなかいいもんですよ」と…。

その言葉に、偉大な人の生き方を感じた。私も手塚さんに負けないくらい、普通に素敵な生き方をしたい。

(藤本裕子)

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