八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー

LIVE LIFE 2006年3月号

「変種者という職業」

先日、ある中学校の授業に取材でおじゃましたたときのこと。授業のテーマは「将来の職業について考える」というものだった。そこで私は、いきなり学校の先生に「滅多にない機会ですから、子どもたちにぜひ、職業についての話をしてほしい」と頼まれた。つまり、藤本裕子がなぜ「編集者」という職業を選んだのか、また「編集者」とは どんな仕事なのかを、と。  

さて困った。急に頼まれたからではなく、実は私、自分が「編集者」であるという自覚が、ほとんどないからだ。確かに「編集長」という肩書きはあるが、編集長というより、むしろ「変種長」?と、周りからいわれているくらい。子どもたちに話せるようなことなど何もない。しかも、相手が大人なら適当な嘘も言えるが、子どもに嘘はつけない し、中途半端なごまかしは通用しない。

さていよいよ、取材するはずだった私が、子どもたちの前で「わが職業」を語ることに。人生半分を生きて、編集者に至るには多少の経緯もある。

まずは、子どものころの夢だった「スチュワーデス」になったときのことを話した。反応は…。うんうんまずまずだ。そして、子育て中に「何かやりたい」という気持ちが芽生え新聞づくりを始めたことを話すと…、あまり反応はなし。聞くところによると、この学校の子どもたちの多くは、将来は医者か弁護士になるという。

行き先の決まったレールが目の前に敷かれている彼らには、世の中には、ほかにどんな職業があるのか、またどんな人たちが、どんな気持 ちで働いているのかなどには、あまり興味がないらしい。

そんな彼らに、何をどう伝えたらいいのか。「仕事って、お金を稼ぐことだけではなく、人の役に立つこと、人間であることを感じることだよ」と言ったが…、再び反応なし。「これからは、職業を自分でつくり出す時代。150人の人がいたら、150通りの職業がある」と。…ダメだ、ますますわけがわからない。よし、最後の切り札だ。「私は編集者のほかにもうひとつ、誇りに思える仕事を しています!」と、握り拳を掲げた。

「それは、お母さんです。人間の命を産み育てるという、何よりも偉大な仕事。今はその意味がわからないかもしれないけど、君たちが大人になって、もし親になる日が来たら、その意味がきっとわかるよ」と言うと、さらに沈黙…。あ〜、しまった。言わなきゃよかった…。やっぱり私は変種者。それに、いくら偉そうに言っても、お母さんすら 完璧にやれていないからな。

仕方ない。子どもたちを納得 させるために、いつかもう一度、出直すしかない。まだあどけない顔の子どもたち。彼らは将来、どんな夢に向かうのか。そのために、私たちにできることとは…。

(藤本裕子)

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