八面六臂 藤本裕子の辛口エッセー
「虫酸が走る」
人生の後半にさしかかろうとしている今、つくづく思うのは、楽しくないことには1分1秒だって関わりたくないということ。だからといって、一日じゅうだらだらと本を読むことが無駄ではなく、これはむしろ上質の無駄で大歓迎。しかし、一番いやなのは、意味のない空間に自分がいること。
気持ちのない会話、心のない仕事、空気が読めない人、言い訳ばかりの無責任な人、自分を守ることだけしか考えない人たち…。虫酸が走るというのが、まさにこれ。ここに自分がいる意味とか、役目とか、もっと深くいえば、自分の存在、生きている意味を、考えていない人があまりにも多過ぎる。
食べることだって、どうでもいいとは思えない。むしろ、人間、食べることに関心がなくなったら終わり。食育なんて言葉ではなく、もっといいセンス(感覚)で食べることの喜びや感謝の気持ちを味わいたい。
遊ぶなら最高に楽しく、仕事なら意味のある仕事を。できるだけ美しいものを見て、素晴らしい人と出会い、心の底から感動したい。
そう思っていると、だんだん人とのつきあいも限られるし、仕事もなくなっていきそうで、困ったものだ。
こんな風にヘンになってきたのは、やはりモノ(新聞)をつくってきたからかもしれない。経済偏重の世の中では、ものづくりにこだわればこだわるほど、今の社会には整合しない。また、人づくり(教育や子育て)も、社会のしくみの中でますます砂漠化している。
その砂漠の中で、子どもが苦しむ姿が見え隠れしていることに、どれほどの大人たちが気づいているのだろうか。わかっていて知らんふりなんかしている奴は、もう人間なんかやめたほうがいい。
お金さえあれば、夢も買えると言った男は、経済社会の頂点から一気に落ちていった。しかし、彼の失脚をただ笑うだけでは済まされないだろう。なぜなら、彼もまた、化け物が住む社会の犠牲者のひとりに過ぎないからだ。
そんな私もまだまだ浅い。この歳になってようやくそんなことに気づいたばかりで、とても偉そうにいえたものではない。
でも、人生折り返し地点に立った今だからこそ、残された時間を大切に、意味あることに、自分の全エネルギーを注ぎたい。心からそう思う。







